彼女作らない同盟を結成したらあっさり裏切られました。

家谷集

第1話 同盟結成!?

四月、高校の入学式に向かう途中、新たな門出を祝福するように満開の桜並木沿いの一本道を涼しい風が吹き抜ける。




「陽介!三年間楽しむぞ!」


大河の掛け声に俺は呼応する。


「おう!俺たちの同盟ここにあり!」




着慣れない紺のブレザーに身を包みんだ俺と親友の大河たいがは手を重ね合わせ誓った。




大河とは小学校からの幼馴染で大親友。同じ高校に入学するほど仲がいい。


中学時代は二人とも帰宅部で放課後毎日夜遅くまで遊び呆けた。




部活なんて入らなくても毎日が笑いに耐えない充実した日々を過ごすことができたんだ。






そんな俺たちが結んだ同盟こそ「彼女作らない同盟」。






俺は高校三年間も馬鹿みたいに大河と毎日遊びたい。


そう考えたときに問題なのは彼女という危険な存在だ。


例えば大河に彼女が出来たとする。おそらくその異分子は大河にこうゆうだろう。




「ねえ、放課後ショッピングセンター行かない?」、「日曜日遊園地いかない?」などである。




となると大河が俺との時間をその異分子との時間に充てるのは容易に想像がつく。




そこで先手を打つべく、入学前にこの同盟を結ぶことを提案したわけだ。


思いの外、大河が乗り気だったので安心した。




というのも大河の容姿はかなり優れている。ぱっちりとした二重、高い鼻、しゅっとした輪郭。


いわゆるイケメンの定義をクリアしており、中学の同級生の間でもかっこいいと噂されているのをよく聞いた。




つまり同盟でも結成しない限り、大河に彼女ができることは容易であるという事だ。




対して俺の方はというとお世辞にも良いとは言えないだろう。




毎日、洗面台の鏡を見るたびに冴えない非モテ顔と対峙しては落胆し、朝だから浮腫んでるだけだと自分を鼓舞して登校していたくらいなのだからな。




女子にもてた試しがない




ただ勘違いしてもらいたくないのは俺がこの同盟を作ったのは親友の大河と遊ぶ時間を確実に確保したいというただ一つの動機から成るということだ。




断じて自分に彼女が出来ないから保険をかけて、彼女がいない言い訳を作りたいというわけではない。




断じてそれだけはない。




結成して約一か月、高校生活に少しずつ慣れ、昼食を食べるくらいの友人を作ることに成功。入学早々ぼっちにならずに済んだことに安堵した。




そんな中、相も変わらず女子と喋ることはできないが、親友との約束を全うしている自分を誇らしく感じることはできている。




女子と喋れない言い訳?いいや、友情は恋愛より大事に決まっている!そんなこんなで今日の退屈な一日が終わった。




俺のクラスは1-Iで三階にある。大河のクラスはH組で隣にあるのでHRが終わるとすぐに迎えに行って一緒に下校するのが日課となっている。




いつも通り俺は軽快にH組のドアに手をかけ、大河を探す。


大河の席は教卓の近くにあるので直ぐに見つかった。




いつもなら俺が来るまで近くの男子と会話をしているか教科書を鞄にしまっているタイミングだ。




しかしいつもと様子が違う。




大河は隣に座っている女子と会話しているようだ。


黒髪でポニーテールのいかにも快活そうで女の子らしい華奢な体格の女子生徒である。




「でさあ、前のテスト超難しいよねー」その女子が言う。




「いやあ、現国の松原って授業は適当なのにテストだけ張り切るからなあ」




大河が溌剌とした様子で返答する。




この女子は最近よく大河と喋ってるところを見る。




おっと勘違いしないでくれ。


俺は同盟を結んでるからと言って女子と話すのがダメなんて抜かす畜生ではない。


だがやけに二人の距離が親密な感じがするのだ。




瞬間、俺の体は小刻みに震えだした。


(ま、まさかね。ただ女子と会話してるだけ会話してるだけ。)


