第7話 ギルドが戻って来いとウザいので、遠くに行きます

「うふふ……ギルドマスターのポンコさんから料金は貰っているから、気にせず楽しんでね……坊や?」

「王都の女は最高でしょ?」


 ノックの音に玄関を開けると、胸の谷間がくっきり見える煽情的な衣装を着た女性が立っていた。

 新手の訪問販売だろうか?


「爆乳な女性はちょっと…… (女神ちゃんで)間に合ってます」


「……えっ?」


 がちゃん!

 僕は玄関のドアを閉めると、鍵をかけた。



 また別の日……。


「はぁ~い♪ 現在冒険者ギルドからノイン君にお得な割引券配布中!」

「こ・れ・を・つ・か・え・ば……あたしも含め、王都ヘブングループ全店が1か月無料でお世話してあ・げ・る」


 ノックの音に玄関を開けると、やけに露出の多い衣装を着たスレンダーな女性が立っていた。

 新手の訪問販売だろうか?


「僕はお世話されるよりする方が好きだし…… (ウチには要介護者がいるので)間に合ってます」


「……えっ?」


 がちゃん!

 僕は玄関のドアを閉めると、鍵をかけた。



 ***  ***


「なんかさー、最近訪問販売が多いよね……王都の治安が悪化しているのかな?」


 かちゃかちゃ……


 ぐでー、とソファーで寝転んで女神スマホ(?)を弄っているユーノの前に暖かい紅茶とクッキーを置いてやる。

 せめてスカートの時は脚閉じろよ……色気のないパンツが丸見えである。


「ありがとうノイン!」


 彼女はパッと顔を輝かせると、寝ころんだままクッキーに手を伸ばす。


「こらユーノ、女神のくせに行儀悪いよ」


「ふあ~い (ポリポリ)」


 そう言いながら僕は、彼女の頬についたクッキーのかけらを拭ってやる。


「……それにしても、ノインの好みってめんどくさいよね」

「わたしみたいなぐーたら巨乳美少女が好きとかっ」


 ユーノはソファーから体を起こすと、にやりと僕に笑いかける。

 朝から晩までごろごろしているニート女神ちゃんは大変自意識過剰なようだ。


「僕が好きなタイプは生活力皆無で不器用、むしろ介護が必要なくらいだけど、一生懸命で可愛げがあって……僕を頼ってくれる”美乳”美少女だよ」

「自分のミスを隠蔽しようと無い知恵を絞ってクビになり、担当の家に図々しくも転がり込んだ挙句、日がな寝ている穀潰し”駄乳”女神と一緒にしてもらっては困るね」


「一部の隙もない罵倒!?」


「ま、好きなタイプ”は”冗談として……」


「わたしへの評価は本当なのっ!?」


「……ここのオファーを受けようと思うんだけど、どうかな?」


 なおも食い下がってくるユーノをスルーして、一枚の書類をテーブルの上に置く。


「”帝国戦略研究所・主任研究員”?

 ”帝国”って確か海を渡った所にあるおっきな国だよね?

 戦略研究所ってなにするの?」


「もともとは魔法やスキルの研究をしていたらしいけど、最近は”変わったユニークスキル”を活用するための研究にも力を入れているらしい」

「僕の”進化”も冒険だけじゃなくて、他の事にも生かせないかって思ってね」


「それに、なんかカッコいいし?」


「ほえ~、お給料もなかなかイイね」


「それで、王都を離れることになるけど……ユーノは大丈夫?」


「もちっ! ノインが行くところならどこにでも着いてくよっ!」


 そう言ってにぱっと笑ったユーノの笑顔に、僕は思わず見とれてしまったのだった。


「……お金も仕事もないから置いてかれたら干からびちゃうし」


 ……どうやら僕は、まだまだこのニート女神ちゃんの面倒を見る必要がありそうだ。

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