第2/8話 思いは、生死を問わず
俊博は、夢を描きながら、新居を探し始めた。監禁した女性を他人に悟られず囲える設備。オートロック、監視カメラ、音が響きにくく気密性が高い鉄骨鉄筋コンクリート造の物件、出来れば隣室との間隔があることなどが挙げられた。その条件にピッタリ合う物件が見つかった。新築のマンションで最上階の9階。まだ、入居者が三分の一程しかなかった。俊博にとってこの上もない物件だった。営業マンから、このマンションは、女性でも安心できる防犯設備に優れており、新築ということもあり問い合わせが多いんですよ、という常套句にも心を奪われていた。俊博は内見を行うとその日の内に契約を行った。契約が成立し、鍵を手に入れると空き部屋や監視カメラの位置を確かめた。俊博の部屋は9階の918号室、両隣が空き部屋だった。
これだと当分の間、防音設備は不要だな、とほくそ笑んだ。それからは、女性の入居者が引越してこないかと落ち着かない日々を過ごすことになる。
三週間程して916号室に女性が入居してきた。俊博は、自分が外出中も外の様子が分かるように小型カメラをさり気なく設置し、監視した。その結果、その部屋には、二十代半ばと三十代前半の姉妹が入居したことが分かった。帰宅時間も引っ越ししてまだ浅いせいなのかほぼ毎日、同じ時間に帰宅していることもわかった。
俊博の好みは、太っていなくて若い妹の方だった。姉は事務系の堅物そうに見え、妹は垢ぬけたブテッィックのスタッフのように映っていた。
充分、拉致監禁・飼育のシミュレーションをしてきた。俊博はターゲットの女性の名前すら知らなかった。女性との交際経験のなかった俊博は、女性を強姦して性の快楽に溺れさせる「セックス調教」によって、自分のいうこと何でも聞く「性奴隷」にすることができると考えていた。
そして自分の思いを遂げる実行日がやってきた。姉妹が引越してきて一週間後のことだった。
その日は、定時に仕事を終えられるように事前に調節し、その甲斐もあって計画通りに帰宅。指紋の検出が出来ない様に掌や指先に糊を貼り付け乾かし、指紋の一部には瞬間接着剤を用いた。19時30分ごろ、俊博は、性奴隷獲得目的で被害者女性の帰宅を玄関のドアを少し開け、携帯電話をカメラモードにし、廊下の様子を伺いながら待ち伏せた。
カッツ、カッツ、カッツ。ヒールの足音が静かな廊下に微かに響く。
女性が解錠し、俊博の918号側が扉で隠れた瞬間、足音を悟られない様に靴下のまま部屋を飛び出し、閉めかかったドアを強引に開け、右手で女性を掴み寄せ、背後を取ると左手で女性の口を塞いだが女性は思った以上の抵抗を見せたので、万が一を考え、スラックスの後ろポケットに忍ばせていたスパナ―で被害者の後頭部を死なない程度に殴り、倒れた所を羽交い絞めにし、女性の部屋の扉を閉めた。その後も思いがけなく女性の力が強く揉み合い、鎮めようとさらに二・三発、頭部をその場しのぎに殴った。その内の一発が額に当たり、女性は一筋の血を流した。女性が瞼を震わせ、パタパタと白目を見せ、気を失ったのか動きが静まった所で、俊博は被害者女性の住居のドアを少し開け、外に誰も来ないことを確認し、ぐったりする女性の背後から両脇に手を差し入れ、引き摺るように後ろ走りに自分の部屋に連れ込み、鍵を掛けた。
俊博の興奮は昂ぶり、拉致に成功した喜びに満ちていた。リビングまで運ぶと女性の手足を縛り、猿口輪と目隠しをした。身動きが出来な状態を確認した後、女性の頬を軽く殴った。その頃には、瞼の痙攣は治まっていた。額から微かに出血しているのが見て取れた。
俊博は、気絶しているのだろうと思い、肉食動物が獲物の生死を確かめるように匂いを嗅ぎ、少し触れるように胸に手を当ててみた。初めて触れる生身の女性の胸の感触に興奮を隠せず、荒々しく剥ぎ取ると美しい双丘が目に入った。頂上の桃色の先端を吸ってみた。反応がない。噛んで見た。やはり反応がない。双丘の麓に掌を当てると温かみと肋骨を感じた、が、あるはずの脈がなかった。死んだ?そう思った瞬間、後ろに飛びのいた。恐る恐る近づき、あらゆるところを摘まんだり、揺さぶったりしてみたがやはり反応がなかった。
この状況でも何故か俊博は、冷静だった。その冷静さに自分でも驚くほかなかった。飼育が無理なら剥製か…。
獲物の処理に思いを馳せる以上に俊博の分身は、勢いよく反応していた。何かで読んだか観たかの記憶が巡った。屍姦を躊躇していれば時間の経緯によって思いを馳せることが出来ない、そんな記憶が過った。俊博は、思考を変換した。下手に気づかれ騒がれたり、火傷を揶揄されるのは厄介だ。今なら、コンプレックス、ストレスなく、初体験を馬鹿にされることなく思いを存分に果たせられる。分身を蜜壺に挿入すると中はまだ温もりがあった。いまなら、思いを果たせる、と思った俊博は、分身を蜜壺から抜くと、女性を全裸にし、自らも全裸になり、束の間の至福の時間を堪能した。幾度か思いを果たしたころ、俄かに外が騒がしく感じた。ドアスコープから外の様子を伺い、耳に神経を集中させた。
ドアスコープから警察官が行き来する姿が伺えた。ばれたのか?
妹より2時間ほど遅れて姉が帰宅した。その際、玄関に鍵が閉まっておらず、不用心だと注意しようとヒールを脱ごうとしたとき、玄関の床に僅かな血痕を目にした。姉は妹の名を呼び、各部屋を探すがいない。不吉な予感が110番させ、被害届を出した。その知らせで警察がやってきたものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます