北へ南へ編 その7 対応に困る国

まずは安全確保の為に俺と護衛の二人・・・メルティスとサーラで艦から桟橋に降りる。と言うか転移する。うん、ここは悠々とした足取りでタラップを降りて行きたい場面だな。でも、扉も含めて設置スペースが無いんだよなぁ。

残りのメンバー?只今絶賛お着替え中である。

ほら、船旅中、特に操艦中に暇だったからお船の中で色々作っておいたから。そう。色々とな!良い子の皆は運転中のよそ見は駄目だからね?


ちなみに本日の俺は


『ゴシック風の首周り、腕、袖口にフリルがフリッフリに付いた純白のシャツ、ボタンなどは全て水の魔水晶』

『ゴテゴテのゴテゴテに聖銀、魔銅の糸で刺繍を入れた燕尾服っぽい漆黒のスーツ、ボタンなどは全て火の魔水晶』

『その上からマントっぽく仕上げた漆黒のインバネスコートを肩から羽織る』

『手袋とロングブーツも添えて』


と言う『みんな見慣れた(中二病全開の)物語の主人公』または『地味な感じの鹿賀○史(料理の○人の衣装の)』。どう考えても日本ではドン引きされるが、この世界ではかなり押し出しが強い装いである。あと鹿○丈史、私の記憶が確かならば想い出補正がかかってるだけでそこまで派手な衣装では無かったのではなかろうか?


本当に大丈夫なのかこれ?(色以外は)アリシアも(全て込みで)スティアーシャも大絶賛だったんだけど不安しか無い。

あと冬の王国からそこそこの距離、南に移動してるから普通に温かいな。コートは脱いでおくか。

メルティスとサーラ?もちろんいつもの黒竜鎧に竜牙剣、今日は二人とも竜の顔をデザインした角付きの盾まで構えての完全装備に決まってんじゃん。見た目の邪悪さがとどまる所を知らないな!


そして、いきなり現れた俺たち三人を見た商国の・・・誰だ?ああ、入港担当の役人さんか。褐色肌の健康的なおじさん、お召し物はそれなりに質が良さそうだ。

流石に前触れもなくいきなり現れて『小役人に対応させるとはいかなる了見か!!』などとキレたりはしないからね?もちろん相手の態度があまりに悪かったりしたら別だけど。


「こ、これはこれは遠路遥々ようこそお越しくださいました。私はハフィダーザ、『船籍総監』と言う、この港に出入りする全ての船を管理、お客様をご案内する役目を仰せつかっております。おりますのですが・・・こちらは船でよろしいのでしょうか?」

「で、あるか。ご苦労、キルシュバーム王国のラポームである。これは王国の新造艦だぞ?そちらが望むなら祝砲がわりに何発か魔導砲を撃って差し上げるが?」

「『まどうほう』とは一体・・・い、いえ、侯爵閣下のお気遣い、誠にありがたくぞんじますが私には入港手続きとご案内以外の権限はございませんので・・・。狭いところで誠に恐縮ですが迎賓館より迎えが参りますまであちらでしばしお茶でもいかがでしょうか?」


みんな一度は言いたいよね?『で、あるか』。

そして役人は役人だけどなんか聞いたことの無い役職の人だった。

態度もごくごく当たり障りのない感じだし本人から特に悪意も感じないし到着すぐの他国の貴族相手にどんなもてなしをするのかも興味あるし素直について行ってみるかな?


商国が用意した乗り心地の悪そうなオープン馬車に揺られる・・・のは嫌なので黒馬車と黒馬(バイク)を出して唖然とした顔でこちらをみつめる商国の人間に遠巻きに囲まれながら移動すること約五分・・・馬車の乗り降りの時間を考えれば歩いても変わらない距離である。

やってきたのは・・・何だろう?海の上に張り出した南国のコテージみたいな建物?

360℃狙いたい放題のほぼ壁も無いフルオープンな建物とかちょっと想像してなかったから微妙に困惑する。


暗殺、いや、特に隠れてはいないから普通に殺し放題だよねこれ?今は俺だけだからいいけどあんな場所に奥さん連れて行くとか考えられないんだけど?

ちょっとどんな歓迎をされるのか試そうとしたらどう対応するのが正解なのかこっちが試されることになるとは・・・商国、恐るべし!

いや、むしろ殺しに来てると考えて行動するべきなのか?


