第7話初めてのLvアップ

 今は森の中を進んでいます。


「ネマちゃんはイサちゃんみたいに臭いでモンスターの場所とか分かったりする?」

「にゃ〜(フルフル)」

「まあ、猫だもんね」


 私はネマちゃんを抱きながら森の中を進んでいた。

 木があって直線で進みにくい以外は文句などなかった。


「風が心地いい」

「にゃ〜」


 ガサガサ


 またもやそこら辺の草むらからモンスターが飛び出てくる。


「スライム!」


 まさかこのゲームにスライムがいるとは⋯⋯カエルがいるから当たり前かもしれない。


「ネマちゃんは見ててね!私が華麗に妖術で倒して見せるから!」

「にゃん!」


 ネマちゃんは私の胸からピョンっと飛び出て地面に着地して座る。

 私はお祓い棒を右側に移動させ、左手の人差し指と中指をくっつけて口元辺りに移動させる。

 術式の組み方は何となくだが分かっている。


「術式展開!」


 私の目の前に小さな魔法陣のような術式が現れる。


「妖火!」


 術式の中から小さな青色の火が出てくる。

 遠隔操作可能の便利な火であるのだが、その分動かすスピードは遅い。

 私の遠隔操作が上手くなればより速く動かす事が可能かもしれない。

 或いはそれに連なるスキルが手に入るのかもしれない。


 妖火をヒョロヒョロと動かしながらスライムに向けて進める。

 スライムは微動だにしない!これなら行ける!


「あ」


 妖火が出ている時間は10秒だったようだ。

 制限時間のすぎた妖火は消えてしまった。


「私には妖術は早かったかもしれない」


 私はお祓い棒を両手で持って、剣道の竹刀のように構える。

 スライムはピョンピョンとどこかに行ってしまう。


「あ!まで逃げるな!まーて」


 スライムの逃げる速度はそこまで速くないので追いつける!


「喰らえお祓い棒アタック!」


 上からお祓い棒を振り下ろす。

 目(?)をこちらに向けていないスライムには私の渾身の攻撃を諸に受ける筈だ!


「えい!」


 私の掛け声と共に振り下ろされたスライムにお祓い棒が当たる。


「勝った!」


 《経験値を獲得しました》

 《Lvが2に上がりました》


「ドロップアイテムは無しか。でも、Lvが上がったよネマちゃん!」

「にゃ〜」


 SPは5の倍数で10なのでステータスを上げる事が出来ない。


「やったー勝ったよネマちゃん!」

「にゃん」


 肉球とハイタッチを交わす。

 再びネマちゃんを抱いてこの場を移動しようとした時、草むらから3匹の狼が出てくる。


「あ!そういえば名前とか見えるか試すの忘れてた!⋯⋯まあ、今は確認出来ないよね。ネマちゃん逃げるよ!」

「にゃん!」


 私はネマちゃんを両手で抱いて、お祓い棒をインベントリにしまう。

 狼達が待っていてくれたかのように準備を終えた私達に向かって3匹とも追いかけてくる。

 私はひたすら逃げる。

 木に当たらないように必死に逃げるが、捲ける気配が一切ない。

 今の私は装備によってAGIが120あるのに普通に追い付かれそうなんだけど!


「術式展開!妖火!」


 妖火を出して横に移動させるだけでも妨害には使えるかなと、期待しておりました。

 簡単に避けられるのだ。


「まじですか!」


 全く役に立たないこのスキル。

 これが本当にレジェンド職業なのでしょうか?


「でも、やられるのは嫌だしなぁ〜。ネマちゃん、何とか戦うよ!」

「シャー」


 ネマちゃんを地面に離し、私はインベントリから再びお祓い棒を取り出す。

 木々があるので少し短めにしておくのも忘れない。


「3対2、数はフリ!私の勝率は極めて低いね!」


 3匹の狼が左、右、正面に移動してくる。

 背後を取ろうとはしないようだ。


「ネマちゃんは躱す事に集中しながら正面をお願い!私は何とか左右の狼を足止めしてみるよ!」

「にゃー」


 作戦会議が終わったのと同時に左右と正面の狼が迫ってくる。

 正面は任せた!


 私は左の狼に向かって走り、お祓い棒を下から上へと振り上げて空中に狼を送り、その下を通って場所を変える。


「「グルル」」

「妖火!」


 術式を展開したので妖火を作り出し、操作していく。

 未だに遅いのがネックだが、仕方がない。

 狼の顔の高さまだ移動させる。

 狼が迫って来たのを合わせて狼の顔にお祓い棒を押し付けて妖火に当て、さらにもう1匹の狼から逃れるために後ろに下がる。


「あた」


 下がった所には木があり、ぶつかってしまった。

 その隙を付いて私の逃げ場をはなるべく無くそうと右と左の斜めの位置に狼がいる。

 1匹はさっきの妖火のせいで顎のところからダメージエフェクトが出ている。


「「グルガァ!」」

「グッ!」


 右の狼の噛みつきをお祓い棒を横にして口元にやる事で防いだが、反対から来た狼の噛みつきを太ももに受ける。


「痛い!」


 グイグイと顎の力を入れていく狼。

 私はお祓い棒をグイッとして狼を離してから噛み付いてるお祓い棒の顔を目掛けてお祓い棒の下のところを押し当てるように振り下げる。

 それが目にヒットして大量のダメージエフェクトを出しながら狼は引き下がる。


「ぐぬぬ」

「にゃん」

「大丈夫だから集中して!」

「にゃ〜」


 ネマちゃんの方が回避も攻撃も上手い。

 着実にダメージは与えているようだ。


「私だって負けないもん!」


 お祓い棒を握り、狼を睨む。

 1匹は顎にダメージエフェクトを、もう1匹は右目からダメージエフェクトを出している。

 しかも、目にダメージを受けた狼のHPバーの下に何らかのマークがある。

 そして、HPバーが徐々に減っている。


「現実なら目から血が出ているよね?」


 血が抜けていく現象はHPを徐々に減らしてくれるのかもしれない。


 左の狼が攻めに来ない。

 きっと目に受けたダメージで私を警戒しているのだろう。

 顎にダメージを受けた狼は私を追ってくる。


「まだ、1匹なら!妖火!」


 私は妖火を顕現させて狼の進む道まで動かすが、妖火とは反対の方向から向かって来るように軌道変更をした狼には妖火は当てられない。


「ふんぬ」


 私はさっき程と同じようにお祓い棒で噛みつきを防ぎ、狼が逃げないように押していく。


「せいやぁ!」


 私は狼を蹴る。

 お祓い棒の効果がないのでSTRが10の蹴りなのでそこまでダメージは無かった。


「ぐぬぬ、ピンチなんですが」


 誰か助けてくれませんか?


 狼達が警戒している間に目だけを動かしてネマちゃんを確認する。

 狼のHPがかなり無くなっている。

 これは、ネマちゃんの援護をして狼を倒した後に協力した方が確実な気がする。

 そうと決まれば行動あるのみ!

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