過去⑥

私は傍観者だった

この時までは

女神時代の魔王様が見た

とある事件


 勇者と武の国王、家臣達の会議が終わり

勇者が前線に向かうべく城を出たすぐの事だった


妻となった女神様から


 此度の戦争に天使軍は来ていない


そう聞いていた

前回の戦争で大きな損害が出てしまった事で

立て直しが必要となったのだろう


勇者としては降りかかる火の粉

だったが実際にはただの殺し合いになってしまった


 たくさんの犠牲者を出してしまった


自分の拳を握りしめ表情が暗くなる勇者

もう誰も引き返せない

暗い闇に沈んでいく

そんな気がしていた

今回は元メンバーとの戦いになる

彼らがなぜ敵に回ったのか

勇者には理由がわからなかった

無理やり国王に命じられているのでは?

とすら思ったが

今回の奇襲が元メンバー達の攻撃だと聞いた時は

まさかと思いながらも

彼らをそうさせてしまったのはもしかして自分なのでは?

と思うようになった

どちらにせよ対峙して話せばきっとわかってくれる

そう思い戦場に向かおうとした直後の事だった

城の門を開けて…


目の前に広がる見た事のない空間に

ハッとなって後ろを振り返るが

開けたはずの扉がない


 ここは…


そう言い前を見た瞬間

4人の、天使?が目の前に立っていた


それをモニターで見た魔王様が驚愕する


 『なっ………

 か、彼らは…

 4大天使!?』


一瞬声に出てしまった

口を押さえ周囲を気にする魔王様

大丈夫そう


 4大天使なんて

 女神界は何を考えているんだ

 人間に対して大袈裟な

 4大天使が相対するなんて

 ルシフェル以来なんじゃ…


勇者と4大天使の1人ミカエルと

何か会話をしている

声は聞き取れない

時空のせいだろうか

亜空間?いやウリエルの作った結界の中なのか


しばらくして戦闘が始まった

ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエル

4人の連携攻撃からは逃げる事ができない

さすがに防戦一方の勇者

しかし致命傷は避けている

というか戦う理由を見出せないでいるように

思える

勇者からしてみればそうだろう

守るべき城も民もここにはない

彼らと戦う意味がないのだ

しかし女神界から刺客としての4大天使は

勇者の力

天使軍を押し返す力は

強大にして危険な力として認識され

そして全力を持って処理する

そう決定した

女神に属するはずの勇者が

危険因子と認定されたのは

初めての事だった


勇者としても早くこの場から

なんとかして脱出しないといけない

戦場が劣勢になってるのはわかっている

が、4大天使の力はさすがに勇者が全力で

あたっても、そうそう壊せる壁ではなかった

4人の激しい攻撃を受け

吹き飛ばされる勇者

血を流したのはいつ以来だろうと

そう考え自分の流れる血を見て

女神の元へは帰れないかもしれない

そう思うようになっていた


膝をつき息切れをしている勇者を

見下ろす4大天使達


その時だった

ガブリエルが少し下がった

片耳を押さえ何か話をしている様子に見えた

魔王様のモニターからも

少し離れて誰かと会話しているガブリエルが

認識された

そして勇者に何かが告げられた


その瞬間勇者がキレた

今までに見た事もないくらいのオーラに

包まれた

そしてその瞬間

4大天使、モニター越しの魔王様

誰の目にも止まらない速度でガブリエルが

吹っ飛んだ

殴り終わった勇者の姿があり

目に正気はなかった



続く

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