そう自分に言い聞かせ、焦る気持ちをかき消すようにいつもよりテンション高めに声を放った。




「おーす、大河!今日もいつもの場所でだべろうぜー」




「お、おう陽介。そうだな、いこう」


いつもと違う大河の弱弱しい声量に違和感を感じたが、すぐさまそれは確信に変わった。




「た、たたたた大河、そそそっそそそそれ…」




俺は大河と隣に座る女子の筆箱を交互に指さした。






筆箱にはおそろいのキーホルダーがぶらさがっていたのである。




日本一有名なディルニーランドの象徴キャラクターであるネズミのキーホルダーがまるでしてやったりという笑顔で俺の方向を向いていたのである。




俺の体中の筋肉が一気に脱力し、膝をついた。






「「 なんでだよー!!!彼女作らないって約束したじゃんかよー!!!! 」」






俺はどうしようもない肉声を発しながら、ひんやりとした床に四つん這いになり何度もこぶしを床に打ち付けた。




ひどく無様な恰好である。




高校生にもなりながら人前で喚き散らす見事な醜態を大勢の前で晒してしまった。




廊下にいた生徒も一体何が起きたのかと教室のドア付近に群がっている




教室が静まり返る中、大河が重い口を開いた。


「ごめん陽介…」




「たまたま同じキーホルダーを買ったんだ」と言って欲しかった俺の期待に反してあっさり大河は白状した。




大河自身も居心地が悪くなったのか荷物をスクールバッグにしまい、彼女とともに教室を出ていった。




クラスには大河と彼女のほかにまだ帰宅していない学生が数名。


見渡す限り、まるで宇宙人でも見たかのように呆然とした顔が広がっている。




高校生活序盤にしてのこの失態は到底許容できることではない。


その日は生徒の顔はおろか、通行人の顔を一切見ることなく帰宅した。









翌日学校に行くと、昼食を共にする程の友達が俺を避けている事に気づいた。




訳もわからず一人で廊下をウロウロしていると、俺は昨日自分がした失態が取り返しのつかない行いだったことを再認識した。教室でも廊下でも道行くすべての生徒たちが俺の顔を見ながら何やらヒソヒソ話をしていた。




「あの人って昨日の…?クスクス」


「クスクスッやめなよ、聞こえるって」


「なんか彼女作らないって約束を破られて教室で発狂してたらしいよー」


「なにそれキモーイ」




聞く耳をそばだてるとどいつもこいつも同じようなことを言っていた。




人間というものはゴシップが大好きだ。




それが学校という狭いコミュニティであればなおさらだ。




昔、中学一年生くらいだったか。クラスの男子数人で好きな人を言い合おうということになった。


いわゆる恋バナである。




半ば興奮気味に当時クラスのアイドル的存在だった子の名前を口にした。




すると瞬く間に俺の好きな人はクラス中に広まった。二度と好きな人なんて言うかと心に誓った。




しかしショッキングなのはその後であった。




俺は放課後忘れた宿題を取りに教室に戻るとそのA子と取り巻きの連中がいた。




「A子一之瀬陽介に好かれてるらしいじゃん」


「そうそう実際A子はどう思ってるの」


「好きなわけないじゃーん、どうみても私と釣り合ってないもーん」


「だよねー、きゃははは」




その時の俺の感情は言うまでもない。




その日俺は宿題を置きっぱなしにして引き返し、翌日先生に大目玉を食らった。




しかし事態は当時より深刻であり、元々少なかった俺の自己肯定感が0を飛び越えマイナスに転じたのである。




蝉よりきれいに抜け殻になった俺にははその日の授業の内容が頭に入らなかった。




「ジエンドオブマイハイスクールライフ」




俺の高校生活は早くも終わったのだ。




 キーンコーンカーンコーン




授業が終わるといつもの奴らが廊下に人だかりを作っていた。




和気あいあいと喋ってる男女五人のぐるーぷが生徒の視線を集めている。




この五人はいわゆるスクールカーストのトップである。


容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能生徒の序列を決める要素を余すことなく独占する中心人物の滝岡隆二たきおかりゅうじを筆頭にしたそのグループは先生からの信頼も厚い。




