#23 傷跡






 その後、学校では二人の処分が公表されると生徒会室の事件も噂となるが、事実と異なる内容ばかりで、僕もハナちゃんも来栖先輩もひたすら口を閉ざした。




 ハナちゃんとは事件前と同じように、一緒に居ることが多かった。

 寧ろ、増えたと思う。

 放課後や休日なんかも良く会っていた。


 お互い辛いのに誰にも弱音を吐けないから、どうしても二人で一緒に居てしまった。 たぶん、お互い精神的に依存していたと思う。






 来栖先輩とも月に1度くらいのペースで、放課後3人集まって愚痴り大会を開いた。


 来栖先輩の愚痴で印象的だったのは「生徒会辞めて折角時間出来たのに、怖くて恋人作れなくなった」と。






 僕の方は、正直言ってカナちゃんの時よりもダメージが大きかった。


 カナちゃんの時は、ドライな関係なのを自覚していたのもあったし、周りに助けてくれる人が大勢居たから踏ん張れたけど、セツナさんに対しては完全に信用しきってて、カナちゃんのことでもあれだけ怒りを露わにしていたので、セツナさんが浮気をするとは想像すらしたことがなく、例えようがないほど打ちのめされた。


 それに、生徒会室で致している二人を直接見てしまった事も、キツかった。

 夜寝ようとすると、あの情景が頭に浮かんで、吐き気で眠れなくなる日が何度もあった。







 その後の二人に関しては、色々な噂を耳にしたけど、興味が無かった。


 浮気した理由を来栖先輩とハナちゃんが色々考察していたけど、それも興味が無かった。


 ただ『自分はそういう(浮気されてしまう、浮気しても平気と相手に思わせる)男なんだ』と自嘲するだけだった。







 一度だけ、学校から帰るとウチの前でカナちゃんに待ち伏せされたことがあった。

 家に上げたくなくて、冬空の下、そのまま公園に行って話を聞いた。



「学校のみんなの前では無理して明るく振舞ってた」

「でもムーくんの傍が一番落ち着くってわかった」

「杉村のことはホントに好きでもなんでもなかった」

「ただ、他の人とのエッチに興味があった」


 他にも色々言ってたけど、今更何を聞いてもただ胸糞悪くなるだけだった。

『顔も見たくない。 もう話しかけないで』と吐き捨て、カナちゃんをその場に置いて帰った。









 ボロボロのまま、ただ時間だけは過ぎて行った。


 生徒会での事件を、もう誰もクチにしなくなった2月のバレンタインに、ハナちゃんとカナちゃんからチョコを貰った。



 ハナちゃんからは「本命チョコだけど、付き合ってくれなくていい。 気持ちだけ知ってくれれば」と言われ、僕も正直に『ハナちゃんと付き合って恋人になっちゃうと、ハナちゃんのことが信じれなくなるのが怖いから、友達のままでいさせてほしい。 ごめん』と返事をした。



 カナちゃんは、僕に直接渡しても受け取らないことが分かっていたからか、ウチの母親に渡していた。

 母親から渡された時『受け取りたくないから、かーさん食べて』と母親にあげた。







 僕のダメージは未だ癒えることなく、地獄の様な1年が終わり2年になった。


 来栖先輩は受験勉強が忙しくなり、ほとんど会うことは無くなった。



 ハナちゃんとは相変わらずいつも一緒だった。

 ずっと一緒に居たけど、恋愛関係に発展することは無かった。


 ただ、二人っきりの時は、ハナちゃんは黙って僕にもたれ掛かってくることがよくあった。

 僕もハナちゃんの温もりを感じると安心することが出来て、もたれ掛かってくれるのが、密かにうれしかった。











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