人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる

門前払 勝無

第1話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」


 私は広告代理店の営業職をしている。広告代理店と言っても風俗店のチケット制作や雑誌の枠埋めの営業である。取引のある風俗店やキャバクラに出向いて今月は何処の枠にするか新人さんの宣伝広告は出すのかなどである。


 昼の歓楽街は人通りも少なくてネズミや野良猫、カラスの方が人よりも多い。

 私はスーツを着てそこを歩いている。サンドイッチマンのおじさんとも顔なじみである。


 チケット屋さんに立ち寄り店員さんに私の担当したお店の評判を聞いた。

「鏡さんの担当してるお店のチケットはよく無くなるから評判いいですよ」

「ありがとうございます」

私は当然だよと思いながら謙虚な微笑みを返した。


 私はチケット屋から出て一件のマンションへ入った。201号室、担当しているマンションヘルスの受付である。

 中に入ると店長の八代がマリファナを吸いながら掃除している。

「おぉ鏡ちゃん!おつかれぇ」

「どうもです。店長また吸ってるんですか?」

「鏡ちゃんも吸う?」

「いらないです」

「真面目だねぇ」

「普通は吸わないですよ」

「それよりさぁ!新人はいったからグラビア枠に入れてよ」

「可愛いんですか?」

「可愛いよ。バカ女だけどねぇ」

八代は笑っている。

 この世界は女は商品であり見た目や雰囲気で価値が決まる。見た目の良い女は露出を多くしてお客を多く獲得していく。見た目が悪くても内面で売り込んでいく。その品定めを上手くするかでお店が儲かるかが決まるのである。


 女は商品であるー。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る