第24話 ファーストコンタクト
ラブレターの内容はシンプルなものだ。
『お話しがあります。昼休みに屋上に来てください』
俺とカスミのミックスフュージョンで綴った文章だ。これで俺たちの本気度がわかるだろう。
そんな昼休みのことだ。
「ね、ねぇレンレン」
「んぁ?」
「まじだったんだね」
「俺はいつでも大マジだ」
「だね」
「カスミは優しいよな」
「さすがすぎて乗らないわけにはいかないじゃん」
「ふっ。そういうところだぜ。マイパートナー」
そんなことを言い合っていると、ガチャと、屋上の塔屋のドアが開いた。
俺たちは緊張で息を飲む。第一声は俺から──。
「なにごと!?」
取られてしまった。南志見拓磨にセリフを取られてしまった。
俺たちのファーストコンタクト、第一声は「なにごと!?」から始まった。
「来たな南志見拓磨!」
「ようやくだね!」
俺たちのセリフに「いやいやいやいや!」と手を思いっきり振って首を横に振る。
「入らない! 色々な情報が入らない!」
「ふっ。なら教えてやろう! カスミ!」
「ガッテンだよ! あのラブレターは──ブラフ!」
俺たちの言葉になお焦っている南志見拓磨。
「このラブレター明らかにいたずらってわかるけど!? てか、そもそも読めないけど!? てかラブレターとかブラフとかもう知らん! どうでも良い! 今の状況だけ教えてくれ!」
「そうさな……。南志見拓磨! お前は勘違いをしている」
「勘違いであって欲しいわ! 屋上に来たらサボテンで待機してる男女がいるのは勘違いであって欲しいわっ!」
「あ、そっち?」
「他になにがあんだよ!?」
南志見拓磨が焦っているのでカスミが、ピョンと降りる。
「ほらー。やっぱりこんな空気になるじゃん」
「普通ならここで『俺も加わればスーパーデルタいけんじゃん』ってなるはずだけどな」
「あー。スーパーデルタね。小学校の時にやったね。うん。まぁ、南志見くんならそのノリで来て欲しかったかな」
「なんなんだよ!? スーパーデルタってなに!? てか、あんたら俺のなにを知ってるの!? 俺のノリってなに!? 初対面だよね!?」
俺とカスミは顔を見合わせて「はぁ」とため息を吐いた。
「さっきからツッコミがしつこいな」
「南志見くん。ツッコミって言うのは端的にわかりやすくしないと」
「なんであんたらにツッコミのダメ出しされにゃならんのだ!?」
「この時代を生き抜くためには話術だぜ?」
「だね」
「なんなの!? この人たちなんなの!?」
南志見の頭がイカれてしまいそうなので本題に入る。
「南志見拓磨。俺たちの関係をどう見える?」
「マジトーンでなにを聞いてくるかと思えば……」
肩を落としてため息混じりで言ってくる。
「そんな惚気を聞かされるために俺はこんなところに呼ばれたのか? 勘弁しろよ。意味がわからん」
「なにに見える?」
南志見が答えてくれなかったので、改めてマジな顔をして聞いてみる。
いきなりのマジな空気が南志見にも伝わったみたいで答えてくれた。
「そりゃ、どっからどう見てもバカップルだろ」
「だよな。でも、俺は他の女の子と付き合ってるって噂を立てられているらしい」
俺の言葉に眉毛を、ピクッとさせる。
「──んだよ?」
「ん?」
「なんなんだよって言ってんだよ!」
いきなりの怒鳴り声にカスミが、ビクッとなる。
すぐにでも抱きついてあげたいけど、マジな空気なため行動ができない。
「なに? 自分はモテるってことを言いにきたのか? 喋ったこともない俺に? 意味わかんねーんだよ!」
明らかに苛立ちを見せる南志見。逆の立場なら暴れてるから、南志見は大人だと思う。
「確かに。うん。意味はわからんよな。でも、そうだけ──」
「俺にモテるアピールしてなにがしたいんだよ!? なあ!? マジで意味わかんねーよ! くそがっ!」
叫びながら「あああ!」と苛立ちを隠しきれずにドアを乱暴に閉めて、バァンという音が屋上にこだました。
「──カスミ? 大丈夫?」
ちょっと震えているカスミに声をかけると、コクコクと頷いてくれる。
「ごめん。こうなるとは予想外だった」
「サボテンがダメだったのかな……」
「スーパーデルタを知らないから怒ったのかもな」
適当なことを言ってスマホを取り出す。
「昼休みも終わりだし、放課後、いつものところ来れる?」
「う、うん」
俺はカスミの背中を軽くたたく。
「ごめん。怖かったな」
「大丈夫。レンレンがいたから」
「そりゃ嬉しい言葉だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます