第3話

「もふもふ幸せー」

 

 そう。今の私は幸せなのである。

 なぜなら、今、狐火の九本の尻尾に埋もれているからである。


 キュウビのようなその尻尾、触って分かる尻尾はキュウビだった。

 しかし、その尻尾と狐耳を除けばクリーチャーではなく少女と言っても差し支えない。


 しかし、それは、あくまでクリーチャーなため、例え手を出しても犯罪にはならない、つまり合法ロリであるのだ。


 そう言えば、人間も妊娠した時点で成長が止まる。

 早く事を済ませてしまえば合法ロリは作れると言うことだ。

 しかし、それ以前に手は出せないので、作る事は出来ないのだがね。


 でも、今となっては、そんな戯言はどうでも良いのです。


 ただ、今は尻尾に集中していれば良いのです。


「余は構わないのだが、ちいとばかし飽きやしないか?」


「そんな事は絶対無いのです。安心してください」


 そう。飽きないのである。

 いくらゲームの中の少女だからといって生きているのには変わらない。それに人肌と言う温もりも感じる。


 つまり幸せなのだ。


 そう。何度でも言おう。幸せなのだ。


「ちょっと気づいてしまったのだが、良いか?」


「何ー?」


「ワイバーンやドラゴンが余らを狙っているような気がするのじゃ」

「ワイバーン? あのコウモリ形式の龍ね。そんなおっかないヤツがこの森に居るの?」


「居るとも。余が相手をして封印しておいたのだが、少しばかし問題が有ってな」


「問題ってなにさ?」


「そうだな、なんと言おうか。余は、その封印が苦手での。不完全だったのじゃ」

「それで?」


「それで? って、恐れ多いが、その仲間の竜人が解除してしまった感じがするのじゃ」


 私は尻尾を撫でている手の感触で反射的に動きを止めた。そうある事を察し悟ったからだ。


 そう、この尻尾を布団にしたら無限に寝れてしまいそうという事を。


 そんな事を、無視するかのように、どこからか、何かしらの咆哮が聞こえた気がする。

 しかし気にしない。


 尻尾を堪能しなければならない。

 これは義務だ。


「違います。義務じゃないです。そして、恐ろしいこの「漆森シンリン」でゴロゴロしているのですか? 死にたいのですか?」


 「ん?」

 龍の少年?


「「クリーチャー名「竜人」 属性、水&植&霊 敵対クリーチャーです」」


 「見てわからないのですか? 僕は竜人。水と霊を使います。貴方なんて、呪い殺してやります。スキル「霊樹龍」のタイプAを使用」


「「状態異常を感知。「自動回復無効」「呪縛+++」「養素吸収」「変異++」です」」


「なんとなく碧眼を使っておいた方が良さそうじゃ。使用」


「「状態異常を感知「下限拡張」値は-1000です」」

「「「呪縛」によりHP400減。現在のHPは-350です。自動回復が無効な為、「値回復」が実行でしません」」


「え? 貴方達何やっているのですか? あれ? おかしいな。HPが-?」

「何ですか? 何か問題でも? 尻尾きもちいい」


 何が何だか分からないが、まぁほかっておいてもいいでしょう! 多分。


「いえ、見た事がない状態でしたので」


「「「呪縛」やその他、状態異常によりHP693減。現在のHPは-1000。最大値です」」


「えい、こうなったら殴り殺してやる。僕の友達を封印した罪を償え!! おりゃおりゃおりゃ!」


「「物理ダメージにより、HP928減。現在のHPは-1000です」」


「くそう。コイツ首がもげても死なないのかよ」


 尻尾気持ちいい。


「こうなったら奥の手だ! スキル「霊界」を使用!」


「「スキルダメージにより、状態異常「回復暴走」とHP×-50ダメージ。現在のHPは50です」」


「バカなのじゃ。-に-は+なのじゃ」


「「スキル獲得。「最愛の死」」」


「僕は馬鹿じゃない! だって、アンデットみたいに回復させたら昇天するのかなって」

「アホ。アンデットでもHPは自然数じゃ。あやつはダメージ計算時、最後に-1を掛けられているだけじゃ」


 尻尾気持ちいい。


「狐火さん詳しいですね」

「当たり前じゃ。この森の主だからな」


「?????? キツネちゃん?」

「?????? マジっすか?」


「どうした二人共。動きが止まっておるぞ」


 なんか凄い事が聞こえたけど、とりあえず尻尾触ろ。


「ひゃん。そこは弱いのじゃ」

 ここか、ここが弱いのか?!


「あの、この森の主って貴方、本当に狐火さんですか? 僕はなんか封印のログを頼りに来たのですが、以前お会いした時より、なんか、お言葉ですが弱そうです」


「お主。信用しておらぬようだな。ほれ、人魂じゃ」


「おぉ。本当に狐火さんっぽい」


「ぽいじゃなくて、本人じゃ!」

「じゃぁ見せてくださいよ。スキル「狐火」」


「お主食い気味じゃな。ほれスキル「狐火」対象は余が主」


「「竜人に1ダメージを与えました。残りHPは11,769です」」


「確かに狐火ですが。弱くね?」


「うるさい! スキル「陰火」を主を標的として発動」


「「状態異常を感知しました」」

 あ、これから、死にそうな時だけで良いよ。報告。


「「承知しました」」


「ほれみろ。「陰火」の火力は高いじゃろ。これからじゃ。「狐火」の強さは。「狐火」を竜人を標的に使用」


「「竜人に11768ダメージを与えました。残りHPは1です」」


「ほれ加減じてやったぞ」


「ほ、本物の狐火さん、、、、、だ、、、」


 尻尾、温かい。



 

 気づけば、竜人はへばっていた。

 理由は知らない。

 だって、尻尾に夢中だったから。


「あ! 竜人さんの尻尾も、なんだか鱗でツルツルしてて気持ちよさそう」


 ひんやり冷たい。それにツルツル。気持ちー


「主よ。あまり敵対の者に触るでないぞ」


「はーい」




「なんか尻尾温かい。ってギャァァァ!! 触っているんですか?!」


「え? 触り心地良さそうだったから」


「僕が言うのもあれですが、よくもまあ、敵対している生物の尻尾を触れますね」

「だって、気持ちよさそうだもん」


「これこれ、竜人が困っておるぞ。こっちにおいで」

「はーい」


「もう、どっちが主ですか。それ」


「気の所為なのです」

「そうなのじゃ」


「そうですか。そうですか。じゃ、僕は帰ります。なんだか恨みを晴らす以前の問題でした」


「竜人くん。帰っちゃうの? じゃぁまた会おうね!」

「あぁ。また今度」


 そう言うと、ショタに尻尾が生えたような姿だった竜人くんは、ワイバーンの姿に成って飛んでいった。


 私はというと、相変わらす尻尾を抱いて癒やされていた。

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