第27話 ダンジョンの異常2
ここかな?
ガチャリとドアを開けるとそこにいたバランスの取れた体つき、太い二の腕、美しく鍛え上げられた背筋に形のいい引き締まったお尻が振り返る。
「なぜお前がここにいる?大胆なのぞきか?」
「は?」
一瞬…いや…割とジックリと見てしまい慌ててドアを閉めた。
本日三回目のなぜ私。イヤイヤ、なぜライアン、だったよね。声がそうだった。顔よりもお尻とそれが振り返った…あぁ~~ダメダメ思い出しちゃ駄目。
私が廊下であたふたとしているとドアが開き中からライアンが顔を出した。
「うわぁ!待って出てこないで!」
顔をそむけながらもチラッと見ると上半身は裸だが腰にはタオルを巻いていた。
はぁ…
「なんだその格好は?まさかまたダンジョンに潜ったのか?」
顔はモジャヒゲの男だが厚い胸板を直視出来ず視線をそらしながらコックリ頷く。
「モーガン様と行ったの。マルコさんに言われて、結構大変だったよ。」
あぁもう、そんな見事な腹筋で近寄らないでよ、目がいっちゃうから。
「悪いんだけど、早くシャワー浴びたいの。」
「あぁ、そうだな。…手をから血が出てるぞ。」
どうしても素手での攻撃に怪我はつきものだ。ライアンはシャワールームに引き返しすぐにポーションを持って来た。
「ちょうどオレが使ったのが残ってる。」
そう言って私の手を取りそれをかけてくれた。
「ありがとう。まだどこか怪我してたの?」
「まぁ、軽くな。ユキはグローブをした方がいいな。」
「そうねぇ、服装も考えないと蹴ると破れる。」
どうしても直接魔物に当たる脛の部分が駄目になる。汚れは洗えばいいけど破れるのは困る。
「いいぞ、シャワー浴びろ。」
怪我が治ったのを確認するとライアンは再びシャワールームに入って行った。
「ちょっと、早く出てよ。」
浴びろと言いながら自分もそこにいちゃ駄目でしょ。
「出るに決まってるだろ。…オレは見られたがな。」
あぅっ、確かに。でも私の体はあんなに凄くない。
ライアンはそう言ってシャワールームの中にあるもう一つのドアを開けた。
は?
「何それ?」
シャワールームには合計三つのドアがあり二つはそれぞれ直接部屋へと繋がっているようだった。彼はそのまま自分の部屋へと帰って行ったようだ。
っていうかここに住んでたの!?鍵は?あるね、良かった。
慌ててライアン側の鍵を締め反対の誰かの部屋へ繋がっているであろうドアと廊下側の鍵も締めた。
アイツ鍵全開でシャワー浴びてたの?男って普通しめないの?
疑問は色々と浮かぶがとにかくシャワーを浴びた。やっと生臭さからの解放だ…
スッキリとしたがゆっくりしている暇はない。まだ勤務中だ。
着替え終わり髪はまだ濡れてるがタオルで拭きつつ事務所へ戻った。物品倉庫へ洗濯物を置き待機室に行こうとするとモーガンがちょうどシャワーを終えて事務所へ入って来た。
「もう戻っていたのか。女性はもっと時間がかかるものかと思っていたが。」
シャワーの為に鎧を脱ぎラフな格好になったモーガンはかなりカッコイイ。鎧越しでは細かい所まではわからなかったがやはりいい体だ。ライアンみたいな…イヤイヤまた思い出しちゃった。良い目の保養ではあったがもう反芻するのは止めなきゃ。余計なトコまで思い出しちゃう。
「仕事中なんでゆっくりは出来ませんよ。」
ここでまた鎧を身につけるのなら邪魔かと思い、さきに待機室に向かった。訓練場を抜けるときチラッとファウロスを探したがもう姿は見えず帰ったのかと思って待機室に入ったらそこにいた。
「あぁ、ユキ丁度いい所へ来たな。今、ファウロスからダンジョンの中の事情を尋ねようとしていたところだ。」
イーサンが私にそう言ったので長くなると思いお茶を入れに行った。給湯室でお湯を沸かしているとモーガンも戻って来たので人数分用意し再び待機室に入って行った。
「ではレベル11に入ってすぐはまだそこまで多くの魔物はいなかったのか?」
