第124話武道家と侍の再会?

 現在セカイはムニン達が行かなかったエリアへと向かって進行していた。


「懐かしい気配を感じて三千里! その走り方の癖! 久しぶりだな貴⋯⋯⋯⋯反真楼天龍はんしんろうてんりゅうの後継者よ!」


 振りおらせた刀をバックステップで躱す。

 メルが作ったローブを羽織っているがそれでも相手は何となくセカイの事を知っているようだ。

 セカイは訝しみながらもフードを外す。

 相手は腰に鞘を備え、刀を両手で構える袴姿のポニーテールの女性だった。

 前にモフリがメル達の場合を聞いたプレイヤーだった。


「⋯⋯ふん! いくらキャラメイキングで目を柔らかくしても奥底に眠る鷲のような鋭き気配は隠せんぞ! いくらゲームでも!」


「⋯⋯すみません。出会ってそうそう失礼じゃないですか?」


「え、確かにキャラメイキングでアバターはリアルと離しているけど、それでも気配的に分からない? アタシ達幼馴染だよね?」


「ご、ごめんなさい」


「えーー。ま、まぁ良い。アタシの流派、猛龍飛天流もうりゅうひてんりゅうを見せてやる!」


「それは、もしかして」


「ゆくぞ!」


 相手は地を蹴りセカイに接近する。


「自己紹介がまだだったな! アタシはクラン、侍同好会のマスターラン。またリアルで会おう!」


「私はセカイです。ごめんなさい。全く貴女の事を知りません。流派も分かりません。なので、お引き取りを」


「断る!」


 ランと名乗った女性プレイヤーの猛攻は続くが、セカイはその全てを捌き、反撃に移る。

 反撃で放った拳を刀で受け止めて後ろに退るラン。


「やはり。反撃が得意な型だね。フゥゥ。少しお着いた。てか、本当にアタシが誰か分からない?」


 セカイはコクコクと顔を倒す。

 するとランはガックリと肩を落とす。


「まぁ良い。またリアルの方で会いに行かせて貰うから。さて、守りと反撃に特化した反真楼天龍。破壊と猛攻に特化した猛龍飛天流。拳と剣、対の対決。昔はボコボコにされたが、ここでは本気で戦える。勝てるとは思わぬ事だな」


(いや。ですから分からないと言っているでは無いですか。相手は私の事を結構知ってそうですね)


 セカイが自分の構えを取る。


「スゥゥゥゥ」


 呼吸をして【チャクラ】を発動させて操作する。

 チャクラは身体能力の向上と強化である。

 チャクラを拳に集中させる。


「よく分かりませんが、私も負けるつもりはありませんよ」


「その鋭き目。やはり貴女は貴女だな」


 内心イライラのセカイ。

 自分のコンプレックスをネチネチ責められるのはストレスの原因である。


「行くぞ! 猛龍飛天流。猛守分別」


 刀を振るうランに対してセカイは刀を右手の甲で受け流す。

 捻った体の勢いを利用して左手で攻撃する。

 しかし、それを知って居たかのようにニヤリとランは笑い、重心をずらし刃の向きを変える。


「貴女を倒す為に編み出した技。とくと見よ!」


 セカイの拳がランに届く前に刃はきっとセカイを斬るだろう。

 それで倒されるかは疑問だが、かなりのダメージは予想される。

 しかし、セカイは冷静に対処する。


「【天龍至点】壱の型。黒点」


 チャクラが自動的に動いて右手に集中する。

 セカイの体が反自動的に動いてスキルを発動させる。

 左手を引き、右手を一瞬引いて溜めて、放つ。

 ランの振るう刃と同じ威力がある。

 実際はランの威力の方が高いのだが、放つ拳で少し刃を受け流し威力を下げて完璧防御判定にしたのだ。

 互いに後退る。

 互いにトントンとステップして体制を直して、ズズと地面を擦り止まる。

 再び接近して近接の格闘を繰り広げ、時にはセカイがスキルを使ったりする。


「武術家なのにゲームのスキル使いますん?」


「これも師範から頂いた武術ですから。使いますよ」


「左様ですか。なら、アタシも使いから。【ソードビーム】」


 縦に刀を振るい、合わせるように斬撃がセカイに向かって飛んで行く。

 セカイは横にステップして躱し、体を捻り体制を直す。

 地面に着地と同時に地面を蹴ってランに接近する。


「なっ! そっちから攻めて来るのは流石に予想外。猛龍飛天流。飛天送還」


 重心を前方に傾け、全身の力を刀の先端に集中させる。

 重力に従い高速に振るわれる一撃。


「反真楼天龍。神奈楼打」


 その一撃に対して直線的に拳を放ち。

 刀の数ミリ横を通り手首を曲げて軽く弾き、拳を止める事無く放つ。

 少し横にずらされた事を察知したランはすぐさま次の攻撃に移す。

 猛龍飛天流の本質は殺人と猛攻に特化している。

 ランは破壊と言っているが、それは暗殺業の終わりを告げる為の嘘である。

 詳しい話はここでは省く。

 猛攻に特化した猛龍飛天流は技が失敗した時にすぐさま次の技へと切り替えれるのが1番の特徴と成っている。


「【天龍至点】壱の型。黒点」


 攻撃の狙い、チャクラを一点に集中して一瞬加速させて高速の打撃を放つスキルを使いセカイはランの顔面にストレートを放つ。


「ふぐっ」


 刀で防ぐ事の出来なかったランはかなりのダメージを受けて吹き飛んだ。


「武術にスキル乗せるとかアリかよ!」


「アリですよ」


「はぁ。まぁなら、この一撃で決める」


 刀を鞘に収めて体を低くする。


「ッ!」


 その構えに覚えがあるセカイ。

 誰かと被るような感じがしたが、今は集中と振り払う。

 セカイも構えをとる。


「スルルルル。猛龍飛天流。猛飛龍!」


「シュぅぅぅ。反真楼天龍。反楼龍!」


 鞘に力加えて一撃に力を乗せる。

 全身の力を1点の拳に集中する。


「【超加速】【超怪力】【斬撃】」


「【天龍至点】参の型。螺点」


 めいいっぱいに力を加え、スキルも乗せた斬撃に対してセカイは拳の力を上昇させる。

 刀と拳が衝突し火花を散らす。


「「はぁぁぁあああ!」」


 気迫と共に力を加えて激しく押し合う。


 ガリン、そんな音がなり互いに後ろに飛ばされる。

 互いに受身を取り成る可くダメージを下げる。

 しかし、顔面クリーンヒットされたランの方が満身創痍だった。

 それでも僅かにHPは残っていた。


「全く。流石だな。だけど、まだ闘え⋯⋯」


 激しい戦闘を繰り広げていた2人。

 当然音が響き火花によって暗い夜の中に本の少しの光によってバレ、レッドゲージとなったランのHPに対して矢が飛んで来た。

 単純な漁夫の利である。


「⋯⋯また、今度」


 セカイもHPが少ない方なので戦略的撤退をする。


(結局、1ポイントも手に入らなかったな)


 そんな事を思い、クランホームへと向けて帰った。

 クランホームで回復する為だ。

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