第10話

死出島密室島連続殺人事件(10)


鮎人


「ひ、宏美先輩!」


部屋を飛び出すように出て行った宏美を、


後ろから追いかける


宏美


「・・・


 来てくれたんだ」


宏美は少し安堵したような表情を浮かべた


鮎人


「どっか行くあてでもあるんすか」


宏美


「まあ、一応ね」


この島はあまり広くは無く、


船がつけれそうな場所は俺たちが来た港と、


もう一か所しか無いらしい。


宏美


「もし、他に部外者がこの島に入ったとしても、


 港には船は着けないと思うんだ」


鮎人


「・・・


 まあ それはそうっすね


 俺たちと鉢合わせするかも知れないし」


宏美


「・・・


 そう考えると、他に船で降りれそうな場所は、


 この先の松林の裏にある、


 もう一つの砂浜くらいだと思う」


暗い道を宏美は、まるで家の近所を


散歩するような足取りで歩いていく


思わず宏美に話しかける


鮎人


「ちょ、ちょっと」


宏美


「何?:


鮎人


「もう少し、なんて言うか、


 周りに気を払った方がいいんじゃ...」


宏美


「じゃないと犯人に襲われるかもしれない?」


鮎人


「・・・」


声を出さないように、黙って頷(うなず)く


宏美


「・・・


 大丈夫。


 あなたがいるから」


鮎人


「???」


松林を抜け、砂浜に辿り着く、


小さな公園程度しかない砂浜を、


宏美と一緒に、船を探す


少し歩くと、宏美が、


宏美


「・・・


 ねえ? 


 今回の事どう思ってる?」


鮎人


「・・・


 今回の事?」


宏美


「鮎人君は、私が都都逸先生と谷川君を


 殺した、


 そう思ってる?」


言葉が詰まる


何も言えない


鮎人


「・・・」


宏美


「もし私が、都都逸先生と、


 谷川君を殺してたらどうする?」


鮎人


「・・・ッ!」


ドキっとした


宏美


「二人の事を恨んでいて、


 そして、私は、偶然を装って


 二人を殺す...」


そんな事を宏美先輩がする訳がない


鮎人


「そ、そんな事宏美先輩がする訳ない」


宏美


「・・・


 何でそう思うの?」


鮎人


「い、いや、宏美先輩がそんな事するようには見えない」


宏美


「・・・


 見えない、か。」


宏美が急に黙る。


「何かおかしな事でもいったか?」


と思ったが、よく分からない。


宏美


「あっ」


宏美の視線の先を見ると、


そこには杭にロープが縛り付けられた、


小型のボートが一つあった


宏美


「やっぱりここだったみたい」


"やっぱりここだったみたい"


おかしい、


何か不自然な違和感を感じる


宏美の顔を見ると、


表情が無い


上手く言えないが、


なにかがおかしい


宏美はそのまま小型のボートまで歩いていく


鮎人


「ちょ 宏美さん!」


宏美はまるで耳が聞こえていないように


どんどんボートまで近づいていく


鮎人


「・・・


 なんだ あれ」


ボートまであと二、三メートル程の


所まで宏美が近づく。


すると、宏美はポケットから何かを取り出した


鮎人


「・・・」


"危ない!"


とっさにそう思った


宏美先輩のところまで、走る


鮎人


「宏美先輩!」


宏美は俺にはまるで無反応で、


ポケットから取り出した


スイッチか何かのボタンを押す


瞬間、


「バン!」


派手な音を立てて、ボートが爆発する


ボートは一瞬で粉々になり、


その残骸が、煙を立てて燃えている


鮎人


「宏美先輩!」


宏美の肩を揺らしながら、


宏美を抱きかかえる


宏美


「・・・」


鮎人


「な、何でこんな」


宏美


「・・・


 ごめん。


 巻き込んじゃって」


宏美はそう言うと、気を失った


宏美の目からは涙がこぼれている


鮎人


「う、うおおおおおおおおおおおお」


今、全てが分かった


今回の事件の真相、


そして犯人が...

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