クラスのマドンナ井上麻美いのうえあさみ、ハイテンション餅屋博嗣もちやひろつぐ、メスゴリラ竹内由香里たけうちゆかり、口数少ないクール系美女の相羽鳴子あいばなるこが残りの四人だ。




そんな五人に憧れる生徒は当然多く、崇拝する勢いの者もいる。




部活に属していないが、生徒からはリア充部なんて名前を付けられている。


皮肉でなく本当に尊敬されているが故の名前だ。




彼らを見るたびに自分との差を突き付けられるが、とりわけ今日は特別だ。


なんせ今の俺は圧倒的スクールカースト底辺。


うんことダイヤモンドくらい輝きが違う。




「ハア」


ため息とともに今日は気晴らしにゲームでもして現実を忘れようと考えながら下駄箱で靴を履き替えようとした時、誰かに肩を叩かれた。






「リア充になりたいか?」






振り返るとそこには背丈の低い小太りの男子生徒がいた。






俺は咄嗟に聞いた


「だ…だれ?」




「私はI組の節丸大二郎せつまるだいじろう。急に話しかけてすまない!」




「節丸…大二郎?」。


俺はこの男を見たことはない。


というのもこの学年はAからIの9クラスある上にまだ入学して半年、当然全ての生徒を把握してるはずはない。




だが彼の名前はどこかで聞いたことがあった。


どこで誰に聞いたのかは思い出せないが確かに聞き覚えがあるのだ。




「…俺に何か用か」


俺は恐る恐る尋ねた。




すると節丸はさっきとほぼ同じ事を言った。


「リア充になりたくないか?」




気味悪く感じたが、突っぱねるのも悪いので返答してあげた。


「言っている意味がわからないけど、それは男子高校生のほとんどが思っている事じゃないかな」




「そうだよな、そうだよなあ分かるよ、なりたいよなあリア充。容姿に優れ、明るく、人望も厚い、彼女なんかできたりして人生一度きりの高校生活を存分に満喫できるリア充、なりてえよなあ」




「な、なりてえよ!だったらなんだってんだ!」


何を目的に話してるのか分からないが、自分のコンプレックスにやけに踏み込んでくるのに若干イラつき、つい本音が出てしまった。




「フ…フフフ」


不敵な笑みを浮かべた節丸は大きく息を吸い込み、怒涛の勢いでまくし立てた。




「だが君は最悪のスタートを切った!


どうやら君、昨日教室で発狂したらしいじゃないか!


どうやら?友人に彼女ができて裏切られた?とかなんとか言って、泣き叫ぶ醜態をクラスの連中にさらしてしまった。


つまり君は立場を失った。


少なくともこの一年間はやばいやつのレッテルを張られ、悲惨な生活をすることになると私は予想する!」




唐突すぎる。




I組の生徒の耳にも俺の事が届いているのかと愕然とした。




どいつもこいつもペラペラしゃべりやがって。




俺はこの節丸という高校生らしくない口調と、内容に気味の悪さを感じた。


しかし、それ以上にこの男に突き付けられた現実に耐えられず、俺は鬱憤を吐き出してしまった。




「そうだよ!終わったんだよ俺の青春は!


一度気持ち悪いやつという烙印を押されたらその印象を取り払うのは容易な事じゃねえ、そんなことわかってる!


なんだよ俺への当てつけか!」




荒ぶる俺の肩に両手を置き節丸は俺に諭した。




「落ち着きたまえ、いいかい何も君を馬鹿にしたいわけじゃない、私は君にある事を提言したいだけなのだよ。」




「な…なんだよ…」




「ズバリ、俺と一緒に下剋上しないか?スクールカーストのトップに這い上がらないか!」




これがよくニュースでやっている特殊詐欺というやつなのか。




埒が明かなそうなので、話を聞いて、ぐだらなければ帰ろうと決めた。




その後俺はこの男についてくるように言われどこかに案内されることになったのだが、道中この男が脇に某有名推理小説「シャーロッ○・○-ムズ」を抱えていることに気付いた。




