第126話メルとグリム行っきまーーす
私達は昼の活動の為に睡眠を取る事にした。
毛玉ハクちゃんに埋まり、眠るのは最高だったが息が出来ないので死にかけた。
ま、仮面付けたので問題無かったけどね。
◇
「じゃあ、行こうか」
「はい」
グリムがメルを抱っこする。
グリムの背中には2本の黒剣が担がれていた。
グリムが背中に意識を向けると黒い剣はその形を変えて行く。
魔剣:
特徴は名前の通り『翼』である。
黒翼は形を変えて行き黒い翼と成った。
それは堕天使のような黒色の翼だった。
「グリム、行っきまーーす」
「私も行きまーーす!」
グリムは跳躍して飛び立つ。
翼がバサりと動き上昇して行く。
その2人を追い掛けるかのように10本の魔剣達も付いて行く。
グリム達の狙いは草原の奥の方に発見された中規模クランだった。
「お、6人程のパーティが居るね。どうする? 戦う?」
「何処ですか?」
「ほら、あそこ」
メルを落とさないように抱えて人差し指でその方向を刺す。
その方向には確かに豆粒サイズの物体が動いていた。
「⋯⋯見るんですか?」
「まぁね。魔法士が1人、聖職者かな? が1人、アサシン1人、剣士1人、タンク1人、最後の1人は武器を見える場所に担いで無いから分からない」
「凄ッ!」
「まぁ、家の家系は目が良いからね」
グリムの母親の視力は8。グリム自身は11ある。父親はグリムの家系では無いので普通である。
グリムの視力が2桁あるのはヒラメ龍の目が濃いのにも関係がある。
そして、ステータスで反映されない感覚や視力等は現実と同じと成っている。
感覚の場合、武術家等の経験者が有利に成らないようにブレがあるが。そのブレによって体を動かすのを得意とする人が居る。
ムニン、オレンがその類いである。
「まぁ。無視で良いですかね?」
「了解。さっさと本命を試そうか。レイシアさんとではあんまり分からなかったし」
「ですね。あ、アレを使って見て下さい」
「ん? でもアレは羽を使うから飛べないよ?」
「それなら。
グリムとメルの胴体をクルリと巻き付ける。
グリムの翼が分解されて行き、複数の羽が現れる。
羽は真ん中に円を作るような配置に付き、6人パーティの方向を向く。
「レイシアさんではボロボロの短剣で斬られたけど、大丈夫だよね?」
「普通のプレイヤーだったら無視出来ない火力な筈です」
「それが聞けて良かったよ」
手を掲げて意識を集中させる。
円の中に黒色の球が生成されて行く。
「【
黒色の球がレーザーへと変わり的にされた6人パーティに放たれた。
きっと6人パーティは叫び声を上げただろうが、その声は遠くに居る2人には聞こえなかった。
目的地から少し離れた木陰に到着したグリム達。
「実戦では初めて使いますが大丈夫ですかね?」
「うん。それこそ心配は要らないね」
「では。来てください。擬人剣、シュラ」
メルが10本の魔剣に名前を付けた時は基本的に武器の種類に近い名前を付けた。
しかし、最初の魔剣である
黒色の純粋な形の刀がメルの近くに来た。
そして、黒色の光が包みその形を変えて行き、光が収まるとそこには片膝を着いて頭を垂れて居る侍が居た。
機械のようなメカニックボディに2本の角が生えた甲冑を顔に持ち、紫色の目を持つ魔剣。
グリム(181センチ)よりも大きいその身長。
剣術のレベルはレイシアの50パーセント。剣士系職業ランキング1位の剣術はレイシアの25パーセントくらい。
技術、性能の両方を完備した存在こそ、シュラである。
「シュラ、あそこのクランに居る人達と戦ってください。貴方の実力、期待していますね」
「オ期待ニ答エラレルヨウニ精進シマス」
シュラの特徴は人の姿に変わる事。否!
この魔剣は最初の魔剣。超越者のエンチャント加減が分からない状態で作られた1品。
1番の特徴は『魔剣を装備』する事である。
さらに言えば、それに制限は無い。
メルが10本の魔剣を装備出来る理由がコレである。
本来武器は自分の手で持っている時に装備扱いとなり、内蔵されているスキル等が使える。
純粋な手数で火力を上げる場合はオレンがアラクネ戦で見せた爪のように複数の短剣を指で挟んで使ったり、足に括り付ける事だ。
しかし、それはあくまで小さい短剣だから出来た事であり、普通の短剣では無理。
片手用の長剣型の魔剣では尚更だ。
本来ならグリムのように2本が限界の武器装備。
それを1本で可能にしているのだ。
要約すると、メルは1本の魔剣しか正式に装備していないが、その魔剣が他の魔剣を装備している。
その魔剣を介して他の魔剣のスキルを使う。
それが今のメル。前代未聞の複数装備者である。魔剣の数を増やせば大量に装備出来る。管理出来るかは知らない。
「メル様ノ愛刀ヲオ借リシマス。ユシル」
シュラは中規模クランに向かって走って行った。
「【投影】」
半透明のウィンドウが現れる。
シュラの視界を共有して半透明のウィンドウに表示しているのだ。
高速で走って中規模クランに侵入。
聴覚も共有して相手の声も聞こえる。
「なんだ、コイツ」
「侍か? にしても、メカで甲冑や鎧ってなんか、ダサいな」
シュラはキレた。静かに。
自分の大切な主が作った自分の体が侮辱されたのだ。
シュラはユシルを展開した。
粘着液を出す刃。高速飛行して相手を攻撃する刃。打撃攻撃の球体。大きな刃。
木刀のような木製の魔剣が闇を纏う。
大きな刃の闇だけは大きく闇の光を漏らす。
闇に染まった木刀は木刀には見えなかった。
シュラが扱うのはユシルの本体である刀を扱う。
刀を正面に構える。
「だが、警戒はしろよ。見た目は遅そうだが、なんか嫌な勘がする」
「辞めて下さいよ。上官の勘は当たるんですから」
シュラに対する複数人の人達は短剣を構える。
中には火縄銃を構える人も居る。
さらに人の配置も揃える。
その咄嗟の判断と指揮、連携力。
シュラが侵入してから数秒で会話を挟みながらも互いの役目を理解して移動して居るのだ。
中規模クランの本質は訓練。
これも訓練の一つである。
感覚が現実に近く様々な動きが出来る事から自衛隊等の訓練でも使われるワルフロ。
その自衛隊クランの1つが今、シュラが戦う相手である。
しかし、相手は訓練の一貫で行っているのでスキルもある程度制限して使っている。
だが、その訓練も相手がプレイヤーであるなら通用する事だろう。
しかし、シュラはプレイヤーでは無い。魔剣だ。
HPバーが見えていない事に気づいている人も数人居る。
「ユクゾ!」
ここから始まるのはシュラと自衛隊の戦闘か。いや、一方的な殺戮である。
それが今後話題に良く上がるようになる注目プレイヤー、『惨殺の黒侍』である。
見た目はメカメカしいが防具が大鎧で2本の角が生えている甲冑を被ってると言う。
しかし、その人達は知らない。それは防具では無く、体本体であり──武器であるのだ。
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