第44話新たな仲間 式神編


「おかしい」


 ハクちゃんとであった時よりも長い時間走っている気がする。

 あくまで体感の話だがそれでも長く感じる。

 直線的に進むのは良くないと思ったので、1度戻ろうと思う。

 後ろを振り返り走る。すると、何かを蹴った。


「あ、ごめんなさい」


 私はその蹴ってしまった存在を探す⋯⋯見当たらない。

 地面に手を当てて手荒たり次第に探して行く。


 モフ


「おや?」


 モフモフ⋯⋯ハクちゃんの時と同じ柔らかさだ。

 私はそれを鷲掴みにして私の目の前に運ぶ。


「み、見えない?」


 確かに触っている感覚はあるのだが、目に見えない。

 多分、この暗闇が保護色になっているかもしれない。


「えーと、妖狐さん?」

「きゅん?」


 黒色の多分毛玉の形が変わる。

 なぜ分かるかと言うと、毛並みが変わるからだ。


「えーと、私を嫌わない?」

「きゅるる」


 よく分からない。表情が分からない。

 私は正座して、膝に妖狐と思われる存在を置く。

 そして、頭の位置をハクちゃんを想像して触る。

 そして、撫でる。


「きゅるる」

「私の式神になってくれない?」

「コン!」


 一瞬の光の後、私は師匠達の所に戻って来る。


「お、戻って来たようだな」

「はい」

「ほれ、これじゃな。今回も銀色だ」


 私はその形式を受け取り呼び出す。

 私達の6匹目の仲間である。


「こん!」

「あ、やっぱり黒狐だ」


 名前を付けよう。⋯⋯ハクちゃんは白い毛だったからハクにした。

 だからクロちゃんにしよう。


「クロ⋯⋯なんてどうかな?」

「きゅる?」


 額に妖狐さんの肉球が当たる。


「安直すぎる?」

「きゅん」


 妖狐さんは縦に頭をコクコクと動かした。


「じゃあ新しく考えるね」

「きゅん!」


 妖狐さんはさらに肉球で攻撃して来る。柔らかい。


「クロで、良い?」

「こん」


 良いようだ。


「じゃ、改めて宜しくねクロちゃん!」

「こん!」

「ちゅん!」

「にゃん!」

「わん!」

「こん!」

「ぴぴ」


 皆で仲良く歩いたり飛んだりじゃれている。

 さて、ステータス確認なり。


 ───────

 妖狐Lv1

 名前:クロ

 HP:‭3/3‬

 MP:5/5

 STR:1

 DEX:‭2‬

 VIT:‭1‬

 AGI:‭4‬

 INT:3

 MND:1

 スキル:デバフ

 内容:対象にSTR降下デバフ、VIT降下デバフ、AGI降下デバフ、INT降下デバフのいずれかを掛ける事が出来る。対象に対し複数使用可能だが、重ねがけは出来ない。MP5を使う。

 ───────


「じゃあ!レベリングだ!」


 新たに仲間が増えたのでレベリングが大変だ。

 同時に召喚出来る数は、4である。ハクちゃんとクロちゃんは固定である。式神に召喚最大数なんて無いようだ。

 まずはマナちゃんとクロちゃんのレベルアップを目指そう。



 国から出て外を見渡すと草原であった。

 草原の奥を見ると雪があったり森があったりする。

 私は森に向かう事にした。


 森の中で最初にであったのは『山狼マウントウルフ』だった。


「さて、どうやって経験値を稼ごう」


 クロちゃんはデバフを1回打てば問題ないが⋯⋯マナちゃんはどうしようか?

【共有】しておけば良いかな?それしか無いか。


召喚サモンイサちゃん、マナちゃん、ハクちゃん、クロちゃん」

「わん!」「ぴぴ!」「「こん!」」

「イサちゃんごめんだけど、防御及びタゲ取りをお願い」

「わん!」

「マナちゃんは共有を使って空を飛んでいて」

「ぴぴ」

「ハクちゃんはイサちゃんに防御バフ、私に妖術バフを」

「きゅん!」

「クロちゃんはマウントウルフに速度を下げるデバフをお願いね」

「きゅん!」


 さて、まずはマナちゃんの【共有】を使って貰う。

 逃げられる前に倒す!これが【共有】なのか。

 私の視界はそのままなのにマナちゃんの視界も入って来る。違和感ありそうなのに違和感が無い。


「お、おう」


 なんか気味悪い筈なのにそうは思わない。うぅ、まあいいや。


「じゃ、行動開始!」


 マナちゃんは飛び立ちイサちゃんは隠れていた木から飛び出して【挑発】と【堅牢】を使い、ハクちゃんもバフを掛けてくれてクロちゃんもデバフを使う。


「行くよ」


 私は飛び出して【風足】と【風刀】を同時に構築する。

 構築完成速度は【風足】の方が速い。

【風足】で素早く移動して【風刀】で鋭さを上げて上から振り下ろす。

 イサちゃんに釘付けのマウントウルフに攻撃する。


「グル!」


 それだけでは倒せない。私はそのまま融合妖術を試して見る。


「構築、展開⋯⋯妖火風弾」


【妖火】と【風弾】を組み合わせた妖術だ。

 火の風の弾がマウントウルフに飛んで行き直撃する。

 ⋯⋯言っては悪いけどマナちゃんの【共有】は全く意味が無い。


「ピピ!」

「ごめんなさい」


 まさか意識も共有されていてこっちの考えも分かるようだ。

 それはもはや『共有』では無く『以心伝心』では?視界があるし違うのかな?

 ま、良いや。


 マウントウルフが私に向かって走って来るがイサちゃんの力で無理矢理ターゲットをイサちゃんに向けられる。

 そのまま牙を剥き出してイサちゃんに向かって走って行く。


「て、言うかなんで森なのに山なのよ!解!」


 そんな突っ込みと共にイサちゃんに貼っていた【呪縛】を発動して捉える。


「展開、風槍!」


【風刀】は斬るに強いが【風槍】は貫くのに強い。

 現状では貫く方がダメージが出ると判断して【風槍】を使用した。


「がァァァァ!」


 マウントウルフが叫ぶ。

 私は【呪縛】が切れる前に倒し切る。

 私は再び【風槍】を2つ作り出して飛ばす。

 マウントウルフに2本の風の槍が刺さりダメージエフェクトを散らしながら消滅して行く。


《経験値を獲得しました》


 ドロップアイテムは無しのようだ。

 私は【共有】を解除して貰いマナちゃんが私の肩に乗る。

 それからもモンスター探す為に森の奥に入って行く。


「アァ!なんと美しい事か!やはり君にはここが1番似合う!その鮮やかな青色ッ!この薄く輝く湖にふさわしい!」


 そんな声が聞こえた。

 私は少し気になりイサちゃん、マナちゃん、ハクちゃん、クロちゃんと顔を合わせてから離れた所から見る事にした。


「ふむ、ふむふむこの角度かな?いや、こっちの角度かな?おお!木々の隙間から入る日差しがまた君を美しくする材料となっている!」


 なんか怖い人かも知れない。

 青色の大剣を持って色々な所に動いたり翳したりしてそう叫んで居るのだ。


「きゅるる」


 ハクちゃんが1歩下がる。

 だが、そんな怪しい危ない人の近くから小さなうさぎが現れる。


「危ない!」

「え?」


 私は【風足】を使って瞬時に移動して霊符を数枚取り出す。


「全解!」


【風刀】と【風槍】の霊符を同時に解放してうさぎをオーバーキルする。


「お、モンスターが居たとは⋯⋯いやはやありがとう」


 そう言ってその女性は握手を求めて来た。

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