それを見た瞬間に節丸の独特の口調が○-ムズに酷似している事に気づき、この男がミーハーで底の浅い人間だと分かった。




しばらく歩くと教室からかなり離れ、校舎の端のほうに位置する空き教室に案内された。




そこには机がいくつかと椅子がいくつかあった。


一つだけ、赤を基調とした大きな椅子があったがそんなことはどうでもいい。




教室に入ると早々に節丸が口を開いた。




「歓迎しよう、わが同盟に」




「ハイ?」




俺と節丸しかいない教室はやけに殺風景で嵐が起こる前の静けさだった。




俺は節丸に言われるがまま、黒板の目の前に座らされ、黒板になにやら書き始めた




 カッカッカッ




軽快に音を鳴らし、節丸は持っていたチョークを置き、書いた文字を俺に見せた




記されていたのは「彼女作りたい同盟」というワード。




すると節丸はなにやら自慢げに説明しだした。




「いいか、この同盟はスクールカースト底辺が集う同盟だ。クラスや学校に居場所を失くした人間が再起を果たすために作られた。」




「居場所を失くした…俺の事か?」




未だに自分がスクールカーストの底辺にいることを認められない自分のプライドの高さにうんざりするものの、内容だけでも聞いてみた




「私も同様、居場所を失くした身。ただこのまま終わるわけにはいくまいと、この同盟を作ったんだ。」




どうやら節丸も俺と同じ状況にあったらしい




と同時に俺はこの節丸という名前にひっかかっていた原因を思い出した。




「ああ!節丸ってもしかして入学後一週間でクラス中の女子に告白したっていう」




「みなまで言うな同士よ…あの時のことは本当に後悔しているんだよ」




節丸は一呼吸おいて事の発端を話した。




「俺がまだ中学生でちょうど心と体が大人へと変わる途中、つまり女子という存在に恥じらいを持ち始めたころ。


その時俺はコミュニケーション能力というものを失ったのだ。


ちょっと女子に話しかけられたくらいでどもっちまって上手く話せない。


さらには学校から帰宅するとアニメ三昧な生活に入り、三次元の女という生物がとてつもなく眩しく高貴な存在に変わっていった。」




俺はその話を聞いて思春期の多感な時期でこじらせていったもの同士、少し理解できる部分を節丸に見出した。




「だからそんな中学時代と決別するために決めたんだ。彼女を作ると。


だから俺は片っ端から告白したんだ」




訂正。やっぱり理解できない。決別の仕方を間違えている。




「そうしたら、どうだ。告るも告るも断れ続け、成功することは一度もなかった。」




「そんなの当たり前だろう…、告白した中にちょっとでも話をしたり、好意を持ってくれていたと感じる女子はいたのか?」




「いや、一人もいないがそれが問題なのか…?」




「告白するにも順序ってもんがあるだろ、さすがに俺でもわかるぞ」


イケメンでもなければ話したことがない女子に告白など、チャレンジにも程がある。




「素晴らしい、そこまで思考を及ばせる人間を同盟の一員に迎えられてよかった」


節丸は相変わらずの口調で話した。




こいつはばかだ、本物の馬鹿だ。


この男のやばさをはっきりと理解した俺はまともに次の質問に答えられなければ帰ると決めた。




「で、この同盟の目的はなんなんだ、一体なにをするんだ?」




すると節丸は大きな声で放った。




「陽介!彼女をつくるんだよ!ただそれは結果であって、ついてくるものなんだよ!


