揀退天明
合澤臣
序
しかしこの
この大地には九つの泉が湧く。それはもとを辿れば地の最果てにあるというひとつの大泉――
九つの泉は九つの国それぞれが所有する。ここ五泉でもひとつの巨大な泉を源流として水は国内の隅々にまで行き渡る。通常その
泉主は誰にでもなれるものではない。古来より泉を澄明にする力を持つ家系によりその血は
神秘に満ちる黎泉は由霧で囲まれた最奥地から見えない根脈により各国へとその命水を注ぐ。泉主とは黎泉の伸ばす根の先に生ずる泉の継承者、ゆえに泉主の子は
――――とはいえ、こんなことが許されるはずが、と
「ちょっと、お待ちください。我々は演習に招かれたのではありませんでしたか⁉」
「の、はずなんだが」
聞いておりません、と彼は憤慨した顔であたりを見回した。火矢が撃ち込まれた森は盛夏の若芽を散らして燃え上がっている。
「とにかく、ここから出ましょう。きちんと事情を説明して頂かなくては」
次いで歯ぎしりした。
「仮にも他国の将軍を巻き込むなど、到底許されません!」
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