与太話:氷の翼

 エラン・ヴィタール 屋敷

 リビングに置いてある円形のテーブルに、フレスとアリシアがついていた。

「なあ、貴様」

 アリシアがクッキーを頬張りながら話しかける。フレスはテーブルに肘をつき、拳先で頬を支えて聞く姿勢を取る。

「なによ」

「フレス・ベルグ……と言えば、Chaos社のアイスヴァルバロイドにそういう名前があったと思うが、貴様は何か関係があるのか?」

「ああ、その話ね……バロンの奥さんが言うところには、あたしは元々その、アイスヴァルバロイドっていう生物兵器だったらしいわね」

「ふむ……他の記憶を探ってみたりはしなかったのか?」

「サキュバス……って知ってる?」

「うむ。先の最終決戦の最中、アイスヴァルバロイドを自走爆弾に変えて生み出された兵器、だな」

「あたし、その一体だったらしいわ」

「ほう、それは何とも……」

「んで、他のサキュバスと同じで自爆する予定だったんだけど、海に落ちたお陰で助かって、あんたたちが極楽浄土って言ってたあの世界に流れ着いたみたい」

「難儀な人生だな」

「ま、そのお陰であんたたちに会えたし、あたしは今の形に満足してるわ」

「ふん、主の前でもそれくらい素直ならいいんだがな」

「あんたたちは逆に好意を全開にしすぎ……ってかアリシア、あんたはどっちかって言うとあたし寄りでしょ。いっつも近くに行きたそうにしてるくせにスカしてるし」

「妾は王龍だからな。人間に阿る気はない――」

「たまにあんたがバロンに構ってもらえてるとき、犬みたいな感じに見えたけど」

「だっはぁッ!?なぜ貴様がそれを見ている!」

「そりゃ見えやすいところにいるし……」

「そんなことを言うのなら貴様だって!書庫で主と会った時にタジタジだったではないか!」

「……!バッカ、なに見てんのよ!」

 二人の言い合いは、リビングにバロンとエリアルが来るまで続いたのだった。

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