第112話新たな妖術と霊符

 1度状況を整理しよう。

 私は第3層へと移動して転移ポータルを使って見知らぬ場所に転移した。

 本来なら転移ポータルの前に転移する筈だ。

 だが、今私が居る所は地面ですら無かった。

 空なのだ。

 しかも、見える空は空なのか怪しく、宇宙の様な空間だったり大地だったりマグマだったり水だったり、どれも流れてないし落ちて無い。

 うん。何言っているかさっぱりだ。

 しかも地面に落下しないからね?ずっとぷかぷかもしておらず、空で停止しているよ。

 冷静に状況整理出来るくらいには長い間空で停止している。


「さて、そろそろ降りますか」


 私はマナちゃんを呼び出して下ろして貰おうとしたが、マナちゃんが動かない。

 いや、あの戸惑った顔は動けないのだろう。


「あーまじですか。妖術も使えない⋯⋯⋯詰んだ?」


 あ、これ完全に詰みましたね。まさか父お手製の本で見た完全に詰みの状態の1つだよ。

 どうするの?オープンワールドのこの世界で誰か助けてくれるのでしょうか?

 いや、無理ですね。ここ、マップ外なんで。


「⋯⋯そろそろ助けて下さァい!本当に何も出来ないんですけど!」


 下に居ると思われる師匠達に向かって叫ぶ。

 下が見れないのでどのくらいの距離があるか分からないけど取り敢えず叫ぶ。

 マナちゃんも困っているよ。【応召】しておこう。

 飛べるマナちゃんにとって飛べない状況は辛いだろう。


 返事が来ません!かれこれ30分くらいは空で停止してますよ!

 ま、なんか飽きないけどね。

 空が逐一変わるのでなかなか飽きない。良い景色だ。

 時には夕日が沈む時の海だったり、オーロラだったりと色々と景色が楽しめる。

 1面マグマになった時は流石につまらなかった。

 時々噴火している場所にも成ったのに岩石等はこちら側には来なかった。


「あ、モフリ来ていたのか」

「下ろしてください」

「はは。すまんな。空間が狂っているからこんな状態に成ってしまうんだ」


 師匠が私の裾を引っ張って地面に下ろしてくれる。


「自由って素晴らしい」


 場所を移動すると、レイシアさんやマーリンさんが居り、スケルトンナイト達がせっせこと作業をしている。

 転移ポータルに似ている物があるのであれだろう。


「あ、モフリ来たね。もうすぐ完成するらしいよ」


 レイシアさんはレイシアさんのお父さんとお酒を嗜んでいるようだ。

 レイシアさんのお父さんは少し悲しい雰囲気を醸し出している。

 マーリンさんは師匠のお父さんとスケルトンナイトに指示を出して作業を進めている。


「いやー大変だったね」


 マーリンさんの軽い感じの言葉。


「どうしてこうなったんですか?」


 純粋な疑問をぶつけるとレイシアさんが。


「何処ぞの黒い巫女が空間を狂わすレベルの妖術を何回も使うから⋯⋯」


 師匠曰く。


「何処ぞの魔法士が次元魔法を連発するから」


 マーリンさん曰く。


「何処ぞの剣士が空間を何回もぶった斬るから」


 私的にはどれも凄い事だと思うけど、それで悪魔が出て来る扉は破壊出来なかったのでしょうか?

 ま、良いか。


「で、今は何しているんですか?」

「空間の修復と、この場所を利用しようと思って」

「利用?」

「そう」


 師匠の話す事を要約すると、ここで激しい戦いをやり過ぎた。空間修復する。ここの土地結構良き。この大樹結構良き。ベルゼブブ居なく成ったし再利用しようかな?現在改造中。


