さいごの“一日”を君と

君と寄り添って窓辺に座る。

目の前に広がるのは空っぽになった部屋。

使い慣れた家具も、ダンボールも何も無い。

ただ、私と君のふたりきり。

「…もう、出なきゃいけないね。」

ぽつりとつぶやいた。

別に悲しくはない。だけど、ずっと生活してきたこの場所を出ていくのは名残惜しく感じる。

それに気づいてか、君はふっと笑った。

「ねえ、ここに来た日のこと覚えてる?」

「え…?」

驚きつつも、空っぽの部屋を見ながら、ここに来た日のことを思い出そうとした。

そう、ここに来た日も、ここは同じように空っぽだった。

知らない土地、知ってる人もいない、新しい場所での漠然とした不安と大きな期待が入り混じっていた。

「これから行く場所でも、新しい出会いがある。素敵なことが待ってる…。楽しみだね。」

君は私の思いを見透かしたようにそう言うと、私の方を向いてにっこりと微笑んだ。

ここで過ごす最後の一日。

どれほどの人と知り合っても、やっぱり君と過ごす最後の日。

そして、これから行く新しい場所も君と――。

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