第22話「魔族大侵攻編・覇」
IFルートでもゲームのイベントは続く。
断罪ルートを回避したものの、今度は来るべき魔族の大侵攻に備えなければならない。
魔族大侵攻の前兆のように魔獣の発生件数が増えていった。
俺は自ら魔獣討伐する傍ら領内での軍の編成を再構築した。アーテリーと共に魔獣を仕留めるだけでなく集団で魔獣を討伐するための育成に励んだ。
そしてバーネット子爵領が安定して来てからは隣接する貴族の領地や周辺の貴族の領地の魔獣討伐に尽力した。
目論見通りというと人聞きが悪いが、計画通り周辺の貴族達からの信頼は得た。
「皆。この一ヶ月。魔獣による被害は最小限ですんだ。これはここにおられるヴェイン大将軍閣下のおかげである!」
魔獣被害の大きかった貴族でのパーティ会場での出来事だ。
将軍までは子爵以上の貴族であれば一人だけ自由に任命できる。
つまり俺はバーネット子爵家の当主の権限として自分を将軍に任命して軍を率いていた。
それに対して大将軍と言うのは王家から任じられるものである。そして俺はそんな大役を任じられてはいない。ただの将軍だ。
魔獣の被害の悩みから解放されたキュベレイ男爵は勝手にテンションが上がって俺を大将軍呼ばわりしていた。普段なら問題だが祝いの場なので誰からもツッコミはなかった。
ちなみに俺が将軍になるまではバーネット家領内の将軍は約半世紀に渡りビクトールが務めていた。
「ヴェイン大将軍。どうかうちの娘を側室に」
祝いの場で娘を側室にと勧められる。
ここまでぐいぐい来る人はなかなかいないけど毎回こんな感じだ。
*
魔獣討伐ばかりで戦い慣れた俺も連日の戦いや移動などで少しは疲れる。
屋敷に帰って来た時は愛しき妻達に恥ずかしげ無く甘えている。
今日はルーナに甘えていた。
「ヴェイン様。仕事が途中なのですが」
「もう少しだけ」
俺の第四夫人兼侍女長のルーナを仕事中にも関わらず部屋に連れ込んだ。
別にやましい事はしていない。ルーナの膝枕で寝ているだけだ。
「さっきもそう言っていたではないですか」
「そうだっけ。覚えていないな」
わざとらしく言ってルーナの膝を撫でる。
それに対して何も言わず「もう。しょうがないな」的な感じで頭を撫でてくれるルーナ。
だんだんと眠りそうになっているとドアをノックする音が聞こえた。
「ヴェイン。……あら。お邪魔だったかしら」
部屋に入ってきたセシルは俺とルーナを見てからかうように微笑む。
「どうした。セシル」
「ヴェイン。貴方に王都から使者よ」
「王都から?」
ルーナの膝に頭を乗せたままでセシルから詳細を聞く。
魔獣討伐の功績で勲章をもらうことが何度かあったが、いつもと違う盛大な感じなのを聞いて慌てて用意すると、見たことないタイプの使者の集団が現れた。
*
「ヴェイン・バーネット子爵をローゼリア王国大将軍に命じる」
王都にて国王陛下から正式に大将軍に任命された。
大将軍になった俺は近隣だけでなく王国中の魔獣討伐に乗り出した。
行った先では自領と同じように軍の編成を行い、国内の魔獣の被害は減っていきその功績でいつしか俺の名は他の国に響き渡るようになった。
*
大将軍になったがずっと戦いに明け暮れているわけではない。
魔獣討伐のために遠出して討伐が終わったら祝賀パーティに参加して屋敷に戻ってフランに甘えて魔獣討伐のために遠出して討伐が終わったら祝賀パーティに参加して屋敷に戻ってルーナに甘えて魔獣討伐に。と言う日々を送っていた。
アーテリーには魔獣討伐の従軍中に甘えていた。強大な戦力としてだけでなく夜も俺に尽くしてくれる。
セシルには祝賀パーティの時に甘えている。正確にはパーティが終わった後だが。
ちょっと油断するとすぐに俺の側室を増やそうとするのでそこだけが悩み事だ。こっちが「娘を側室に」と言う言葉を拒んでいるのに改めてその娘を見定めようとしている。
