第3話
「おいっ、弱虫バルトじゃないか。あんなガキに負けて、激ダサだなっ」
僕はちらっと、声をする方を見ると、同い年のリュウケンとその兄のダスティンだった。
「おいおい、弱い者イジメはよくないぞ、リュウケン」
嬉しそうにリュウケンの肩を叩くダスティン。
「でも、兄さん。弱いのが悪いでしょ?」
同じように嬉しそうにダスティンに質問するリュウケン。
「そりゃそうだ」
「「はっはっはっはっ」」
僕は言い返そうとしたけれど、良い言葉が見つからなかった。しかたなく、震えた拳を押さえようとすると、ルトゥスがその右手の拳を握って、頭の上へと引き上げた。
「何の真似だ、ルトゥス。敗者にやる行為としては不適切だぞ?」
ダスティンがドスの入った声でロトゥスに詰め寄る。
「そういえば、リュウケン、ダスティンの部隊は先の戦で壊滅的だったな」
「「あぁんっ!?」」
ぴくっと、二人が反応する。ダスティンのこめかみに血管が浮き出た。
「おお怖い怖い」
恐怖なんて微塵もないルトゥス。なんならおちょくった顔をしている。
「それに比べれば、俺の隊はもちろんだが、それを優に超えて、バルトの隊は素晴らしい働きをしただろう?」
「ふんだ、そいつのところにいい兵士が集まっただけだろっ。そいつはもともとはちゃんと仕切ることもできずに、無能をさらしてただろうが。たまたまだ、たまたまっ!!」
リュウケンが唾を飛ばしながら、必死に反論するのを、ルトゥスがため息を吐く。
「バルトを舐めている連中は死んでいった。そして、見る目がある奴が集まって、そして生き乗ってんだよ。アホが」
ガンを飛ばし合う、ルトゥスとリュウケン。
「まぁまぁ、二人とも」
両手で二人を引き離すダスティン。引き離すと、もの言いたげそうなリュウケンの両肩を掴んでじーっと見る。
「大丈夫だ、リュウケン。あんな、自分の身も守れない奴は雑魚だ。相手にする価値もない」
さんざん馬鹿にしてきたのに、今度はほっとけと言うダスティン。それを聞いて、リュウケンも鼻で笑いながら、
「そうですね、兄さん」
どや顔をする。
全くもってむかつくが、弱い僕が悪いのも事実。僕は何も言わなかった。
「なら、勝負しようぜ。ダスティン、リュウケン」
二人の目が変わる。
「拳闘大会があるだろ?そこで、どっちが強いか教えてやるよ」
ルトゥスの目は自信に溢れていた。
「ふっ、お前が出たところで、そいつは守られてだけのただの・・・」
「いいや、俺は出ない」
ダスティンの言葉を遮るルトゥス。
「えぇっ」
僕は驚いてしまう。
拳闘大会と言えば、その名の通り、拳を使って殴り合い誰が一番強い男か示す大会で、去年準優勝だったルトゥスは今年こそ、優勝すると燃えていたのを僕は知っている。
「なんだ、逃げるのか?」
ダスティンがちょっとホッとした顔でルトゥスを煽る。僕は、ルトゥスに言い返してほしくて、睨むくらいの気合の入った目でルトゥスを見るけれど、ルトゥスは目を閉じ、なんなら笑いをこらえていた。
「俺は騎馬を極める。だから、出ない」
僕は察した。
ルトゥスにはダスティン達は眼中にないのだと。
ボルスを手に入れた彼が目指す未来というのはこの前の景色よりも壮大で開放的な彼だけが見れる世界かもしれない。僕はルトゥスの横顔がかっこいいと思いつつも、置いて行かれる気がして、寂しくもなってしまった。
「だから、こいつがお前ら兄弟を・・・ぶっつぶす」
「ええええええええええっ」
僕はボルスに乗って興奮した時に負けないくらい大きい声を出してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます