過去 ⑤-悲しい勇者の話-
私は傍観者でしかない
女神時代の魔王様はただモニタを眺め
事態を見守る事しかできなかった
大規模な戦闘から数ヶ月
小さな衝突が何度か繰り替えしつつも
均衡状態が保たれていた
そんな均衡状態を一瞬にして崩したのは
勇者の元パーティーだった
前回の大規模な戦闘で勇者と対峙する事すら
出来なかった彼らは怒りと悔しさのあまり血の涙を流した
戦争後にお互いの自国に帰り
各国の国宝級の武具の使用許可を国王に求め
その許可を得た彼らが再び戦場に戻り
すさまじい力を奮い均衡状態だった戦場を
一気に破壊したのだった
文字通りの破壊
最強の武具は最恐でもあった
使用者の命を奪う物もあった
その力は一度奮えば
山さえ平野にしてしまう
それくらいの威力であった
勇者が身を寄せる武の国は大ダメージを受けた
寝耳に水の攻撃を受けた為
多数の負傷者が出たうえに
女神の結界も破壊された
まさかの出来事であった
人の力が神の力を凌駕したのだった
砦としていた防御壁があちこち破壊され
街と城が一部無防備になってしまった
様々な急遽な対応が国の混乱を招いた
元勇者パーティーの攻撃を合図に
帝国諸国の騎士達が自軍から武の国に
向けて兵を出陣した
武の国は混乱していたが
王が一喝しすぐさま対応に応じた
まず王妃や王側近達の妻や子を
城から遠く離れた別荘に避難させる事にした
国内に安全が保たれない可能性が出てきたからだ
そして女神もまた同様に避難する事となった
その理由が勇者との間に子を宿っていたからだ
身篭った状態では大きなスキルや魔法は
体に負担をかける為、様々な危険があり
戦場から遠く離れる事となった
王妃と女神は
国民と残して自分達だけ避難する事はできないと
王や勇者に詰め寄ったが
2人の真剣な説得により渋々避難する事に同意した
様子だった、不服そうではあったが…
武の国の王と勇者が2人が乗った馬車を見送ると
すぐさま臨戦体勢をとる
側近達を集め現状の把握と指示
王が指揮を取り様々な指示を出し
適材適所、側近達を戦地に向かわせる
そして勇者も最前戦に向かい城をたつ
しばらくし帝国諸国と武の国の兵達が
衝突し戦争が開始された
前回と違い帝国諸国が圧倒し始める
しかし武の国の兵や冒険者達には
勇者が来れば
そういう思いがあった
勇者が来るまで頑張ればなんとかなる
その思いが兵や冒険者達の心を奮い立たせる
しかし勇者は現れなかった
戦地に来る事ができなかった
そして王もまた戦場に立つ事ができなかった
続く
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