幼馴染がいつの間にか俺の布団に潜り込んでいた話

月之影心

幼馴染がいつの間にか俺の布団に潜り込んでいた話

 ここは俺、綾川あやがわ慎之介しんのすけの住む家で、俺は一人っ子で、一家団欒が終われば後は寝るだけ……部屋の布団の中は俺だけなわけで、さすがにこんな時間に幼馴染の美彩みさは居ない。

 俺は一日の疲れをふかふかの布団に染み込ませつつ、明日の休みは何をして過ごそうかとぼんやり考えながら夢の世界へと旅立った……。








「おい。」

「んぅ……」

「おぃこら。」

「んぅぅぅ……ぅ?ふわぁぁぁ……んぁぁ……」


 左隣からの圧迫感で目を覚ました俺の目の前に居たのは美彩。

 ご丁寧に俺から布団を奪い取ってミノムシの如く丸まりながら大欠伸をしておられる。


「何でオマエがここで寝てる。」

「何で……んん……うん……」

「『うん』……じゃねぇよ!いつの間に俺の布団に潜り込みやがった!?」


 布団から頭だけを出してトロンとした目で俺を見た美彩は、その瞼をゆっくり閉じていった。


「寝るなっ!」

「おやしゅみぃ……」

「でぇぇぇぃっ!」


 俺は美彩がくるまっている布団を引き剥がして美彩を起こしにかかった。


「うぁぅ……ヤメロよぉ……あと5分でいいから……」

「5秒もやらん!さっさと起きろ!」


 布団からコロンと転げた美彩は、以前俺から奪取したTシャツとタオル地のようなパステルピンクの短パン姿……完全に寝る格好じゃねぇか。

 この格好でどうやって俺の部屋に来たんだ?

 美彩はボサボサの頭で文字通り『むくり』という感じで体を起こして布団の上に座った。


「もぉぉぉぉ……休みなんだからゆっくり寝かせておくれよぅ……」

「寝るなら自分の部屋の自分の布団で寝てりゃいいだろ!何で俺の布団なんだよ!?」

「ふぇ……?」


 美彩はぼーっとした顔のまま辺りをぐるりと一周見渡した後、俺の顔を見て止まった。

 と同時に、手元の布団を掴んで体の前に持ってきて、親の仇でも見るかのような目付きで俺を睨んできた。


「ちょっ!?な、何で慎之介が私の部屋で寝てるのよっ!?」


 ばしっ!


 俺は躊躇なく美彩の頭をはたいた。


「いたっ!何すんのよ!?」

「ここは俺の部屋じゃ!」

「え?あぁ……ホントだ。」

「ホントだじゃねぇ!いつ!どうやって忍び込んだか説明しやがれっ!」

「知らないわよ!慎之介が連れ込んだんじゃないの!?」

「んな事するか!」


 美彩は布団を抱き抱えたまま俺に叩かれた頭を撫でながら納得いかない顔をしてぶつぶつ言っていたが、徐々に何かに気付いたような表情に変わっていった。


「あぁ……そうか……アレだね。」

「ドレだよ?」

「昨日の晩、窓開けて外見てたんだよ。」

「それで?」

「私の部屋の窓って『どこでも窓』だから……」

「マジでっ!?」

「んなわけないじゃん。」


 ばしっ!


「いてっ!もぉぉっ!人の頭バシバシ叩かないでよっ!」

「叩かれるような事しか言わねえからだろ!」


 美彩は頭をさすりながら俺を睨み付けていた。


「まぁその……アレだよ……」


 俺は拳を握り締めて美彩の目の前に突き付けた。


「まぁ聞きなさいよ。ほら、私たちってもう生まれた時から知ってる幼馴染でお互いの事何でも知ってるつもりで居るでしょ?」

「大抵の事ならな。」


 美彩は引き剥がされた布団を手繰り寄せて膝の上に掛けた。


「で、今では恋人になってるわけで、幼馴染プラスアルファで今まで知らなかった事も知っておくべきだと思うのよ。」


 俺の誰にも知られている筈の無い事を知っているヤツがそれ言うか。

 何故かは分からないけど『歴史エ○動画』と『男のロマン○ロ本』を抹殺したのはどこのどいつだ。


「それで、慎之介とは結構な時間を一緒に過ごしてるわけだけど、寝てるとこって小さい頃に一緒に寝た時くらいしか無いのよね。」


 そりゃそうだろ。

 と言うかそれって幼稚園に入るよりも前の話なのによく覚えてるな。


「だから、今現在の慎之介の寝てるとこを知るには慎之介が寝てるとこに忍び込むしかなかったわけよ。」


 美彩が胸を張って得意気な顔をしている。

 って……ノー○ラ……?

 俺はふっと視線を逸らしておいた。


 ん?