「最終的には浮遊大陸にしよかと思っている。で、家族でここに住もかと」

「師匠とレイシアさんとお父さん組とですか?」

「おいゴラァ何で私が入ってないんだ?アァ?」

「成程、皆さんでここを使うんですね」

「モフリも一緒に、な」

「ほへ?」

「いやーいちいち神社に来るの面倒臭いでしょ?だったら一緒の方が楽でしょ。それにモフリの仲間も気になるしな」


《クランホーム:天空の世界樹の獲得条件を満たしました》

《任意によって得られます》


 わぁお。⋯⋯クランまだ設立していないし皆と相談だね。


「で、色々と使える施設は作って、最後にあの木に精霊を宿そうかと」

「精霊?」

「そう。黒ちゃんが持っているレプンカムイとカカとアウライの魂。私が大地と光と闇の精霊をこの木に宿す。そしたら完璧な力を発揮してくれるでしょ」

「レプンカムイとかカカとかアウライって何ですか?」

「過去に倒した神」


 おぉ、あっさりと。後で愛梨ちゃんになんの神か聞いておこう。


 それから私は師匠に妖術を教えて貰う事にした。


「いっきに強く成り、肉体と言う器も大幅に強化された。なんでいっきに覚えさせるのを加速させよう。それと、モフリは自身の属性も手に入れたようだしな」

「属性?」

「そそ。自分だけの妖術の属性の事だな。深淵が、モフリの属性だ」


 成程、だから深淵の巫女なんだ。


「師匠は?」

「陰陽だな。それ、始めるぞ」


 陰陽、陰と陽。決して交わる事の無い物。

 え、絶対強いやん。

 レベル6上昇し、進化もいっきに加速して行われた事によって本来のレールから外れて新たな妖術が増えた。


 ───────

【風乱舞】

 形代×1を消費、MP30を消費する事で発動可能。荒い風の球体を生み出せる

 ───────

【風刃】

 MP30を消費する事で発動可能。風の刃を3本呼び出して放つ事が可能。MP10消費する事で刃を追加出来る

 ───────

【風天】

 形代×3を消費、MP60を消費する事で発動可能。攻撃判定のある風を生み出す。不死者特攻

 ───────

【風魔】

 形代×3を消費、MP60を消費する事で発動可能。攻撃判定のある風を生み出す。天使特攻

 ───────

【電牢】

 MP30消費する事で対象を電気の檻で捉える事が出来る。耐久値300

 ───────

【天雷】

 形代×3を消費、MP60消費する事で発動可能。天から雷を落とす事が可能。不死者特攻

 ───────

【風爆符】

 上位霊符専用。周囲の空気を凝縮して爆発させる。範囲が広く爆風が強い性質を持つ。作成必要MP50

 ───────

【炎爆符】

 上位霊符専用。周囲の空気を凝縮して炎を生み出し爆発させる。炎症攻撃判定。作成必要MP50

 ───────

【氷爆符】

 上位霊符専用。周囲の空気を凝縮して氷を生み出し爆発させる。氷結攻撃判定。作成必要MP50

 ───────

【起爆符】

 上位霊符専用。周囲の空気を凝縮して爆発させる。半径500メートルの範囲内なら任意で解放可能。場所把握能力は無い。作成必要MP50

 ───────

【呪爆符】

 上位霊符専用。周囲の空気を凝縮して呪いを持つ爆発が起こる。爆発に巻き込まれた対象はHPMPを除くステータスを10パーセント2分間減少させる能力がある。作成必要MP50

 ───────

【呪縛符】

 上位霊符専用。【呪縛】の上位版。作成必要MP50

 ───────


 上位霊符!【霊符作成】を確認すると上位霊符が欄に追加されていた。

 おぉ、ついにか。

 ステータスを見返して見て思ったけど黒巫女の服が成長するタイミングが分からない。

 プレイヤーレベルかな?SPどうしようかな?

 全然レベル上がらないけど⋯⋯ボス倒したのに。

 SP30どうしようかな?


 そう考えているとトントンと肩を指で叩かれている感覚があり、振り返るとスケルトンナイトの1人が長方形の紙を渡してくれる。


「刻まれている術式的に上位霊符!」

「そう。ここで生産するようにしたんだよね。今後、紙の材料もここで栽培出来るようにするから定期的に手に入る」

「わぁお」


 全部完結させよう。やる事成す事プレイヤーよりも次元が違う超越者達。世に放って良いのかな?

 私達に全面的な協力は無いだろうけど、安定して霊符が手に入るって凄いよね。うん。

 うん?


「スケルトンナイトさん達でも霊符って作れるんですか?」

「あぁ、それは妾と契約した事である程度妖力が使えるようになったから問題ない。魂の繋がりで妖力の提供も可能だしな」

「うーん。魂とかよく分か無いな。あ、皆呼んで来ますね。それからここに住むか考えます」

「おう。モフリが皆を呼ぶ前には空間は安定させておくよ。さて、そろそろ動きますかな」


 あ、師匠サボって⋯⋯睨まれたので目を逸らしておく。

 うん。師匠はきっと監督をしていたんだ。マーリンさんの方がキビキビ動いている様に見えるのはきっと⋯⋯気のせい、だと、思う。

 師匠はちゃんと仕事するのだ。うん。今から⋯⋯じゃなくて私のせいで止まった仕事を再開するのだ。


「モフリ、行ってらっしゃい」

「レイシアさん。行ってきます」


 転移ポータルは普通に使えるようだった。


『いや、だから連動アプリのメッセージメール機能使えよ』


 やり方分かんないんだよ!通話の方も桃ちゃんにやって貰ったし!


『私が知らないならわたしも知らない』


 って、わたしの名前どうしよう?


『時間が出来てからで良いよ。つか、名前付けたらそれこそイタい子だね』

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