第30話 おまけ

 僕の名前はルドルフ・ギャロット伯爵令息だ。今、現在両親と砂漠のオアシス都市ザイルで観光中。


 両親はとても仲がいい。今も手を恋人繋ぎで息子そっちのけでイチャイチャしている。僕はまだ10才なんだが、下に妹と弟がいて、彼らは領地にいる祖父母が面倒を看ている。僕は後学の為、一緒に付いてきたのは間違いだったと後悔している最中。

  

 はあ~、やっぱり一緒にくるんじゃなかった。絶対僕の存在を忘れている。家で散々いちゃついているんだから、外国でくらいシャキッとしてよ父上は。


 あれで本当に国一番の剣士だったのかな?今の姿からは想像ができない。


 母上はとても美しく優しい人だ。でも父上は僕から見ても頼りない。こんなのでよく貴族でいられるなあと感心してしまうほどだ。


 王都でも領地でも常に母上を膝の上に乗せて、書類に目を通している。その上子供の僕らと張り合って母上の取り合いだ。


 本気でやるから大人げない。でも僕らの事も可愛がってくれるから、まあいいけどね。


 父上が優秀だと王子殿下は言うけれど、僕にはそんな風には思えない。アイゼン・ペドラー侯爵もといアイゼン叔父さんと呼ばないと怒られるんだった。叔父さんは侯爵家に婿入りして、ルガールを撃退した。その功績で彼自身に爵位を許された。将来、叔父さんの次男エイダンが子爵家を継ぐ予定。エイダンは僕より一つ下で彼の兄ルイスは僕と同い年。昔から叔父さんと何かと張り合っていたらしいけど、子供の生まれる時まで張り合うなんて二人とも子供みたい。


 結局僕が少し早く生まれて「やったー、勝ったぞー」と叫んだ父は、ローランド叔父さんの奥さんに頭を扇子で殴られたらしい。本当、馬鹿だよね。それを聞いた母上が部屋に入れなかったら、部屋の前で膝を抱えて蹲っていたって聞いて呆れた。


 僕からしたら、そんなくだらない事していないでちゃんと母上を激励すれば良かったのに、アイゼン叔父さんも叔母さんに父上と同じ目に遭わされて、二人で部屋の前で蹲っていたらしい。病院の廊下に大の大人が二人。なんてはた迷惑な人達なんだろう。


 僕は父上のような事はしないし、ならない。と考え事をしていたら


 ドンッ


 「おい、坊主どこみて歩いているんだ」


 「す…すみません」


 大変だ!凄く柄が悪そうな人たちだ。どうしよう。怖い。助けて父上──っ


 殴られそうになった途端、バシッという音と共に絡んできた3人組の男が次々と倒されていく。最後は絡んできた男の喉元に剣を突き立てている父上の姿があった。


 かっこいい。王子殿下が言っていたことは本当だったんだ。


 僕は生まれて初めて父上を尊敬した。こんなかっこいい父上と優しくて綺麗な母上を持っている僕はきっと世界一幸せ者だと思った。


 父上、サイコ―


 僕の中で父上の評価が上がった瞬間だった。でもその後、母上に叱られて項垂れている父上にちょっとだけがっかりした事は内緒だ。

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旦那様は元お飾り妻を溺愛したい! 春野オカリナ @tubakihime

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