「忍び込んだ?何処から?」

「何処って……ベランダしかないでしょ。」


 あぁ……そう言えばベランダって、昔美彩がよくここから出入りしてた名残で鍵掛けるクセが無いんだった。


「はぁ……そこは俺の落ち度って事か……」

「まぁまぁ、落ち度だなんて思わないでよ。お陰で寝てる慎之介見られたんだから。」

「美彩が得しただけじゃねぇか。」

「カノジョを満足させるのもカレシの役目だと思ってさ。」


 それもそうかと自分を納得させつつ、ベッドから降りようと体を腕で支えた時、手が滑ってしまい、布団の中に手が潜り込んでしまった。


「うぉっと!」

「っとと……大丈夫?」

「あぁ……すまん……ん?」


 布団に潜り込んだ指先に、明らかに布団とは違う材質の物体が触れた。

 俺は姿勢を直しつつ、その物体を指で挟んで布団から引っ張り出した。


「何だこ……れ……」

「あ……」


 は、手のひらを広げたくらいの大きさの、レースで出来た三角形の布が二つ繋がったような形をしていた。

 俺はを俺と美彩の目の高さまで持ち上げた。


「え?」

「わぁぁぁぁぁ!!!」

「うぇっ!?」


 美彩が俺の手からを奪い取ると、両手で丸めて手の中に収めて後ろ手に隠した。


「お、おぃ……そ、それ……」

「慎之介のすけべっ!へんたいっ!ちかんっ!」


 なんかすっごいデジャヴュ……。


「ま、待てって!何で……!?」

「うぅぅぅ……」


 美彩は顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。

 はまごう事無きだ。


「だってちょっとオシャレなやつ着けてたら締め付けキツくて寝苦しかったんだもん!」


 いや、知らんし。

 美彩は赤い顔のまま、胸元を左腕で隠し、奪還したブラを右手に持って後ろに隠して俺から目を逸らしていた。

 俺はベッドの縁に腰を掛けて床に足を下ろし、目の前を指差した。


「美彩。」

「はい……」








 3分後。

 後ろ手にブラを隠したまま、仕方なく貸してやった薄手のカーディガンを羽織った美彩が、カーディガンの前をきゅっと握って俺の前に正座していた。


「俺の寝てるとこが見たくて忍び込んだのは俺にも落ち度があったから不問とする。」

「はい……」

「それで寝てるとこ見るだけのつもりがつい布団に潜り込んだ……と。」

「はい……」

「んでウトウトしたけどブラの締め付けがキツかったから外した……と。」

「う……ん……」

「それだけか?」

「え……」


 問いただしていくにつれて美彩の目が落ち着きを無くしていくのが見えて、コイツは何かを隠していると直感が教えていた。


「布団に潜り込んでブラ外して一緒になって寝てただけか?と訊いている。」

「あぅ……えっと……」


 ますます顔を赤くして俯く美彩。

 何か嫌な予感がする。


「……す……した……」

「何だって?」


 美彩が上目遣いに俺を見てくる。




「き、キス……しました……」




「は?」




 なん……だって……?


「布団に潜り込んで慎之介の寝顔見てたらね……慎之介が寝返り打ってこっち向いたのよ。」

「そ、それで?」

「それで……ちょうど目の前に慎之介の半開きになった唇が来てね……」

「う、うん……」

「ちゅっ……って……」

「まじか……」


 美彩の顔が真っ赤になっている。


「けど何か物足りなくなってきて……」

「え……」

「唇をはむはむしたり……かぷかぷしたり……ぺろぺろしたり……」

「ぺ、ぺろぺろ……?」

「あ……勿論舌でね。」


 そりゃ『唇でぺろぺろ』とは言わんだろうけど……俺は寝ている間にお婿さんに行けない体になってしまったのか……。


「そしたら慎之介が舌を出して唇をぺろってしてきたから……ぱくってしたら私の口の中にむにゅむにゅ~って……」

「うわぁぁぁぁぁ!!!」


 俺は何て事をしてるんだ。

 自分がお婿さんに行けなくなったからって美彩までお嫁さんに行けない体に……。

 いや、寝てる間だから意識は全く無いわけで……てか俺のファーストキスがこれかよ……。


「それから慎之介が……」

「も、もういい……分かった……」

「えぇ?そこから盛り上がったのにぃ。」

「え?も、盛り上がっ……た……?」


 俺は自分の股間に目線を落とした。


「あ~は残念ながらおとなしいままだったよ。」

「ほっ……」


 『ほっ』じゃねぇわ。


「でね……何かちゅっちゅしてたら息苦しいくらいムラムラしてきて……ついブラ外しちゃったのよね。」

「さっき『寝苦しいから外した』って言わなかったか?」

「あ……」

「はぁ……」


 俺は大きな溜息を吐いて肩を落とした。


「あ、でもそれ以上はしてないよ?」


 俺は美彩を睨んで言った。


「本当だな?」

「ぁぅ……」


 美彩が怯む。

 あ……絶対何か隠してやがる。


「怒らないから言ってみ。」

「うぅ……えっと……」


 今日一で顔を真っ赤にする美彩。

 嫌な予感しかしない。




「慎之介の手を掴んで……ここに……」




 美彩が自分の左手でカーディガンの上から左のおっぱいをむにゅっと掴んだ。




「なにっ……!?」


 俺は自分の右手をじっと見た。


「何てこった……」


 俺は全然記憶にないところで美彩のあのおっぱいを触ってたのか。

 しかも寝ている最中という事は、あのカーディガンすら無い俺のTシャツ一枚隔てただけのおっぱいに……。


「どうかした?」


 首を傾げた美彩が俺の顔を覗き込んできた。


「どうかするだろ!身に覚えのないところでおっぱい触ってたなんて……」


 俺の顔を覗き込んできた美彩がにこっと笑う。


「な、何だよ?」


 美彩が俺のカーディガンを左右に開いて胸の山を見せる。


「じゃあ、身に覚えのある内に……する?」




 休日の朝から何だかなぁという感じではあるが、この後めちゃくちゃ……(以下略

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