第9話

死出島密室島連続殺人事件(9)


急いで厨房に移動すると、


それまで無言でいた部員たちが、


一斉に口を開く


弘也


「つ、つーか今の何だよ!」


洋子


「私たちの他に誰かいるって事?!」


国木


「帰りた~い」


俺たち以外に誰もいないと思っていたが、


どうやら、他にもこの島には、人間がいるのか?


だとしたら、そいつがボウガンを撃った奴って事なのか?


国東


「その鍵はなんだ?」


先ほど窓の近くに落ちていた鍵を


国東が手に取る


柿崎


「たぶん船の鍵だと思う」


国東


「・・・


 今の奴が落とした?


 窓の所に?」


弘也


「つ、つーか何しに来たんだよ


 俺たちを...」


柿崎


「ボウガン撃った奴って事か」


わざわざ俺たちが集まっているところまで来て、


窓を叩いて消え去っていく...


こいつの考えがよく分からない


鮎人


「俺たちの他に誰かがいて、


 そいつが危険な奴だとするなら、


 俺たちも少し準備しといた方がいいんじゃ...」


柿崎


「・・・


 準備ってなんだよ」


鮎人


「・・・


 ボウガンを撃つような奴なら


 他にも何か持ってるかもしれないし」


柿崎


「お、オイオイ」


そう言うと、


他の部員は厨房にあった刃物や、


金属製の道具を手に取る。


弘也


「・・・


 つーか今のなんだったの?


 俺たちのところまで来て、


 鍵だけ置いてったってこと?」


国東が少し考えながら言った


国東


「・・・


 罠かも知れない」


弘也


「え?」


国東


「だってそうだろ?


 何が目的だったか分からないが、


 そいつが俺たちの命を狙っている可能性もあるし、


 そんな奴がわざわざ何もしないで


 鍵だけ置いてくか?」


弘也


「・・・


 でもキチガイってのは


 そんなもんかもしんないし」


柿崎


「またあいつが来たらどうするんだ?


 ここにある包丁とかで


 戦うのか?」


戦う? 


ボウガンで人を撃つような奴と?


包丁で?


倒せるのか?


いい考えが浮かばない


ここに固まっていたら、また狙われるかも知れないし...


だったら奴を捕まえに行く?


包丁で?


国東


「・・・」


鮎人


「・・・


 船の鍵があったって事は、


 この島に船がもう一台あるかもしれない、


 そういう事ですよね」


柿崎


「・・・


 まあそうなるな」


鮎人


「それ探しに行くってのはどうですか?」


国東


「・・・


 探しに行ってどうするんだ?」


鮎人


「その船使えば


 もしかしたらこの島から出れるかもしれないし、


 この島に外部から来た人間がいるって事が分かれば、


 宏美先輩の疑いも晴れる...」


国東


「ま、まあ そうかな」


柿崎


「だがかなり危険だろ


 ここで固まってジッとしてた方が


 安全なんじゃないか?」


それもそうだ。


外にいるより、建物の中にいる方が


安全な気もする。


宏美


「・・・


 私、行きます」


弘也


「え?」


宏美


「・・・


 自分の事は自分でやります」


宏美は自分が疑われていると思って、


どうやら潔白を証明したいらしい


国東


「それは...」


部員たちの大半は、


内心、宏美とは一緒にいたくない、


そう思っているようだ


誰も宏美を止めようともせず、


宏美は部屋を出て行く


宏美さんを必死で庇(かば)っていた弘也も、


なぜか宏美さんが出て行くのを


何もせず、ただ見ている...


鮎人


「お、おい」


慌てて宏美の後を追いかける

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