第7話 ラクになるユウシャ

 ――俺の本当の名前は、この世界にきてから誰にも呼ばれてこなかった。自分が勇者だと勘違いするほどに、勇者としか呼ばれなかった。それを今まで疑問に思うことも無かった。多分、異世界に召喚されたショックでそれどころではなかったのだと思う。でも、勇者と向き合わなきゃならない。この世界でただ一人、俺が勇者ではなく、ただの山田太郎だと知っている俺自身が。


「なに悩んでるんだい?勇者サマ。そんな悩まなくても、もっとラクに生きてこーよ。」


 2回のノックと共に部屋に入ってきたエルザが言い放った。ありえないほどの爽やかな笑顔を添えて。


「これでも飲んで落ち着きな。エルザ特製ハーブティーだよ。大丈夫、ヘンなものは入ってないから」


 エルザはいつも俺たちを助けてくれた。たまに変な薬を飲ませることもあったけど、魔物を怖がる俺の恐怖を和らげてくれたり、毒矢を使って一緒に戦ってくれた。最初は警戒してたけど、俺はエルザが悪いやつじゃないってことを知ってる。


「ありがとう、エルザ」


 爽やかな味のハーブティーを飲んだら、少し気分が落ち着いてきた。頭がすっきりしてきて、ラクになった。やっぱり、俺はエルザにたすけてもらってばかりだ。


「何言ってんだい勇者サマ。これがアタシの仕事だからね」

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召喚された勇者は魔王陣営のための涙を流す らんどせるの雪兎 @yukiusagi57snow

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