部屋ではイーサンがファウロスに事情聴取していた。それぞれソファや椅子に腰掛けファウロスの話に注目している。待機室には基本的に関係者以外立入禁止だが今回は特例なのか、一応地図はファウロスの使う中級レベルは見えない様にしてここへ入れたようだ。
「あぁ、入ってすぐは聞いていた通り少し魔物がいつもより強かったが数はそこまで多くは無く気にならなかった。だがレベル15に入ってすぐスライムに取り囲まれ数の多さに手こずっているうちにゴブリンに囲まれた。個々はそれほどの脅威では無いが数が数だけに救助要請した方が良いと考えた。要請した後もドンドン増えていったしな。」
トレーに乗せたお茶を配りながら話を聞いていた。真剣に話しているファウロスは私に向けられるウザい感じは無く真面目な騎士に見えるから不思議だ。めっちゃ嫌われてるね、私。
「戦っていて思ったのだがそこまでの凶暴性はなかったようだが?」
モーガンがそう口を挟んだ。アレで凶暴性が無いの?私は死にかけたと思ったんだけど。
「それは私も感じました。いくらゴブリンでもあの数でもっと積極的に襲いかかってくれば救助要請なんて間に合わなかったでしょうね。」
「ゴブリン達も混乱しているという事なのかのぉ。」
ずっと黙っていたマルコが呟いた。
「ゴブリンが混乱するんですか?魔物なのに?」
私は魔物の生態には詳しくないが漠然と動物的なものだと思っていた。
「ふむ、魔物の中にも色々といてな。スライムのようにただ本能に従って捕食をするだけの物もいるがゴブリン位になると群れで行動したり、他にも巣を作りそこを拠点に狩りをする物も出てくる。もっと高等な魔物になると最終的に魔王となる者も出てきて他の魔物を統率し我々に攻撃を仕掛けてきたりする事がある。」
「魔王ってそうやって出てくるんですね。」
私とマルコの会話に少し不思議そうな顔で皆が見てる気がした。コレって非常識な感じ?
「なんだかお前は何も知らんようだが、どこから来たんだ?」
ヤバイ、ちょっとモーガンに不審がられてる。
大事な弟の側に変な奴は置いとけないという感じ?
「ユキは迷子じゃよ、ワシが連れて来たんじゃ。じゃから何か言いたい事があるならワシを通してくれ。もちろん、求婚も含めての。」
マルコがそう言って私にウインクして来た。有り難いし良い人だけど現役感が凄い。
「求婚は今の所するつもりは無いが、まぁまた今度話を聞かせてくれ。」
モーガンはマルコにニヤリとした。
ファウロスは帰っていき待機室のいるのは四人だけとなった。
「今の話を聞いてどうですか?数が多いのは魔法陣の誤作動でしょうか?」
イーサンがマルコに尋ねた。
「ふむ、何故そうなったかは不明じゃが数の事はそうじゃろ。だが魔物自体が強くなってきておるのはあまりいい傾向ではないのぉ。」
「今の所レベル15だけが異常な数だな。当座は閉鎖しておけばいいであろ。すぐに魔法陣の修正に向かわせる。」
モーガンは騎士の中でも位が高そうだ。指示の為か、そう言うと一旦外へ出た。
「魔法陣て各地に散らばってるんですよね。すぐに修正出来るんですか?」
あまり詳しい事は聞いてもわからないが職場のことである以上気になる。
「連絡はすぐに取れるが修正自体はしばらくかかるじゃろ。問題は他のレベルも同じ様になった時じゃな。何某かの意図が働いておると考えざるをえんのぉ。」
なんかちょっと真面目な顔したマルコが偉い人に見えてきた。
「何某かのって?」
「ふむ、魔法陣の作動に異常をきたす場合はほとんどが何かの理由で魔法陣が消える、または欠けるという事がほとんどじゃ。だがいつもより魔物を多くこちらに送り込むという魔法陣は作り自体が違ってくるはずじゃ。消えたり欠けたりのような単純な事で起きる現象ではない。」
「意図的って言うけどそんなことして誰が利益を得るの?」
話の流れで当然浮かぶ疑問だと思うがマルコは口をつぐんだ。
「ユキ、そのへんにしておけ。関わると良くない事もある。」
イーサンがやんわり遮った。
なんか深い話になってきちゃったの?
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