第3話 ”進化”スキルで無双する(強制)

 

 愛しい僕の女神ちゃん (皮肉)


 ”誤字”によってユニークスキルの付与をミスった挙句、修正してくれたのはいいけれど……僕をいきなりAランクモンスターの目の前に連れてきてくれました。


「いや、なんだよこの爆速展開!

 ていうか死ぬって!!」


 オオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!


 寝込みを襲われ苛立っているのか、恐ろしい咆哮を上げるグレイトドラゴン。

 洞窟全体が崩れそうなほど激しく揺れる。

 う、うあっ……ヤバイ……恐怖でちびりそうだ。


「ふふふん! ”進化”を使えばこんなモンスター、ひとひねりだからっ!

 ほらほら、わたしに向かってスキルを使って使って!」


 いくら女神ちゃんでもグレイトドラゴンに勝てるとは思えない。

 絶体絶命な状況の中、やけにドヤ顔でスキルカモンと手招きをするユーノ。


 いやいや、”進化”ってどう見ても戦闘向きのスキルじゃないだろう!?


 ヤケになった僕は、ダメもとで”進化”を発動させる。


「おっけ~、ちゃんと発動してるねノインっ!

 わたしも……ファイアアロー!」


 何を使うと思ったらそんな初級魔法をっ!?

 ああ、もうダメだ……半ばあきらめた僕の目前で、黄金色の光が炎の矢を包み……。


 バシュウッ!!


 ゴゴゴゴゴゴ……


「……へっ?」


 小さく、頼りなかった炎の矢が轟音と共に大きくなる。

 赤からオレンジ……最後は白へ。

 炎の温度がどんどん上がっている?


「よし、いっけえええええええっ!」


 キイイイイイイインンッ……


「くっ!?」


 まばゆい光が僕たちのいる洞窟の広間を包み……。


 カッッッ!!!


 光と熱の暴虐……ソイツが収まった時、巨大なグレイトドラゴンの姿はきれいさっぱり消え失せていた。


 どさっ


 焼け残った1本の牙だけが、そこにAランクモンスターがいたことを伝えている。


 こ、これは最上級爆炎魔法、フレアバーストすら上回る威力?


「そうっ! ”進化”を使えば、どんな魔法でも最強威力になるんだよ!」


「それに、グレイトドラゴンは宝石を集める習性があるから……」

「これでノインの問題は解決したかな?」


 洞窟の奥に、いくつかの宝石が転がっているのが見える。

 ルビーにサファイア……数は少ないけど、下宿代と聖剣のローンを支払うには十分だ。


「だいじょーぶみたいだね」

「じゃ、街に帰ろっか? ノインっ!」


 ぱあっ……花が咲くようにほころぶユーノの笑顔。

 僕は初めて、このポンコツ女神ちゃんを頼もしいと思ったのだった。



 ***  ***


「おい、聞いたか? 北の山に巣くっていたグレイトドラゴンが退治されたぞ!」

「やったのはノインっていう駆け出し冒険者らしいが……」


「でも、冒険者ギルドはそいつをクビにしたらしいぜ?」


「マジか!? ギルドはデカい魚を逃がしたな」


 街に戻った僕は、自分に対する評価が180度変わっていることに驚くのだった。

 あれ、これって人生大逆転じゃ?

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