第6話
拳闘大会決勝。
「うおおおおおおおおっ!!!!」
その日誰よりも多くの拳闘士と拳を交わした僕は叫びながら天を仰ぐ。
「勝者は・・・バルトっ!!」
審判が宣言してくれたのを聞いて、ちらっと視線を落とすと、僕と同じだけ多くの拳闘士と拳を交わしたダスティンは横たわっており、意識が落ちている。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
見上げた空は雲一つすらない。
今日は誰も僕の相手にならなかった。ルトゥスと組手の稽古をしていたせいか、対戦相手全員がゆっくり動いているようにしか思えなかった。
僕は世界の全てを受け入れたいと両手を天へと広げる。
いつもならこんなに汗まみれになれば、不快でしかないけれど今はそんな汗すら気持ちがいい。
僕は幸せに包まれていて、あんなにひどいことを言っていたダスティンたちに対しても、この場に上がるきっかけを与えてくれた存在として感謝したいくらい。
そう、最高の気分だ。
僕は客席の中で一番大きな拍手の音が聞こえる方を見る。
「なんて顔してるんだよ・・・ルトゥス」
今日一番大きな声で応援してくれたルトゥス。最後の方なんかは声がかすれていた。そんなルトゥスは目をうるうるとしながら、僕のことを見ていて、僕と目が合うとルトゥスは少し恥ずかしがっていた。けれど、僕は一緒に喜んでくれているルトゥスを見て、さらに嬉しくなった。
「ルトゥス!!」
僕はセレモニーが終わると、首からぶら下げた金メダルを揺らしながら、ルトゥスに抱き着いた。
「おめでとうな、バルト」
そう言って、優しく僕の頭を撫でてくれるルトゥスに僕も猫のようにすりすりする。
「今日勝てたのは、キミのおかげだよ、ルトゥス」
「何を言っているんだ。バルト自身の努力と才能の成果さ。チャンピオン」
そう言って、にやけるルトゥス。
「もーー、からかわないでよ」
「いいじゃないか、チャンピオン、チャンピオン、チャンピオーン」
僕は目を閉じながら横を向いて抵抗するけれど、あまりにルトゥスがうるさいからちらっとルトゥスを見ると、とても嬉しそうだったので、僕も思わず笑ってしまった。
「おい・・・っ」
晴天の霹靂とでも言えばいいだろうか。
和やかなムードに水を差すようなドスの利いた声が僕の背中の方からした。
「ん?」
僕に話しかけられた気がしたので、ふり返ってみると血相を変えたダスティンだった。槍を杖のようにしながら、なんとか立っている。もしかしたら、僕のパンチが綺麗に入り過ぎたせいで顔色が優れないのかもしれないと思って、
「大丈夫―――」
声をかけようと近づいた時だった。
「死ねやああああああああっ」
突然ダスティンが襲い掛かってきた。
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