悪意の無い悪⑥

 場所は魔女の経営するカフェの上の階にある事務所


マウが張り込みして盗撮し続けた容疑者須磨の動画を

魔王様と魔女とマウ、そして知らない人がパソコンで

須磨の挙動を見ている


 『ここですね〜』


とパソコンを触っている知らない子が画面を指差しながら

説明を開始する


 『ってか誰?』


魔王様が今更のごとくに驚いたように言う


 『私の部下だよ、こういうのに詳しい子』


と魔女が紹介し、パソコンの前に座る子を紹介する

彼女がペコっと会釈し、説明を続ける


 『人?』


と魔王様が彼女を見た後に魔女を見て言った

 

 『ひとだ』


と魔女が返す

パソコンの前の少女には会話の意味が

よくわからないのでキョトンとしている


 『ここでUSBに落としてますね

 大まかな説明になりますけど

 セキュリティー突破してここのデータを

 盗んで、更にいたずらに書き換えて保存、

 バックアップも、復旧データも書き換えた物に

 変えてます

 そこまでする意味がないような事もしてるので

 犯行をあえてわかりやすくしてますね

 隠すではなく、わざわざ犯行の足跡を残してるんですよね

 嘲笑うかのように』


その説明を聞き魔女がうなづきながら


 『前回、私の知り合いの会社で事を起こした時は

 わざわざ気がつかせるような事までしなかったのに

 自分の所業が気がつかれないのが嫌なんだろう

 自己顕示欲というか、ただの自慢したい子供なんだろうけど』


二人の話を聞きながら魔王様は


 『なるほど……』


と当たり障りのない返答をしたが

実際まったく理解していない

一応雰囲気だけ出しておこうと思っただけだった


その3人の会話を聞いたマウが


 『うん……』


と深く頷いたがこちらも全く理解していないが

意味深に頷いておけば大丈夫だと思っただけだった


 『とりあえず犯人確定って事なんだよな?

 ぞれじゃ乗り込む?』


魔王様の言葉と共に準備を始める魔女


 『タブレットに動画入れといて!

 車の準備よろしく。

 マウ、モウとラトワネ呼んで〜

 モウも連れていくわ』


パソコン少女がタブレットの準備をしている

マウがラトワネとモウを呼びに行く

魔王様はテーブルの上のお菓子を食べている

周りはバタバタしているが魔王様は特にする事もないので

くつろぎながら待っている

そうこうしているとマウが、ラトワネとモウがやってきた


 『失礼しまーす』


とお辞儀をしてラトワネが入ってきた

くつろいでいる魔王様がヨッって感じで手を上げる

その姿をみてラトワネがちょっと驚き


 『あれ?魔王様こんな時間にどうしたんですか?』


 『ん〜ちょっと野暮用かな?』


と魔王様がモグモグしながら答えると

魔女がラトワネに


 『あ〜ラトワネ、私これからちょっと出かけるから

 お店の事とか頼んどくよ、マウとモウ連れていくから』


 『え?あっはぁい、いってらっしゃいませ』


なんとなく事情を察したラトワネが魔女と魔王様に

ペコっと頭を下げ、二人が出ていくのを見送る

店の外に車が待っていた

ミニバンタイプの車に乗る4人

魔女の横に魔王様が座る

よくある事だ、みたいな感じの魔女を見ながら

魔王様はふと思った疑問をぶつけた


 『いつもこんな事してるのか?』


魔王様がいつもと言ったのは慣れた感じだと思ったからだ


 『いつもって、あははは

 治安維持って訳じゃないけどね

 この街の裏側を平定してるって感じかな

 ここはとてもいい所なんだよ

 人も街もね

 私が住んでる所をバカに好き勝手にされたくない

 だけだよ』


魔女の言葉を聞いて


 異世界でそんな場所を見つける事が出来たのは

 幸せな事なんだろうな〜

 まぁそこに至るまでも苦労はあったんだろうけど。

 今まで異世界へ転生されらせた勇者は

 なんの縁(えん)も縁(ゆかり)もない世界の

 魔王討伐なんて言われて、旅に出て

 0から交友関係構築して

 命かけろって

 無茶振りもいいとこだな〜

 チートあろうがなかろうが

 痛い思いしてまで救いたい誰かに出会えなければ

 逃げ出しもておかしないよな

 なのに頑張って戦ってるんだよね〜

 よほどの変人なのか、人間ってそんなもんなのか

 謎だわ


そう思いながら流れる景色を眺めていた


続きます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る