第36話⁂白日の下に⁈⁂
幾ら不注意で小百合ちゃんの右耳が聞こえなくなったからと言っても、小百合ちゃんがあんまりだったから致し方なかったのだが。
社長の怒りは増すばかり。
そして異例の降格人事となった中元なのだが……
しかし、この待遇に納得のいかなかったプライドの高い貴美子主導で、初美の過去を、ありとあらゆる手段を使って調べ上げた。
そこで初美の父親柳田勇をよく知るレストラン、クラブ、バ―経営のA氏に辿り着いたのだが、既に不慮の事故によるものなのか、それとも事件に巻き込まれたのか、10年以上も前に亡くなっていた。
だが……その日会っていた女性こそ、初美と母親和子であると確信した貴美子なのだ。
早速取るものも取り敢えず、邸宅のある鎌倉の初美の元に向かった。
「初美さんあなた達親子はとんでもない人達ね?…あの日、1954年5月Ⅹ日、井上幸子だと偽ってA氏と会っていたのは、あなたのお母様でしょう?‥剛とあなたの結婚式の写真の端っこにヒッソリ写っていた、あなたのお母様の写真を中元が覚えていたのよ……結局小百合という娘が居ながら私を捨てて、あなたと結婚したものだから、只の入籍と内輪だけの食事会だけの簡素なものだったらしいけど……?それでも…いくら何でも社長の奥様を隠し立てしちゃ~ダメでしょう……?社報に写真と一緒にしっかり記載されていたのよ……そこにヒッソリと端っこにあなたのお母さまが写っていたのよ、何故花嫁の両親が、こんな端っこの目立たない所に写っているのか疑問に思った人も少なくないと思うわよ?……まあ~?集合写真のような写真だから当然なのかも知れないけどね?……その写真を、あの当時を知る人達にしらみつぶしに見せて歩いたのよ、そこで車マニアの男性がしっかりあなたのお母様を覚えていたのよ…フフフフ白状しなさいよ!あの時A氏と会っていたのはあなたのお母様でしょう?……そして若いパンパン風の女性は、初美さんあなただったのでしょう?……あなた達がA氏の死の真相を知っているのでしょう。あの不可解な事故は、事件の可能性も捨てきれないって話なのよね?………ひょっとして、あなた達が殺害したって事も考えられるわよね?」
「……な~んて不謹慎な事を言うの~?……とんでもない話ね!……それから井上幸子の成り済ましが、私の母だと言う証拠がどこに有るっていうの~?そんな端っこに写っている写真なんかハッキリしないわよ?……その日は母は肝硬変で長期の入院をしていたのよ!〷病院に問いただして頂戴!……それから若いパンパン風の女性が私だと言う証拠有る?‥それを持って来なさいよ!フン!」
貴美子は、初美に出鼻をくじかれ悔しさで一杯。
「折角初美親子に辿り着いたのに~?」
1954年当時は白黒写真が主流だったから、集合写真の端っこに写っていたとしても、もう12年も前の事だから風貌も病気が影響して変って来ていて、例え今現在の写真と照らし合わせても疑問が残るのだ。
だが……思わぬ所から剛と初美の間に溝が出来た。
それは小百合が最近の殺気立った両親の異変に気付いて、これはただ事ではないと思いコッソリ両親の話を盗み聞きしていたのだ。
中元と貴美子が話している話を、片耳の不自由な小百合では二階の部屋からは、聞き取る事が出来ない。
それでこそっり、リビングルームのドアの前で聞いてしまったのだ。
あれだけ大きな声でまくし立てていれば、例え片耳でも十分に聞こえる。
{今まではあんなに仲の良かった夫婦に一体何が有ったのか?}
小百合は最近、異常に殺気立っている夫婦の異変に気付き、夫婦の行動に目を光らせていた。
すると{私の耳が片耳聞こえなくなった事が原因で、私を殴った中元を恨んだパパが降格人事を言い渡した。又そればかりか、私の親権も奪われそうだ。それを不当に思い夫婦が恨んで、この不当な条件と降格人事を撤回させるべく、井上幸子とその娘に成り済まして、顧客の1人A氏の殺害に関与しているかも知れない、あの胡散臭い噓で塗り固められた初美おばさん親子の過去を、暴き出してやろうと必死になって居る}という事が分かった。
そんな荒れ果てた家族の状況を、夏休みに横浜のパパの元に長期休暇で行った小百合が、暇に任せて話してしまったのだ。
{エエエエエエ―――ッ!初美が我が社の上顧客A氏の不審死に関与しているだと――――――――ッ⁉それは聞き捨てならぬ……!それから初美は柳田酒造のお嬢様と思って疑わなかったが?本当はお嬢様などいなかっただと~?まさか~?それでも……初美が犯罪に関っていたとなればまた別だ……!これは徹底的に調べなくては……?それでも……大空襲であの当時の事を知る人物などいないだろう?}
心配になった剛は早速初美に問いただした。
「お前12年前に不慮の事故で亡くなったA氏の事で何か知っている事はあるか?」
「私は全く知らないわ?あなた変な事おっしゃらないで~!」
「けれどもA氏と最後に会っていたのは、絶対にお前のお母さんに違いないとカ―マニアの男が言っていたそうだ。今現在の写真も見せたが間違いないと言うんだよ!」
「…………」
「それから柳田さんには娘さんなんかいなかったと言っているんだよ?可笑しいじゃないか?」
「あなたあんまりよ!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭そんなに私を疑うなんて酷い!酷過ぎよ!」
そんな、いさかいのさ中に唯一のA氏の親戚を探し当てる事に、成功した中元と貴美子。
2人にして見ればどんな事をしても怪しい初美を追い詰めて、インチキ女初美を追い出して優位の立場に立ち、万里子お嬢様を引きずり降ろして、可愛い我が娘小百合を第一継承者にしたいばかり。
これで全て白日の下に⁉
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