第170話黒巫女召喚士と深紅の魔神その11
「だあああ!」
細胞を操作し、フランを抱えている体を分裂させ、下に落とす。
それを狙う用に尻尾がフランの方へと突き進む。
当然、そんなとこはさせない。
ふらんあを抱えている体から魔法が放出され、尻尾から離れる。
私も同じように魔法を使って移動して再び体をドッキング。
クルッと回転して地面に着地する。
「あの尻尾に気をつけないとな」
「うん。でも、びっくりするから何か言ってよ」
「言う暇なし! 深淵の混沌羅刹砲、展開!」
高速で術式を構築し、展開して発動させる。
ミニティラノ化しているオウガに向かってそれを放った。
オウガは口を大きく開けて、それを飲んで行く。
「は? いや、まて!」
私は急いでレミリア達の方を見る。
今もオウガの分身だと思われる気持ち悪い物体と戦っていた。
しかし、師匠は近接で、レイシアがメインで、レミリアはバフに徹していた。
それが分かるのは色の違いで分かる。
私は食虫植物のベルゼブブを確認する。
そこには、ベルゼブブの姿は既に無かった。
そうか、理解したぞ。
召喚魔法で呼び出されたベルゼブブはオウガの魔力を食い過ぎて、汚染された。
そして、オウガがそれを操っている。
「クソが!」
「叫んでもどうにも成らない。来るよ!」
「分かってる!」
放たれたレーザーを横ステップで避ける。
背中に近づこうとしたら尻尾が今の私の超超ちょー弱点のフランに行く。
まずは尻尾を切り落とす必要がある。
はは。なんか、フランと遊んでいるモフリの姿が浮かんで来たわ。
◇
フランと一緒に泉の上を散歩していた時に森からトカゲのようなモンスターが出て来たのだ。
最初はびっくりしたけど、フランはなんともなさそうにしていたのが良く、印象に残っている。
トカゲは傷ついているようで、フランが回復させようと近づいた。
フランが近くに居ないと泉に落ちるので、一緒に行く。
すると、トカゲはこっちを見て怯え出す。
敵対生物の筈のモンスターが怪我をし、私を見ても襲わない。
フランも襲わないどころか、普通に回復魔法を使えている。
NPCってだけだと思っていたけど、今なら分かる。
フランはNPCであってモンスターだから出来たのだと。
トカゲは私を警戒しながらもフランの回復魔法を素直に受けた。
フランに感謝を示して、自分の尻尾を切り飛ばしてあげていた。
その時、基本無表情のフランの顔がちょっと渋い感じに成ったのは、本当に面白かった。
NPCだけど人間のような感情表現や言動をするフラン。
それはこの世界のNPCの殆どがそうである。
新たな世界、AIの力で本当の人のように関わる事の出来る。
トカゲは尻尾がまた生えるようになっている。
逃げる為、尻尾は切れやすく成っている。
それでも、フランは何か嫌だったようで、回復魔法を使って尻尾を治していた。
それが少しループ化して尻尾が量産された。
その光景を見て、だんだんとフランがやけに成って行くのが面白かった。
フランの困り顔と戸惑った顔の合わさったような顔は可愛いかった。
そんななんともない光景をこの場で思い出した。
この戦いにはなんの役にも立たない記憶。
思い出。
「【ダークネスカオスキャットモード】」
私の頭に猫耳が生成され、2本の尻尾が出現する。
オウガは魔法の溜め状態に入っている。
腰を低くして、四足歩行に切り替える。
黒い爪が伸びて地面に深く刺さる。
草履と足が一体になって行く感覚がする。
毛が伸びて正に猫のような黒い毛が足を覆い、新たな足を生成する。
「フラン、目を閉じてな」
「え。ん? 分かった」
「いい子だ」
私は地を蹴る。
オウガに直線的に向かって。
オウガは私に向かって魔法を放つ。
このまま当たったらかなりのダメージを受けるし、フランは一溜りもないだろう。
だが、魔法なら問題ない。
「無駄だ!」
2本の尻尾を薄く広げてフランに被せる。
暴食の力を外側の表面に出してフランを完全に守る。
私はダメージを受けながら進む。
流石にバラバラな所にそれぞれ暴食の力を解放するような思考力はない。
そんな事したら動きが止まる。
大体1秒に受けるダメージは3000。
ネマとマナ、そして私のHPを合わさても絶対に足りない数値。
そこには付け焼き刃のVITも意味ないだろう。
だが、合体は足し算じゃない。
別に掛け算って訳でもないけど。
それでも、HPは全然あるし、自己再生能力で1秒1500を回復する。
ピッタリ1500ダメージでこのレーザーは抑えられる。
相手からのレーザーを逆らっての突き進みだ。
動きは少し遅くなるが、距離的に2秒あれば付ける!
私はオウガの前へと来た。
オウガは魔法を辞めて1度後ろにバックステップして、尻尾を振るう。
大きな尻尾が視界の左側かは迫って来る。
「猫舐めんな!」
軽く跳躍してクルリと周り、相手の尻尾へと着く。
爪を食い込ませて落ちないように気をつけながら、私は駆ける。
登って登る。
ティラノの頭がこちらに向かって来たが、口から魔法を放って動きを止めておく。
人の形なのに口から魔法を放つ事をしているが、まぁそんな恥なんて今更だ。
上に行けば当然先っぽの方がこっちに当たるようになる。
後ろから尻尾の先端が迫って来る。
太いと言っても足場が限られている尻尾。
私は全身しながら少しづつ斜めに進んで行く。
尻尾をグルグル周りながら突き進む。
これにより、狙いが安定しない尻尾は私になかなか攻撃を当てられない。
尻尾から体に乗ると、上下にぴょんぴょして振り落とそうとするオウガ。
「なんだ。この状態だと棘は出せねぇのか?」
後ろから尻尾が迫って来る。
猫状態を解除して、足の裏から刃を伸ばして体に固定させる。
尻尾が消えたのでフランも解放させる。
「フラン、届きそうか?」
「あと、ちょっと」
ジタバタしながらも尻尾を正確に私に向かって伸ばして来る。
「やってやるよ」
今の私に死角は存在しない。
両手を刃に変換させて、尻尾を迎え撃つ。
左側から来るなら左の刃で薙ぎ払う。
それを繰り返し、最後には尻尾が直線的にこっちに向かって来た。
耐えて、やんよ!
「そりゃあ!」
刃をクロスして尻尾の突き出しを防ぐ。
足に力を込めて重心を安定させ、フランが背中に手を届くように少し腰を下ろす。
「もう、少し」
「あああああああ!」
気迫と共にさらに重心を下げて、腰を下ろす。
「【ブレイク】」
『ぶあああああああ!』
足の刃を解除し、蹴り飛ばして脱出する。
残り2割!
「いやああああああああああああああ!」
フランの絶叫が私の耳を通り、脳を揺らす。
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