君は天使15

天使に光が集約し今にも弾けそうになっている

爆弾が爆発する一歩手前のような状況

自らを爆発させ全てを終わらせようとしている


 『バカが、自滅する気か!!!』


魔王様が叫ぶが対応する策が見当たらない


 くっそ〜

 勇者朝陽よ

 すまんが帰ってくる体がなくなりそうだ


集約した光が弾けそうになった瞬間

誰もが目を閉じ最悪の状態を覚悟した

その時だった


 ダメ!やめて!!シャティエル!!


そこにいた者全ての頭の中に声が響いた

その瞬間天使の動きがとまり


 『その声はアウリ・・・・エルなの』


魔王様達が倒れている目の前に

神々しく光りフワフワと浮く女性の姿があった

その姿は朝比奈先輩だった


 『そうよ、私よシャティ、アウリよ』


朝比奈先輩が目を閉じた状態で

意識があるようには思えないのだが

声だけが頭の中に響いてくる


 『あなた、どうして・・・・

 死んだ…はずじゃ?』


天使が朝比奈先輩の姿をした

何者かに話かける


 『そうね一度死にかけたという状況になったの

 天使長様の計らいでね

 魂だけの存在となり

 今はこの方の魂の一部分をお借りして

 異物のような存在だけど

 人の一部になり

 その苦悩を感じる事が

 私の罰という事になったの』


朝比奈先輩を模した何者かが

そう答える

魔王様を含め何の事かは分からないが

朝比奈先輩の中に別に何かがいた?という事になる


 『天使長様が?何故そんな事を…

 そんな事全く説明がなかったのに…』


動揺を隠しきれない天使が呆然としている


 『いろいろな誤解があったの

 人間界に来て魔族の気配を感じた彼を

 警戒して様子見しているうちに

 どうしても話をしてみたくなった

 天使は人との接触は禁止されていたのだけど

 彼のその人柄に触れてみたくなったの

 魔族の気配をした花屋さんって

 ちょっと興味がわくじゃない?

 毎日花に話かけてるのよ

 そりゃ気になるじゃんね、フフフ

 人に扮して彼に接触した私は

 その人柄に惹かれ好きになってしまったの

 でもそれは天界を裏切る行為になる

 それはわかっていたけど

 それでも私は彼を選んだ

 結界を張り、気配をけして

 行方不明になる事にしたの

 理解なんて得られないのは分かっていたからね

 しばらく時がたって私の捜索もなくなったかな

 って時に子供が出来たの

 もちろん初めての経験だったので

 出産に一生懸命になった為に

 結界が消えてしまったの

 その時に捜索隊とは別に人間界に

 来ていた天使が私を見つけた

 ただその天使は私が捕らえられていると

 そう報告したみたいなの

 何かの誤解なのか

 それとも嫌がらせだったのか

 そう見えてしまったのか…

 いつの間にか彼が悪者になっていて

 私はなんでそんな事になっているのか

 わからず、彼を守る為に応戦した

 その結果が逆賊扱いになってしまい

 操られているとか、子供を盾に取られているとか

 私が優秀すぎたせいかな?

 本人の意思で裏切り行為を行うとは

 思われなかったみたいなの

 彼を狙う天使軍と私が戦う事になり

 双方が引くに引けない所までいき

 天使軍の攻撃が激しくなってきた時だった

 彼と子供を守る為に私は身を犠牲したの

 そうでもしないと治りがつかない程

 状況は悪化してしまってたの

 どこかでちゃんと話ができていればよかったのだけどね

 何か一つ歯車が狂ってしまったのか

 今となっては分からないけどね

 天使長様もそこまでになっているとは知らずに

 激化した戦闘を止めに来た時に

 私はすでに息絶えた状態だった

 天使長様は魂の私から状況を把握し

 全てを理解した上で

 私に罪を償う為に罰を用意してくださり

 そしてこの出来事に終止符を打ったの

 他の天使達には私の事は秘密になっているのは

 当然よね、状況はどうであれ悪人なのだから』


完全に空気な魔王様

長話を聞くしかないのだが

朝比奈先輩が大丈夫なのか気になっていた


 『そんな…そんな…

 私は一体今まで…』


天使が崩れ落ちる


 『ごめんねシャティエル

 でもあなたが悲しむ事は何もないの

 敵討ちなんかやめて

 私を待ってて

 罪を償えばまた私としてか

 別の私かもしれないけど

 またあなたと一緒に笑えるわ』


涙をながしうなだれる天使

数年の遺恨がはれた瞬間

一気に脱力感が訪れた感じだった

のだが最後の一言に顔を上げる


 『え?またあなたに会えるのアウリエル?』


朝比奈先輩の姿をした天使がにこりと笑う


『人の生を苦行とし

 その間に力を溜め

 エネルギーが貯まったらね

 今少し使ってしまったけど

 そう長くないと思う

 いつも自由に出てこれる訳じゃなくて

 今回はあなたの力と怒りに呼び起こされた

 そんな感じね

 あなたはいつも真っ直ぐすぎるのよ

 激おこーって感じで起こされたわよ、フフ』


うなだれたシャティエルと名乗る天使が

少し苦笑いをする


 『あ〜ちょっといいかな?

 そのぉ朝比奈先輩は元気ですか?』


魔王様が2人の会話なんて興味がないよ

って感じで割って入る


 『あ、ごめんなさないね

 すぐこの方にお返しします

 異世界の魔王様』


そう言った後その後ろのイアンと優美に

顔を向ける


 『あなた久しぶりね

 優美も大きなって………』


アウリエルが少し涙ぐむ


 『あぁアウリエルなのか

 ほんとに、アウリエルなんだね』


イアンが懐かしさのあまり声が震える


 『そうよ私よ、あなた

 今はこの方の一部分の異物のような

 存在だけど、そのうちね 

 あなが死んでからかも知れないけど フフフ

 あ、そうそうこの方に私を見出すのはダメですよ

 それはただの浮気ですからね

 この方は私ではないのだけは理解してくださいね 


 優美、元気に育ってくれて本当に嬉しいわ

 あなたは今自分が何もなのか?

 ってなっているだろうけど

 心配しないで、あなたは人間です

 あなたの中にある天使の力は生まれた時に

 全て取り除いています

 アニメのように都合のいい話だけど

 だいたいそういう物なのよウフフ』


キョトンとしていた優美だったが

母の笑い声を初めて聞いて

安心が生まれ一緒に笑えた


続く 

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