採取と悪巧み

 ここは森の中。あれからティールとカシスは少し休んでいたが遅くなるため探索を再開した。


 そして現在ティールが先頭を歩きカシスは少し後ろの方を歩いている。


「カシス、なんかおかしくないか?」

「な、何が?」

「んー……普通こういう場所って何か居そうだと思ったんだが」


 そう言いながらティールは周囲を見回した。


「そ、そうだね。確かに……動物も見当たらない」

「ああ、魔獣みてえのも居る気配すらない」

「なぜ、かしら? ここは間違いなく、異世界だと思う。だからって……なんの生物も、存在しないって……考えられないわ」


 カシスはそう言い思考を巡らせる。


「そうだな。んー、この先に向かって道に迷ってもしょうがねえか。とりあえず一旦ギルドに帰るぞ」

「そ、そうね。でも……ちょっと待って、この辺の土とか植物とか……採取していくから」

「ギルドに戻って調べるのか?」


 そう問われカシスは、コクッと頷いた。


「んじゃあ俺も手伝ってやる。何をすればいい?」

「……落ちてるのでいいから……小枝とか石みたいな物を……持てるだけ、お願いします」

「そんなんでいいのか? なんなら木をぶっ倒してもいいぞ。それと岩石を破壊してもな」


 それを聞きカシスは、ムッとする。


「自然を破壊してはいけませんっ!?」

「お……おう、そうだよな。気をつけるよ」


 もの凄い形相でカシスに怒られティールは、ビクつき小さくなった。

 その後カシスとティールは小枝や石と土、草花の一部を採取する。

 それらが終わるとカシスは持ってきた袋へ種類ごとに分けて入れた。


「いつも袋を持ってんのか?」

「ええ、どこでみたこともないような物が……手に入るか分からないもの」

「すげえな。俺じゃ、そこまで考えつかねえ」


 そう言われカシスは恥ずかしくなり顔を赤らめる。


「そ、そうかなぁ……ありがとうございます」

「ああ、自信もっていいぞ。って、そろそろギルドに戻るか」


 ティールはそう言い歩きだした。そのあとをカシスが追いかける。


 ☆彡★☆彡★☆彡


 ここは湖より少し離れた場所。この場所にはハルエルとアルケミルが居て歩きながら話をしていた。


「ハルってさぁ……スタナシアのこと好きなんだろ?」

「ああ、勿論だ。そういうアルこそセイマのこと好きなんだよな?」

「当然だ。だけど……セイマは、スタナシアといつも一緒にいる」


 そう言いアルケミルは無作為に一点をみる。


「本当だよな。セイマが一緒にいなければ、スタナシアのサポート役は俺になっていたはずだ」

「そういう事だ。なぁウチとハルは利害が一致している」

「確かに……ってことは何か策があるのか?」


 そう問われアルケミルは、コクッと頷いた。


「勿論ある……ただ、これにはハルの協力が必要だ」

「……協力か。構わないが……内容にもよる」


 そう言われアルケミルは、その策を説明する。

 それを聞きハルエルは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「それって……面白そうだ」

「だろう……ってことで頼んだぞ」


 そう言いアルケミルはハルエルを見据える。


「ああ、上手くやれるかは分からないけどな」


 そう話しながら二人は先へと向かい歩いていたのだった。

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