シェアハウスは桃色生活

東雲まいか

第1話 新生活始まる①

 さあここだ!


 住所とスマホを頼りに駅から歩くこと二十分。築三十年と表示されていたようにだいぶ年期が経っている。木造の古い家はそれなりに趣があり、渋い色を醸し出しレトロな雰囲気すら感じられる。


 住み心地がいいといいけどな。


 だいぶ遅くなってしまった。時計の針は七時をまわり、辺りは暗くなっている。今日からいよいよ念願の一人暮らしだ。


 僕の部屋は2階の206号室。6部屋あるらしいから一番端の部屋なのだろう。窓を見上げると……カーテン越しに人影が動いている。


どんな人が住んでいるんだろう。


 真っ暗な通りから見上げると、どうやら女性のようなシルエット。ごくりとつばを飲み込む。


 えっ、カーテンに隙間があるぞ。その隙間から……見える! 女の人の体が!


 胸から下はバスタオルを巻いているが、おもむろにバサッとそれを開いたっ。すると、当然のことながら、裸が見えてしまうっ! うっ、裸体が、女の裸体がっ、


 み・え・た~~~っ!!!


 うお~~っ、ものすごいバスト、こういうのを巨乳というのか!


 その下へ滑らかに続くウエストのくびれ、そしてその下の茂みまでがっ、


 丸見えだ~~~っ! 


 いいのか初日から!


 僕は体を固くしてじっと目を凝らす。二階のその部屋からは、こちらの様子は暗くてほとんど見えないのだろう。安心しきって裸を披露している。こちらは見つからないように体をできるだけ低くして、視線を下げる。だが見える! カーテンが完全に閉まってないんだから仕方ない。無防備なそっちが悪いんだ! と相手のせいにする。


 だって覗きをするために、こうして立っていたわけじゃない。たまたま通りかかったところに裸の体があったんだ、僕は悪くない、自分のせいじゃないっ、と自分を納得させる。


 その女性は鼻歌をうたいながら裸体を晒している。これから着替えるところか。まだ全くこちらに気づく気配はない。わずか十センチほどの隙間だが、中が明るいので丸見えだ!


 そのまま見ていたい。足が全く動かない。


 ふっくらした二の腕も見える。両手でチューブ入りの物体を持ち掌にひねり出す。それを丁寧に胸につけ刷り込むようにつけている。ゆらゆら揺れる胸がカーテン越しに見える。


 胸をひととおり撫で終わると、お腹へ手が移動し丁寧にさする。そして太ももへ移動する。ボディクリームというやつだろう。女子が話しているのを聞いたことがある。これでボディーはすべすべになったはずだ。


 胸をゆらゆらと揺らしながらブラジャーを取る。なんと、真っ赤なブラジャーだ!


 二つのふくらみをカップの中へ押し込んでいく。グイっと持ち上げながら、胸を収めると両手を後ろに回す。ホックを止めている。それが終わると、かがんで小さなパンティーを履く。わっ、履く瞬間に茂みが丸見えになってしまった。三角形に生えた茂みを見るのは初めてだった。


 そして、小さな三角形の布切れが下腹部を隠した。あんな小さなものを履く意味があるのだろうか。ほとんどお腹の下の部分しか覆っていないではないか。


 ところがこれだけでは終わらなかった。ぐるりと一回転してから今度は脱ぎ始めた。次に手に取ったのは、黒いブラジャー。レースでスケスケのそれを胸にあてがいホックをはめる。そして同じく黒いパンティー。いったい何の仕事をしている人なんだ!


 そして、また一回転してから納得がいったのか、パジャマを着た。これで着替えは完成だった。


 ふうっ、驚いた。こんなシーンで歓迎されるとは。


 見つからないように気を付けたので顔は見えなかったがどんな人なのだろう。顔を見ても平静でいられるだろうか心配になったが、ここの住人なのだから仲良くしないとな。当然のことながら、見てしまったことは自分だけの秘密だ。

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