知らぬ知らぬ流行りは知らぬぅ!

 高難度ダンジョン。それは難易度7以上のダンジョンのことで、全生物が簡単に死ぬことができるほど、凶悪な空間。だけども奥深く潜れ、ある程度の余裕を残し帰還することができる者がいる。そして、その中でダンジョン配信をしているものが少なからずいる。そんな彼らは全員、登録者が500万人を超える人気有名配信者なのだ。

 そんな彼らを中心に、正しくはそんな彼らの配信を中心に、とある都市伝説めいた話が世間では盛り上がっていた。

 それは、『偶に、高難度ダンジョンの下層モンスターを轢き殺す者が映る』というものだ。そいつはダッシュで現れて、一言入れてモンスターを一撃で消し飛ばす。普段化け物、怪物と言われている配信者達が霞むほどの怪物。言動とセットにすると、もはやモンスターである。


 ………正体は田中だが、本人はまだ知らない。






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 最近、あっちこっちのダンジョンに雑に突撃してる。それで気づいたんだが、背後にドローン飛ばしてるやつが多い気がする。なんじゃありゃ?偶にアイドルおるし。なんかワロけてきた。


「え?田中さん知らないんですか?」


「え、彼方知ってんの?マ?」


 彼方の部屋で昼食を食べてる時に、雑談として話す。

 あれが何か知ってるとか、はくしきー。


「マです。その背後にドローン飛ばしてる人達はダンジョン配信者、と言われるものですよ」


「え、あれ配信?おもろ」


 何がですかね。


「まったく…ダンジョンばっかり潜ってるからわからないんですよ」


 呆れた感じで彼方が言ってくる。てか呆れてる。

 こんな……わたしは収入のために頑張ってるのに!


「あ、なら田中さん知らないですよね?」


「うん。何かしらんけど」


「田中さんの知らないところで田中さん有名になってますよ」


 うぇ。なんでぃー?………いろんな配信に映り込むやつだけでネットに取り上げられるわな。そりゃそーだ。


「どーんなふーに?」


「なんでも、『モンスターよりモンスターしてる』とか」


 あひん。


「『怪物が怪物と言うまじの怪物』とか」


 あふん。


「あぁ、私が笑ってしまったのは『ワンパンで粉微塵にする近寄るダメゼッタイの変態』ですね」


 おっほい。だーれが変態ですか。彼方も思い出し笑いしない。まー良いけど。笑え笑え!


「そういえば。今朝それ関連のニュースがありましたよ」


「なんそれ、どんなニュース?」


「ランカー探索者や有名配信者さんたちが全面的に協力して、田中さんを捕まえるというニュースです。世間はかなり盛り上がってるんですよ?」


「うわぁーお、うちヤバめぢゃん」


 世間は勝手に俺で盛り上がるなー?

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