銀河をこの手に! 改 -試製事象蓋然性演算装置X-PC17-

山口遊子

序章

第0話 プロローグ

[まえがき]

 作者の山口遊子(ヤマグチユウシ)です。

 本作『銀河をこの手に! 改~』は『銀河をこの手に!-試製事象蓋然性演算装置X-PC17-』https://kakuyomu.jp/works/16816700427625399167 を改稿したものになります。かなり加筆していますが、物語のラインは変わりません。再読していただければもちろんありがたいですが、既読の方はスルーしてください。

 前作同様、本作も娯楽を目的とした小説ですので、そういったものだとご理解していただければ幸いです。

 作品世界の技術水準ですが、宇宙船は推進剤を高速で撃ちだすことで加速し、重力制御、重力推進等の技術はありません。その代り、安定宙域と呼ばれるある条件を満たす恒星系内の宙域から同じく他星系内の安定宙域への超空間ジャンプは可能です。また超空間通信技術、重力探知技術は確立しており、超空間ジャンプ、超空間通信、重力探知では時間差は発生しません。

 攻撃兵器は実体弾を投射するレールガンとレーザービームを照射する光線兵器が主流になっており、ミサイル系統の武器は費用対効果の関係で多用されてはいません。また大小問わず艦の主砲にはレールガンが採用されており、光線兵器は主に迎撃兵器として使用されています。また実体弾の威力は砲弾の質量と射出速度=レールガンの口径と砲身長に依存するため、通常の軍艦は艦尾から艦首に向けてレールガンの砲身を艦の全長一杯に伸長しており、一般的には軸線砲と呼称しています。

 いわゆる不可視のバリアのような防御兵器は存在せず、大型の軍艦は鏡面加工を施した装甲板を取り付けることで実体弾と光線兵器に対する防御力を上げています。小型の軍艦では艦体表面を鏡面加工していますが質量のかさむ装甲板を持たないため実体弾への防御力をほとんど持ちません。

◇◇◇◇◇◇◇


 西暦26世紀に入り、人類世界は、超空間ジャンプ技術とそれに付随して超空間通信技術を獲得した。ただ、精密な超空間ジャンプのためには事前の観測と、その観測結果に基づいた天文学的に大量の計算が必要だった。その計算量は当時の最高速量子計算機で数十日かかるものだった。また、超空間ジャンプの特性として、宇宙船が超空間に突入ジャンプイン後、通常空間側に質量の突然の喪失による空間擾乱が発生し、同じように超空間から通常空間に復帰時には突然の質量の出現により空間擾乱が発生した。

 擾乱中の空間近傍で次の超空間ジャンプを行うには擾乱が収まるのを待ったうえ、再観測と再計算が必要となる。

 因みに質量変動によって発生した空間擾乱は超空間内にも高次元の波を発生させるため、無時間で探知される。この超空間での波を感知する装置を重力探知機と呼称しており、有効レンジは星系の広さにほぼ相当する。

 その後、量子計算機の性能は上がったが、それでもジャンプ計算には10日前後の計算が必要だった。初期の宇宙探検時代はそれでも良かったが、複数の恒星系に植民地が形成されるに及び、交通、交易の必要性からジャンプ計算の高速化が求められた。しかし、計算機のハード的な高速化は、なんらかの画期的なイノベーションがない限りすでに限界に達していた。


 26世紀中盤、ある条件下では精密転移に必要な観測点が少なくて済み(ジャンプ計算の計算量が少なくて済む)ジャンプ後の空間擾乱が微小である宙域が恒星系内に存在するはずだという仮説が提唱され、各星系で調査が行われた結果、星系ごとに数カ所そういった宙域が存在することが判明し安定宙域と名づけられた。



 宇宙開拓時代の始まりである。


 太陽系から飛び出し、宇宙に広がっていった人類は各所に植民地を設けたが、各植民地は開発母体の国家の影響を色濃く受けて発展していった。そういった植民地は現地の豊富な資源を利用し周辺星域を開発することでさらに力を蓄えていった。それほど時間もかからず、開発母体国家を上回る「国力」を有するにいたり、次々と独立して星間国家を形成していった。一部の植民地国家は独立時、開発母体国家と紛争になったが、多くの植民地国家は平和裏に独立を果たしている。


 植民地の独立や抗争の中で母体国家の総体としての地球の影響力は薄れていき、歴史的遺産を持つ観光地として存在するだけの存在に成り下がっていった。地球内では依然として各国が覇権争いを続けており、ついに27世紀中盤、大規模核戦争が勃発し核の冬を迎えていた。地上は荒廃し、かつての植民地国家に対する影響力を完全に失ってしまっていた。


 28世紀に入り、星間国家のうち有力国家は周辺開発を推し進めると同時に隣接する弱小国家を併呑していき星間帝国を形成するに及んだ。人類宇宙は帝国主義時代を迎えたわけである。星間帝国の内、自前で超空間ジャンプ能力のある宇宙船を建造できる星間帝国を人類宇宙では列強、または列強国と呼び始めた。



 その列強の一つ、出雲皇国は地球時代、極東の1国家を母体とした星間帝国である。出雲皇国は星間帝国としては珍しく周辺星間国家を併呑すること無く発展を遂げた関係で単一民族国家である。


 その首都星系である輝玉星系内の皇都惑星出雲で物語は始まる。出雲皇国の正式名称はもちろん『出雲皇国』だが通常『皇国』と国内外で呼ばれている。



◇◇◇◇◇◇◇

[あとがき]

枝番のあるエピソードは長くなった1話を分割しただけのものです。

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