つまり何をするかって言うと、学生のみんなに俺たちがすごいやつだって思われる必要がある。


人間ってのは凄いやつを尊敬するんだ。


それは容姿はもちろん、スポーツ、勉強も然りだ。


尊敬ってのは憧れであり、この人と一緒にいたいと感じる。


それが女子であれば恋愛感情に変わる。


そうすれば彼女はできるんだよ!」




いきなり下の名前を呼び始めたが、突っ込みどころが多すぎてそんなことはどうでもよかった。




「ってことは俺たちは何一つ持っていないじゃないか」


俺は冷静に矛盾点を指摘した。




「他にもある、それは噂だよ、噂といえば君にも思う節はあるだろ?」




「噂?」




「俺たちがスクールカーストの底辺に落ちたのは紛れもないこの噂なんだよ。俺が告白した話を君は知っていた。


そして君の失態も俺は知っていた。


つまりやらかした事はすぐ拡散されネタにされちまう。そうだろ?」




「確かにそうだけど、それと下剋上になんの関係があるんだよ」




パチンっと指を鳴らして、得意げな顔をして節丸はこういった。


「今度はその噂を逆手にとろうってわけだよ」




 俺は理解できず何も反応できなかったが節丸は問答無用で続けた。




「つまりだよ。


俺たちが噂を流され堕ちていったように、今度は噂を利用して上に行くってわけだ。」




「どうゆうことだ?」




「例えば俺が芸能人と友達になれたとする。


そうすると噂をかぎつけた人間が周囲にばらす。


そして瞬く間に学校中に拡散され、俺は一躍人気者になるってわけだ。


今のは極論だが、噂はなんだっていい。


だれかを助けたとか誰かの役に立ったとか。そうすれば皆俺たちを見る目が変わるってわけさ!」




「理にかなった考えだとは思うが、実際何をするか決まってもいないし俺たちみたいな底辺が行動できるとはおもえないな。じゃあな」




俺は呆れてそそくさと教室を出て帰ろうとしたが、節丸は慌てて俺の後ろでこういった。




「良いのかよ!そうやって何もしなければ得るものなんてないんだぞ!」




まるで漫画的な展開に恥ずかしさを感じたので、振り返らずに帰ろうとすると前から俺のクラスの女担任真壁がこちらに向かってきてた。




真壁先生は非常に不安がる性格で先生なのに頼りない。ちなみに先月離婚したらしい。




俺はなんとなく厄介ごとに巻き込まれる気がしたが予想が的中した。




「お、そこにいるのはクラスの一之瀬か…、少し相談があるのよ」


真壁は神妙な面持ちで語りかけた




「なんですか?」




大した用ではない事を祈ったが、報われなった。




「実はな、お前のクラスに河北雄介かわきたゆうすけ君というやつが在籍しているでしょ?」




「ああ…あの不登校の生徒ですか」




河北というのは入学してから学校に一度も来ていない男子生徒だ。同じクラスらしいが、顔すら分からない。




「それでだな、そろそろ欠席が多くて卒業要件を満たせない段階に来ていてね。先生も電話で掛け合おうとしているのだが中々、河北君に変わってもらえないの」




「じゃあ直接先生が家に行けばいいじゃないですか」




そう核心を詰めるとなにかがはち切れたように真壁先生は激しく錯乱した。




「無ー理よーーー!!私はそもそも歴史を学ぶのが好きで安直に教育学部に入って、なんとなく教員になったわけで人間と接するのは好きじゃないのよ!」




「はあ?なにを言ってんすか。それが先生の役目の一つでもあるわけじゃないですか」




「無理よー!」


真壁は泣き叫び地べたにしゃがみこんでしまった。


ヒステリーで感情をコントロールできない女である。




「フフフフ…」


後ろでこれまで口を閉ざしていた節丸が笑みを浮かべこう話した。




「真壁先生、そのご依頼我々が受けさせていただきましょう」




「節丸何言ってんだ!わざわざ厄介ごとに手を出すなよ」          




「本当に?節丸君!」


真壁はパッと顔を明るくして問いかけた。都合のいい女だ。




節丸は俺に耳打ちした。


「いいか、さっき言ったろ?この同盟は人助けをすることも活動の一環だって、つまり引きこもりを救うことで誰が助けたかって噂が広がるってもんだよ」




「じゃあよろしくね!一之瀬君、節丸君!」




こうして俺は不登校河北を救わなければいけないことになってしまったのである。




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