第11話 健気な可愛い女の子


「おい・・・宮島」

「お、ど、どうしたんだ?そんな死にそうな顔をして」

「また来てるぞ、例の彼女が」


「あぁ・・・・・・・」

「・・・・・・・・お前、後ろには気をつけろよ」

「気をつけろって」


今まで後ろをとられたことなんてないぞ?

いつも後ろをとる方だ。

そんなことを思いながら、教室の出口で待ってる月島の所に行く俺


「あっ先輩、はい」


今日もあいつは弁当を持ってきた、ように


「あのなぁ前にも言っただろう?もうこういうのはいいって」


そのなのだ、あれからこいつはいつもこうやって手作り弁当を持って来るようになった。もういいって言っても「先輩のあんな食事じゃ体壊します」って言ってなぜか譲ってくれない。・・・・・その時あいつの顔が寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?


俺は自慢じゃないが仕事柄相手の感情を読むのは得意だ、だがどうしてもあいつの表情は読み取れなかった。いったいこいつは何を考えているんだ?


「先輩、はい」


そう言いながら、少し強引にいつもの弁当を押し付けてくる彼女


「あぁ・・・・・」


ちょっと抵抗すれば、押し返すことも追い返すことできるんだが、俺はできずに結局その手作り弁当を受け取ってしまう。


「じゃあまた来ますね」


トコトコ


そして相変わらず、月島は可愛らしいペンギンみたいな歩き方で自分の教室に戻っていく。


「お前、本当に月島ちゃんと付き合ってないんだな?」

「それは何度も言っただろう、付き合ってない」

「だったらなんで、毎回お前だけ手作り弁当持って来るんだよ!!」

「ちょっと事情があってな」


なぜか断れなかった。

あの時の悲しみと寂しさと悔しさを混ぜ合わせたような顔を見たら・・・・・・


ったくこの俺が、たかが女子1人に手こずるとはな


この噂は学校中に広まってるみたいだ、それに俺が付き合ってないって言うもんだから、あいつを想ってる男子達が焦って告白しまくってるとか。

この前会った小太刀って女子がガードして追い払ってるらしいが・・・・・・・

俺も少し気にかけておくか


そして学校帰りにスーパー「サワダ」に行く


ここの激辛カップ麺が旨いんだ、それをかごの中に入れてると


トコトコ


「あっ」


月島と小太刀と・・・名前忘れた、その3人がカートを押しながら買い物をしていた。


「あっ・・ごめんちょっとおかしコーナー見てくるから先に行ってて」

「またお菓子?私たち野菜コーナーに行ってるから」

「うん」


そう言いながら、俺に気づいて近づいてくるのは小太刀だった。


「ちょっと来て」

「あぁ」


俺たちはあまり人気のない場所に移動した。


「あなた、ゆかりの弱みでも握ってるの?」

「・・・・いや何も、一応言っておくが、俺が脅してるわけでもない」


「・・・・・・そう・・・そうよね、だってあの子楽しそうに作ってるもの、

あなたのお弁当」


「俺は学校の奴らにどう思われようと、どうでもいい、だけど、あいつが・・・・月島がどう思われるのか心配だ」


「私もよ・・・・・・あんたのことは少し・・・ほんの少しよ、信頼してる」

「驚いたな、あいつを狙う害虫ぐらいに思ってるんだと思ってた」

「いくらなんでもそこまで思ってない、失礼ね」

「だから、そんなあんたに・・・お願いがあるの」

「ん?何だ?」


「あの子、あんたに弁当持っていく時、とても嬉しそうな顔をするの、

それに空っぽになって帰ってくる弁当箱を見る時も、だから・・・・すっごくすっごくムカつくけど・・・今は断らないであげて」


俺は、少し間を置いて


「・・・・・わかった」


そう答えた。


「あんたって良い人なのか悪い人なのかわからないわ」


「よく言われる、だが、あんな小さな体で頑張って1人で生きている人間を貶すような人間じゃない、それだけはわかってくれ」


「・・・・・・わかった、変な奴ね、あんた」

「それも良く言われる」

「くす♪そろそろ戻るわね」

「あぁ」


その時その小太刀が、少し、ほんの少しだけ笑ったように見えた。

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