義兄と私 アルファポリスにて重複投稿

ソウカシンジ

義兄と私

 揺らいだ心、それを隠した。私は淀んだ夜の中、キッチンでぎこちなく寛いだのだ。義兄と二人きり、夜のキッチン。俺と二人は嫌かとそう問われ揺らいだ心、それを隠した。そんなことないですよ、敬う心を持ち忘れた緊張だけの敬語が静かにそして確かにキッチンに響いた。心にもないことを言うなよと義兄は苦く笑った。緊張からだろうか、義兄の顔それを凝視していた。そこから仄見える焦燥は私を嫌った。焦燥と共に現れる気遣いは確かな姿を見せ、私を愛した。義兄は私を愛していた。私は、嫌っていた。それは事実だった。私にとっても、鈍い義兄にとっても確かな事実だった。その事実とは鮮やかで明るいわけであり、今もこうして私達二人の間を横切っている。私達にはっきりと見えるように。義兄はそれを絶とうともせず私に語りかけている、義兄は諦めていた。私を愛することを、私に寄り添うことを。私は気にかけていた、義兄は姉の元婚約者であるから、であるのに姉に婚約を破棄され、精神に大きな傷を負った人物であるから。私はそれに寄り添った、朝早くから部屋のドアをノックして、夜遅くまで泣きじゃくる義兄の話を聞いた。だから義兄は私の事を好きになった、でも私は怖かった、男の人が怖かった。義兄と同じく私も捨てられた身だったから、だから私は義兄に寄り添った、怖かったけど寄り添った。怖かったのは義兄も同じだろう。深夜、私達は食卓で向かい合い硬いアイスを食べた。

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