ソルシェの庭

まひな

レシピ1 シュシュ・クリニック

「うん、これで買うものは終わりかなー」


歩いて商店街を抜け、ほうきにまたがる。

空高く浮かび上がり、太陽のある方へ進むと、私の住む病院が見えてくる。

『シュシュ・クリニック』

私とステラの営む、小さな病院だ。

私は魔法薬剤師、ステラは魔法医師として、魔法界の中心地とも言える大きな町、ミーリアで、ささやかに働いている。


「ただいま帰りましたー」

「おかえり、シュガーちゃん!」


柔らかい微笑みで私を迎えてくれたのが、

ステラ・フルール

回復魔法が得意で、私の3こ上。

頼れるお姉様…ではないけど、魔法はとても上手なので、尊敬はしている。


「食材は冷やしておくね、あと、そろそろ油が足りないから買ってきた、どこに置いておく?」

「その棚の左に置いておいてほしいな」

「はーい、了解」


この病院は3階建てで、1階は薬屋、2階は病院、3階が居住スペースとなっている。

魔法で拡張しているので、外からの見た目よりも結構広いのだ。

 

物をしまい終えて、ステラのいるキッチンへ向かった。いい匂いがしてくる。


「もう遅いし、夕ご飯にしましょうね」


窓の外が暗くなり始めている。

席につくと、なんとも美味しそうなロースト肉が運ばれてきた。


「いただきます!」

「召し上がれ♪」


まだ温かいお肉を、そっと口に運び、ゆっくりと噛みしめる…


「おいしいー!ステラは料理上手だね」


数年前に、魔法界に人間界文化ブームが巻き起こり、魔法界はさらなる発展を遂げた。

その中でも人間界料理は、革新的な味付けと、丁寧な見た目から、魔女の間で大ブレイク。

魔法界では魔法で味を変えてしまうから、素材が何でどう調理するとか、考えたこともなかった。

人間というのは、魔法が使えないなりにも面白いことをするのだなぁと驚いた記憶がある。


「シュガーも、お料理してみる?」


私はじっとステラを見つめた。

くすっ、とステラが笑う。

ついこないだも、草を燃やしたみたいなお料理を作ったよね…と言われ、私は自分の不器用さに嘆く。

結局あの料理がどうなったのか、私は知らない…


「薬!薬なら!できる…」


自分の得意分野で対抗するなど、我ながら余裕がないな…


「そうね、シュガーは優秀な魔法薬剤師だものね」


薬は別に見た目に気を配らないから、私でもできる。

この病院に訪れた患者さんに、良い薬を届けるのが私の仕事だから、日々薬についての研究や練習をしている。

そのせいで、毎日眠たい。


話していたら、月の光が段々と明るくなってきた。


「明日も早いから、そろそろ寝るよ」

「おやすみなさい、また明日ね」


私は部屋に向かい、ステラが干してくれたふかふかの布団に潜った。

天窓から見える星は、今日も変わらず綺麗だった。

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ソルシェの庭 まひな @mahina64466

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