第53話新たな力

 師匠の所に行く為に私は鳥居に向かう。


「本格的に町中見ようかな?」


 まだ行っていない所や訪れていない施設もある。

 レベリングの成果でゴールドも溜まっているしポーション等も買っておこうかな。


「お嬢さん」


 てか、レベル上がったし職業専用のショップの方も行かないとね。セカイちゃんにも返金しなくちゃ。


「巫女服のお嬢さん」

「あ、私ですか?」

「そうです」


 町中でお嬢さん言われても反応する人が数人といない人が数人現れるだろう。私は反応しないタイプだ。それで違ったら恥ずかしいからね。


「召喚獣との絆を確かめたくないですか?」

「絆?」

「そうです。召喚獣との絆、つまりはどれだけ信じ合っているのかを確認できますよ」

「なんか、面白そう」


 お婆さんに付いて行く事にした。

 知らない人に付いて行ってはダメ?ここはゲームだよ。

 リアルでは速攻で⋯⋯お婆さんだし挨拶とか普通にするし逃げないけどね。


《転職クエストを行いますか?YES/NO》


「⋯⋯ッ!」


 私はYESを押してお婆さんに付いて行く。

 付いて行くとボロ屋に着いた。お婆さんが関わるクエストってボロ屋が基本なのかな?