「貴国は・・・馬鹿なのか?それとも王国、はたまた私を舐めているのか?」

「はっ?えっ、いえ、その様な意図はまったくございませんが・・・」

「ほう、海の上、橋を落とせば逃げ場のない場所に閉じ込められる空間、それも四方八方から弓や魔法で狙い放題の場所に王国侯爵を滞在させようとするとは隔意がある以外の何物だというのだ?そもそも現状での王国と商国の状況が理解できていないのか?商国は先の戦のおりに皇国と共に王国に対し荷留を行っているのだぞ?今回の私の来訪もそれにどの様な意図が有ったのか詰問するためのもの。つまり今、王国と商国は剣を交えてはいないが敵国同士だ。その国の人間、大使として訪れた大貴族を暗殺し放題な場所に連れて行こうとする。貴様ならどう感じてどう受け取る?私は宣戦布告だとしか思えぬのだがな?」

「も、申し訳ございません、け、決してその様な事は考えておりませんでした!こちらといたしましては、ただただご訪問頂いた方々に商国の開放的な空気を味わって頂きたく・・・」


その場でジャンピング土下座の体勢に入り地面に額を叩きつける某。


えー・・・これって俺、間違えてないよね?普通の観光客じゃないんだよ?そもそも観光する人間なんてこの世界には物好き(と、俺)以外ほぼ居ないんだけれども!

どう考えても危険そうな場所に他所の国の貴族を案内しようとしたこの国が悪いよね?それとも応接間的な場所に壁が無いのはこの国の常識なの?

帝国は王国と変わらないほぼ内陸国同士だからそれほど変わらなかったけど価値観の違いって埋めるのが難しいよね・・・。あと回りからの怯えた視線が痛いです。

ああ、そっちで剣の柄に手を添えてる二人、まだ抜いちゃ駄目だからね?

クラウチングスタートレベルで暴れる用意の早い護衛の二人である。


「はぁ・・・話にならんな。今回はこのまま帰国し、国王陛下にいかに商国が王国に対して隔意と反意を持っているかを報告しておこう。メルティス、サーラ、帰るぞ!」

「はっ!」

「お、お待ち下さい!ご無礼の段、心より謝罪致します!何卒、何卒ご容赦を!」


そんな騒ぎを聞きつけてか・・・いや、おそらく艦が掲げる王国旗を見て慌てて充てがわれている屋敷から飛び出してきたであろう人物


「アプフェル伯!いや、妹を娶るおりに陞爵して今はラポーム候であったな!こうして直接まみえるのは初めてであるが・・・うん?どうしたのだその者は?」

「妹・・・もしや第二王子殿下であらせられますか?王都をお留守との事でご挨拶大変遅れましたことお詫び申し上げます。陛下より侯爵位を頂きましたハリス・ガイウス・バーム・ラポームでございます」

「はは!すでに兄弟なのだ、その様な堅苦しい挨拶は不要。私の事も気軽に『キャスパール』と呼んでくれ」

「はっ!ありがとうございます。私のこともハリスとお呼びいただければ幸いであります」


俺とはほとんど面識がない第二王子、キャスパール氏の登場である。

惜しい、実に惜しい!『真珠(パール)』じゃなく『居酒屋(バル)』だったら宇宙を支配できるほどのカリスマ性に溢れた人間になれたかも・・・いや、奴は駄目だ、マザコンのロリコンでナルシストと言う三重苦を背負っている。

日本に居た頃は俺もナ○イみたいな恋人が欲しかった・・・。他にも草○少佐とか大好物です!でも不○子ちゃんはそうでもないです。

俺の年上好き、異世界とか実年齢とか関係なく昔から説が浮上。


「それで・・・その男はどうしたのだ?」

「ああ、それでしたら私や妻である王国のアリシア王女殿下及び帝国のスティアーシャ皇女殿下や皇国のセルティナ皇女を暗殺しようとした疑いで問い詰めておりました」

「なっ・・・それは真か?」

「その様な事実はございません!私は普段どおりお客様のご案内をしようと」


「黙りなさい!尊き方のお許しも得ずに言葉を遮り発言するとは何事ですか!・・・失礼いたしました、ラポーム侯爵閣下、私は商国の外務総長をしておりますドゥカルナと申します。こちらの手違いにより重大な不手際がありましたこと、心より謝罪いたします。この様な場所閣下にこれ以上お立ちいただくわけには参りませんのでよろしければ迎賓館、または王子殿下にお住まいいただいているお屋敷までご案内させては頂けませんでしょうか?」


初対面にしては親しげな第二王子と、やたら腰の低い商国の外務総長(地球で言えば東南アジア系の男前、目元に化粧をしている)ではあるが、魔眼スキルで見ると二人ともこちらに対する敵意バリバリである。

まぁ俺もこんなところで延々と騒ぐつもりもないのでお言葉に甘えて案内してもらう・・・気持ちなど毛頭なく。


「ああ、それでしたら何処か広めの空き地、または取り壊してもかまわない大きめの屋敷に案内してもらえますかね?そこに館を建てますので」


安全面を考えれば自分で建てるに限るよね?


―・―・―・―・―


まったく関係のない話だけど田○敦子さんのセクシーな感じのボイスを聞きたい方は『スパル○カス』って言う洋ドラを見るべし!古い映画版じゃない方で!

注意点といたしましては入浴シーン(男湯)で筋肉質のおっさんが全員ぷらぷらさせてるので非常に暑苦しいところ・・・(笑)

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