第6話 我が家を案内

「ごちそうさま!おいしかったー」

ハナがスプーンを置いた。


「気に入ったみたいで良かったよ。アルバロも足りた?」

「うん!こんなに美味しい食事は初めてだよ」

 イケメンがキラキラしてる。ご満足いただけて何より。


食器を食洗機に任せてお茶を淹れる。

「ハナとアルバロ専用の食器とカトラリーも買わないとね」

「嬉しい!」

「僕のも?」

「あとでね。まずはアルバロに家の中を案内するよ」


ハナを抱いて立ち上がる。


「これは懐かしいかな?」

棚の上のコルクボードをハナに見せる。


「この写真…ハナ?」

「そうだよ」

 コルクボードに貼られた数々のハナの写真。おばあちゃんとハナ。田んぼに落ちたハナ。ドッグランのハナ。

「ハナが亡くなった後も私たちはハナを愛していたよ」


ハナがまた少し泣いた。

「えへへ」

泣き止んだハナに頬擦りすると愛犬時代よりもふわふわの毛皮が気持ちいい。



「ここはリビングダイニング。そこのドアから出ると廊下。ここがトイレでそっちが洗面所で、その奥がお風呂。トイレは2階にもあるよ。こっちは和室」

「おばあちゃんのお部屋」

「そう、よく覚えていたね」


ハナを下ろすと和室の中を行ったり来たり。


「おばあちゃんの匂いがする」

ハナの顔が夢見心地だ。


「今は部屋干しの部屋になっちまっているから片付けてハナの部屋にするか」

「ハナが使ってくれたら、おばあちゃんも喜ぶね」

 他にも空いている部屋はあるけど日当たりが良いので物干し部屋と化しているのだ。


 もう一度ハナを抱き上げて移動する。ここは応接間で隣が仏間。田舎の一軒家なので無駄に広い。玄関だけで都会のワンルームくらいある。


「アルバロの部屋はどこにしようか」


「あ、大丈夫だから!」

「でもチュートリアルって1日で終わらないでしょう?」

「安全のために時間はたっぷりかけようね」

「じゃあやっぱり…」


「ドアを繋ぐ許可をください」

「ドア?」

「僕の拠点と繋がるドアを設置させてもらうと話が早いから」

アルバロのドアはリビングダイニングに設置した。


「ご参考までにどうぞ〜」

アルバロに招かれてアルバロの拠点に足を踏み入れる。


「ヨーロッパ中世のお城の中みたい」

「この世界の上流階級の生活を反映しているんだ。おいおい学んでいくとして一般的な知識を今夜眠っている間にインプットさせてもらっていい?」

「それは助かるな」

父さんも私も了承した。


「それから生き直してもらうにあたって、もし良ければカナの年齢を成人年齢の15歳、マリオを34歳に変更してもいいかな?」

── 15歳…迷うな…今が29歳だから、ちょっと若すぎ…


「是非!頼むっ!」


 私が答える前に父さんが食い気味に答えていた。…まあいいか。


「じゃあ明日、2人が起きた頃にリビングダイニングに行くね。疲れていると思うからゆっくり休んで」

「ありがとう」

「おやすみアルバロ」


自分たちの家に戻った。

「父さん、お風呂は?」

「後でいいよ、カナが先に入っておいで。ハナちゃんパパとお話ししようねー」


 ハナにかまいたくて仕方ない父さんを置いてお風呂に向かう。約束通りお風呂のボタンは全部使えたしシャワーの勢いも問題ない。


お風呂は快適だった。

「出たよー」


 リビングダイニングの父さんに声をかけたらデレ顔で振り返った。ハナはうとうとしている。

「疲れてたんだね」

「寝顔が可愛くてな」

「ハナ、今日は私と一緒に寝る?」

「うん…」

「ええっ!ハナちゃん、パパと一緒に寝ようよ」


「…パパの枕くさいから」

 寝ぼけたハナからこぼれた本音にショックを受けているうちにハナを抱き取った。


「柿渋石鹸でよく洗いなよ、おやすみ」

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