「こちらにどうぞ」

「お邪魔します」


 中には魔法陣が書いてあるだけで他は特に無かった。


「これは?」

「まずは召喚獣を出してください。契約して6以内の召喚獣は省きます」

「そっか、ゲーム内時間の筈だから、カルちゃん以外の子だね」


 ま、カルちゃんも召喚しておくけどね。

 召喚士がレベル10になって同時召喚可能回数が3体になった。

 だが、この部屋は特別なようで全員召喚できた。


「さて、お嬢さんはここに腰掛けてください」

「座るだけ?」

「はい。試験を受けるのは召喚獣だけです」

「試験?」

「絆の試験です」


 ハムちゃん、ネマちゃん、イサちゃん、マナちゃん、ハクちゃん、クロちゃんが魔法陣の上に乗る。


「では、始めます」


 魔法陣が輝いて、光が収まるとカルちゃん以外の召喚獣は眠っている。


「⋯⋯」

「心配はなさらずに、試験に合格したら出られて、不合格でも出られます」

「基準は?」

「それは、この子のみぞ知る事です」

「⋯⋯」


 心配だ。


 ◆


 黒猫が草原をゆっくりと歩いて居た。

 辺りを見渡してここがどこなのかを確認している。


「にゃ〜」


 自分の主を探す為に走り出す。そして、身の前に黒色の巫女服を着た女の子が居た。

 黒猫、ネマはそれをスルーして自分の主、モフリを探す。

 村がありそこに入ると様々な人が居た。

 ネマに対して良くしてくれる村人達にネマは心を許す⋯⋯のでは無く警戒していた。

 完全に自分を陥れる動きをしている村人達を人睨みして村を出る。

 なにかヒントが無いものかとネマは辺りを見渡す。


「ニャ!」


 何かしらのヒントかもしれないと見つけた看板に向かって走る。

 だが、村の案内だった。


「にゃ〜」


 ネマはもしもここが凄く広い場所だったら相当な時間が掛かると想像した。

 ネマには自分を大切にしてくれる主や共に戦い過ごす心許せる大切な仲間が居る。

 その元に帰ると踏ん張って再び走り出す。


「ネマちゃんやっと見つけたよ!」


 声、喋り方、見た目、その全てがモフリの女性がネマの名前を呼んだ。

 ネマは振り向いてその女性を見る。そして、近づいてくるその女性から逃げた。


 ──あの人じゃない、と。


 それからネマは長い長い旅を経てついにモフリと再開した。

 特に戦闘は無かったがモフリの居た場所を探す為に相当苦労した。

 そして、ネマは合格した。


 ◆


 黒色の毛並みのハムスター、ハムは捕まっていた。

 ここは自分が居た所とは違う場所だと認識して尚動かない。正確には動けない。

 ケージの中に居るのだ。


 助けて。


 ハムには戦闘能力は皆無と言って良いレベルであり、ケージも壊せないので抜け出せない。

 ハムはモフリに助けを求めた。


「ハムちゃんご飯ですよ〜」


 ラフな格好のモフリがハムのケージにご飯を入れる。


 あんたは誰や。


 見る度にそう心の中で叫んでは逃がしてとぴょんぴょん跳ぶ。


「どったの?」


 モフリはハムを片手に乗せて自分の下に運ぶ。

 その瞬間ハムは走り出した。逃げる為に。

 自分の主はこの人では無いと、思って。

 ハムは合格になった。


 ◆


 黒犬が首輪してリードに繋がられて散歩をしていた。

 自分のリードを掴んで居るのはモフリであり、モフリでは無い。


「わんわん」


 帰して帰してと吠えてもその声がモフリに届く事は無かった。


「どうしたの?何時もはそんなに暴れないじゃん?」


 何時もはそもそもリードに繋がれとはないとイサは考えた。

 対面から犬の散歩をした人が来た。


「あ、可愛い犬〜」


 モフリは近づいてその犬の頭を撫でる。

 イサは思う。


 全く再現されてないな、と。


 完璧にモフリを演じるなら、大型犬なので威嚇してくる所だ。

 なのに、普通に撫でられている光景にイサはため息を付く。

 本物に会いたいとイサは思って吠える。


「くぅーん」


 イサはそんなつまらない生活を数日送り、本物のモフリが迎えに来た。本物と言っても風格等が同じだけで本物では無いだろうが。

 それでもイサは少し安堵した。モフリの背後にある黒く怖いオーラを見て。

 怖くは無い。見た目などは怖いがそれは自分を害すような物ではなく、寧ろ愛してくれるソレである。

 だが、モフリがモフリでありモフリじゃない時に、そのオーラは唐突に邪悪に変わる。それがイサ含めて召喚獣皆が嫌いだ。


 ◆


「コーン」

「コーン」


 こちらは白狐、黒狐のハクとクロだった。

 2匹同時に同じ場所に来たようだ。そして、目の前には絶賛戦い中のモフリが居た。

 ただ本能で倒すべき相手と認識して攻撃している。

 ハクとクロは普段は温厚で他者の心を瞬時に読み取り相手が何をして欲しているのかがある程度分かる分析能力を持っている。

 あんまり使ってないが。

 そして、相手は偽モフリ。

 モフリの戦い方を見て来たハクにとって躱すのは朝飯前だ。

 そして、あと少しで倒せると言う所でモフリが変化する。正しく本物に近くなったのだ。見た目等の変化は無い。だが、本物のモフリが今、目の前にいるのだと認識した2匹はモフリに攻撃出来なかった。

 ハクとクロは合格になった。


 ◆


「あ、皆おはよう」


 皆が目を覚ます。そして、飛び込んで来る。


「お、おお?どうしたの?嬉しいけど」


 私はネマちゃんとイサちゃんにほっぺすりすりしてハクちゃんとクロちゃんは毛玉になっていたので抱き締め、ハムちゃんは私のおでこに来る。

 カルちゃんがボッチ化しているので呼び寄せてお腹に乗せる。


「ほほう。全員合格、偽物と本物の区別が出来たようだな。なかなかの絆、魂の繋がりを感じる。さてさて、最後にお嬢さん、ソナタの素質を測るぞ」

「はい」

「では、参る」


 戦うの?


「汝に問おう、汝如何なる時でも仲間と歩み成長するか?」

「当然だよね?」

「汝、自らの仲間を永遠の仲間とするか?」

「当然だよね?」

「汝、最後の決断として仲間を死なせなくてはならない時、どうする?」

「私が犠牲になって済むならそうするよ」

「即答か、良し。汝に新たな力を示さんとす、汝に祝福が訪れる事を切に願う。汝の絆、魂の繋がりを可視化せよ」

「なにこれ!」


 私の中から光が現れる。


「プラチナ、最高の輝き、最高の絆の象徴であり召喚士としての才能の証⋯⋯力となりて汝を強くせよ。召喚獣達よソナタの主がどのように成ってくれると嬉しいのかを想像し、望め。さすれば叶うであろう」


 イサは思い出す、連動して皆が思い出す。

 モフリは言った。もう誰もやられる事はさせないと、守ると。

 だからこそ召喚獣達が望むのは──強さ──その一択であった。


《Congratulation!転職クエスト達成!報酬召喚士Lv10から召喚士・創Lv1になりました》


「召喚士・創⋯⋯なんか雑じゃない?私の妹から聞いた情報なら進化形態って召喚術士とか精霊召喚士とかそんな感じで繋がりがあるのに間に挟んでるよ」

「いやはや、1番高いレベルの力に目覚めた。良きかな良きかな」

「それってどう言うじゅ⋯⋯」


 順番、聞く前にお婆さんは居なくなっていた。


《条件を満たしました。称号:絆の召喚士を獲得しました》

《称号の効果で今後、契約個数が増える事はありません》

《尚、契約解除も不可です》


 つまり、ハムちゃん、ネマちゃん、イサちゃん、マナちゃん、カルちゃん固定って事だね。

 問題にならないね。数が増えないのは残念だけど。

 あ、でも式神が増えたら別なのかな?

 職業を確認したら師匠の所に向かいますか。

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