魔界カフェ?②

ここか……


魔界をコンセプトにしたカフェ。よくあるメイド喫茶のような感じに見えるが

明らかに魔王様がいた居城に雰囲気が似ている。


 『一体、なんなんだ、これは。外壁、門扉、私のお城?だよね?』


 縮小版の自分のお城に似ている建物を前にゴクリと唾を飲む魔王様。


 『とりあえず入ってみよう』


そう呟き、扉を開けると床は石畳、壁は洞窟のような場所を少し歩いていると

ふと目についたぬいぐるみ。


 『これ、クマイムだろ』


クマイムというのは、勇者が魔王城まで攻め込んでくる間

暇を持て余した魔王様が可愛らしいクマのぬいぐるみにスライムを

入れて動くぬいぐるみを作って雑用係として身の回りの世話を

させていた、クマ+スライムでクマイム、そう呼んでいた。


更に扉を開けると、たくさんの悪魔風コスプレをした女の子達が


 『よく来たな!人間』


と満面の笑みで歓迎された。


 『一応歓迎されるんだな、客だから当たり前か。しかし露出度高すぎだろ……』


そんな水着みたいな奴見た事ねーわとボソッと呟き

店内をキョロキョロしていると、席に案内された。


 カフェの店内や悪魔風コスプレ集団を見つつ戸惑いを隠せない魔王様。

落ち着きなさすぎて挙動不審な人に見える。

メニューを見ていると、やたらと黒や青の色合いが強い食べ物が多い。

ここら辺は創意工夫された魔界風といった感じだった。


 『流石に食材まで魔界の物ってわけはないよね』

 

魔界のご飯はくっそまずいのでちょっと安心した魔王様。

コスプレ魔族が注文を聞きにきた。流石に何も頼まない訳にはいかず

慌ててメニューを見て


 『えっと、このマンドゴラ入りミックスジュースと血の池地獄のパンケーキを』


 流石にマンドゴラは入ってないよね、血の池地獄って魔界と関係なくね?


そんな事を思いつつも魔王様は混乱したままだった。店内の様子は明らかに

この世界の人間に合わせられているが店名や雰囲気は魔界を知るものによって

手掛けたと思われる様子。

周りを見回していると注文したものが運ばれてきた


 普通にうまいやん。

 マンドゴラの枝っぽい装飾がされたストローがついてるミックスジュースと

 イチゴソースのパンケーキか。

 何か無駄にクオリティが高いな。


甘い物には目がないので完食。

食べ終わり、ウーンとしかめっ面で腕組みして顔を傾け考える魔王様。


 『美味しかったですか〜?お皿お下げしてもいいかな?』


と声を掛けられたので慌てて


 『あっはいっ。どもゴチソー様で……。って、お、お前……』


と店員を見て驚く魔王様。

店員の悪魔風コスプレをした女の子が不思議そうに


 『え?私ですか?私わぁ〜』

 『この魔界カフェ、エルドギナのサキュバスちゃん達のまとめ役、

 ラトワネちゃんでーす!!』


と片足あげたポージングの満面の笑みで自己紹介された。

少し半笑いで俯きながら魔王様が


 『サキュバスリーダー?いやいや貴様にはアンデットモンスターの統率を 

 任せていたはずだが?』


と魔王様が問いかけると、コスプレ風の悪魔っ娘が


 『え?』


顔は笑っているが理解が追いついていないような感じの所へ更に


 『騎士団はどうした?大敗を喫したと聞いていたが?』


 と魔王様が悪魔っ娘の目を見て問いかけた。


 『あんた何もんだ』


悪魔っ娘から笑顔が消え戸惑いが見られる。


 『わからないか?まぁ分からないよな。こんな体だし』


魔王様も混乱はしていたが、まずは自分を認識させなければならないと思い


 『これでどうだ?』


出来る限りの威嚇スキルを使用した。制限されているとはいえ

魔王様を知る者に取ってはその威厳は伝わり、おそらく朝陽の体の背後には

スタンドのごとく魔王様の背後霊が悪魔っ娘を見下ろし威嚇している姿が目に映っているはず。


 『も、も、もももももしかして魔王様〜〜〜〜〜〜〜!!!!????』


驚きのあまり大声になり、周囲の視線を浴びてしまう。

 

 『こら、声がでかいよ。そう、そうだ私だよ』


少しトーンを落とし落ちつけと悪魔っ娘のラトワネを魔王様の前の席に座らせる。


 『ど、どうしたんですか?そのお姿?どう見ても

 男?ですよね?なぜここに?』


と驚愕するラトワネに魔王様が


 『いや、お前こそどうしてここに?お前には王国騎士団の殲滅に

 アンデットモンスター軍を率いて向かわせたはずだったが

 その戦闘後に行方不明であった為、やられてしまった

 と報告を受けていたのだが』


お互いの頭の中が?状態だった。


 『そうですね、まずは私の方から説明しましょうか』


とラトワネが話始める。


 『私達は魔王様の命を受けアンデット軍を率いて王国騎士団の

 殲滅に向かいました。

 森を抜け王国騎士団が現れる前に少し高台にて待機し、

 卑怯な待ち伏せをし油断している所にいきなり戦闘を仕掛けて

 全滅させる予定でした。が、私たちが先回りしたと思ったら逆に

 待ち伏せに会いました。

 しかも、王国騎士団が相手のはずが、目の前にいたのは騎士団ではなく

 教会の僧侶、聖職者達だったのです。いきなり浄化の魔法が飛び交い

 私達のアンデット軍はなす術もなく大敗を喫しました。

 明らかに情報が漏れている?とそう思いましたよ。アンデット軍の壊滅と同時に

 騎士団が攻めてきて、私達の軍の生き残りは散り散りになり

 私と部下のモウとマウの双子と数名の部下が一緒に逃げていたんです。

 必死で逃げていた時に、とある洞窟が目に付きました。

 その前に黒いフードをかぶった奴が手を振って、こちらへ!早く!!って

 いう言葉を勝手に仲間だと思い込み信用して洞窟の中に入ったんです。

 入る瞬間黒フードを被った奴をチラッと見たのですが

 誰だかわかりませんでした。

 喋る事が出来る奴はそんな多く出陣してなかったはずなんですが。

 洞窟に入った瞬間、魔法陣のような物を踏んだんだと思うんですが

 私達は一瞬光に包まれたかと思って次に目を開けたらこの世界で

 真夜中の路地裏のような場所でした。 

 もうわけがわからずパニックになってる所に酔っぱらった数名の人間に

 絡まれたんです。

 なんのコスプレなの〜?みたいな感じで触ってきたので魔法でと思ったら

 発動しなくて更に焦った私は殴り飛ばしました。

 そいつが数メートル先に飛んで行った後、モウとマウが

 周りを蹴り飛ばしていると、他は逃げていなくなりました。

 呆然としていた時、背後から足音がして話しかけられたんです』


続きます

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