第14話 守りたい

 アレクセイとコーネリアは悶々とした一夜を明かした。朝食時も二人は別々の部屋に案内され、昨夜の余韻を楽しむ余裕もなかった。


 二人とも表向きは納得するしかなかった。内心ではもっと一緒にいたいのだが、アレクセイの事情がそうできない。


 物足りないもどかしさを感じながら、コーネリアは実家のオルフェ家に帰った。同じ馬車には乗れないアレクセイは、護衛の私兵らに混ざってコーネリアに付き添った。


 馬車は、街道を抜け、オルフェ侯爵の屋敷前の林道を抜けようとした時、両脇から見慣れぬ風体の男達が現れて、馬車の進路を止めた。


 「中にいる御嬢さんに用があるんだ。死にたくなかったら大人しくしろ」


 アレクセイは人数を確認し、兵士達に指示を出した。彼らはオルフェ侯爵の私兵に混ざったアレクセイの先鋭兵士、元々騎士崩れの彼らを雇うきっかけは、騎士として有名になり始めた頃から、勝負を挑まれる事が多くなり、アレクセイは元来の性格で、いちいち彼らの身の上話を聞いては身の振り方に尽力するお人よし。


 そんなアレクセイを慕って、アレクセイの護衛を願い出た結果、ほぼ私兵と言っての数になった。生活が安定してきても彼らはアレクセイから離れずこうして守って来たのだ。


 アレクセイは、コーネリアを馬車から出し、自分の馬に乗せ、侯爵邸を目指した。侯爵邸はすぐ近く、馬で2~3㎞の所にある。できるだけ生け捕りにするように指示をだし、コーネリアを一刻も早く安全な場所に連れて行くことを優先しての判断だ。


 彼らなら大丈夫。きっと無事に任務を果たしてくれる。


 そう信じて、馬を走らせ侯爵邸に急いだ。


 「アレクセイ様、お顔の色が…大丈夫ですか?」


 心配そうにコーネリアが尋ねるが


 「大丈夫だ!しっかりつかまっていろ。飛ばすぞ!!」


 アレクセイは激痛に耐えながら、コーネリアを横抱きにして、無我夢中で馬を走らせた。


 「お、お嬢様。一体どうなさたので?」


 侯爵邸に付くと門番が何事かと聞いてくる。今にも意識が飛びそうなアレクセイを見て


 「早く門を開けて、お父様達を呼びなさい!」


 コーネリアは門番達に指示を促しながら、アレクセイの汗をハンカチで拭っていた。


 そのまま、屋敷のエントランスホールにたどり着き、駆け付けた侯爵にコーネリアを託すとアレクセイは痛みでその場に崩れ落ちていった。


 そのまま、客室に寝かされるアレクセイ。彼が気を失っている間に、襲撃犯を捕らえた兵士達が侯爵邸に帰ってきた。


 その日、夕刻までアレクセイは意識を失ったままで、コーネリアは目覚めるまで傍に付いていた。どうやら意識がない時は呪いは発動しないようで、コーネリアはホッとしていた。


 「良かった。眠っている間は呪いの痛みは感じないのね」


 コーネリアも疲れていたのか、そのままアレクセイの寝台に突っ伏して眠ってしまったのだ。


 この後、アレクセイの股間の災難が続く事になるとは知らずに、安堵の色を見せながら二人はお互いの手を握っていた。


 ───決して離さないという様に……

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