あとは屋敷に戻った際にルルがしれっと夜伽卒業みたいな雰囲気を醸し出しているのでまだ違うと身体にわからせてやることにする。
今日は第三夫人のフランに甘える日と決めていた。
自室で膝枕されながら並行世界に関する本を読んでもらっている。
内容もしっかり頭に入っているが、時折お尻を撫でるとピクリと反応するフランへのセクハラを楽しんでいた。
俺の子供を二人も産んでいるのに未だにこういう触れ合いに恥ずかしがって頬を染める可愛い女だ。
目を瞑るとだんだんとそのまま眠りそうになっていた。
「失礼します。ヴェイン様。お手紙が届いております」
フランを愛でながらうとうとしているとルーナが部屋に入ってきた。
「手紙。オスカーか?」
バルクの国王になった親友のオスカーとは手紙のやり取りをする仲だ。
「いえ。ウェスター公爵家からです」
それを聞いて俺は顔を上げた。
「ウェスター公爵家?」
ルグランジュ公爵家に並ぶ大貴族の名前を聞いて俺の眠気は吹き飛んだ。
*
元帥であるウェスター公爵に呼ばれた。
元帥は大将軍より上で三人いる大将軍に対して元帥はウェスター公爵一人だ。
俺は周辺の魔獣討伐に力を入れていたが、まさかそれが目ざわりにでもなったのだろうか。
今回呼び出されたのも勝手なことをするなと怒られるのだろうか。とちょっとドキドキしている。
国家に属さない大陸軍の結成が目標の俺としては国内でのごたごたは違うのだが。
向こうは元帥で公爵。俺は大将軍で子爵。
なんか文句言われたら素直に頭を下げよう。あまりにも理不尽な事を言われたらその時は義父に助けてもらおう。そう思ったのだが。
「ヴェイン大将軍。良く来てくれた」
思いのほか歓迎された感じで迎えられた。
シルバー・ウェスター。
今年で五十近い年齢とは思えない筋肉質な大貴族と言うよりザ・軍人と言った感じの人物だ。
「実はな。ヴェイン大将軍。私は元帥を引退しようと思う」
突然そんな事を言われてしまった。
たしかウェスター公爵の息子のアレクサンドル・ウェスターは長男ではないもののその能力から公爵家の跡取りとすでに決まっていた。
ゲームの攻略対象の一人。頭脳派の男だが、将軍になっていた。
息子が元帥になるからそれを支えて欲しいとでもいうつもりだろうか。
「ヴェイン大将軍。私に代わり次の元帥になってもらいたい」
「はい?」
「貴殿の活躍は聞いている。各地で魔獣を葬る英雄とも救世主とも呼ばれているそうだな」
いや、そんな呼ばれ方しているのは初耳です。とは言えなかった。
「陛下には推薦済みだ。次期に王都に呼ばれ元帥に任命される事だろう」
まさかの既に内定済みだった。
その数日後。
ウェスター元帥の言う通り、数日後には元帥に任命された。
「おめでとう。ヴェイン元帥」
「ありがとうございます。先代閣下」
「ついては私の娘も貰って欲しいのだが」
元帥になってもいつもと同じようなやりとりが始まってしまった。
*
元帥になって最初にやった事は、用意された宿泊用の屋敷に入るや否やセシルに抱きつくことだった。
「どうしたの。元帥閣下」
「今はただの妻に甘えたい男だよ」
そう言ってそのままセシルを押し倒して欲望に忠実に従った。
その後。
元帥に任命された俺は、アーテリーを連れて王国各地で軍を率いて魔獣討伐に力を入れた。
そして、外では英雄扱いされていても、屋敷ではセシルやアーテリーやフランやルーナ。愛する妻達に甘えている。
王国内の魔獣討伐が一段落して、陛下の許可を得て隣国への魔獣討伐へも乗り出していく。
こうして、魔族大侵攻に向けての準備は順調に進んでいった。
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