南の都編 その8 お宅探訪♪

帝国の使節団の帰国後はいよいよ南都の建設予定地に・・・お嬢様方からの圧が凄いので先に式だけでも挙げてくれと。


Q:いや、でもまだお家とか無いんですけど?

 A:王都に土地をご用意いたします。


Q:いや、貴族街に空き地とかほぼ無かったと思うんだけど?

 A:王家管理の土地があるからそこを使ってください。


それって王族用の、平たく言えば引退後の王様のお屋敷建てたりする場所だよね?

俺、老後の面倒とか見ないよ?


てことで侯爵家からうさぎさんを借り受けてうちのラッコちゃんにお手伝いしてもらいながら荒れ地の整地から。

日本人にとって都市部のお屋敷と言えば?そうだね、みんな半年に一度くらいは行ってるあのお城、二条城だね!

もちろん広さ的に完全再現は無理だからそれっぽい感じで洋風にアレンジして・・・。


『てか王国有数の綺麗所と一緒に暮らすとかそれもう二条城じゃなくて六条院(光源氏のお家)じゃね?』

その通りだと思います。

そして出来上がったお屋敷は・・・。


うん、どっから見ても二条城じゃない。どの角度から眺めようがお城には見えない。

何から何まで完全に別物になった。おそらく原因はガラス窓。

いや、三階建なのもおかしいんだけどさ。

そもそもレンガ造りで二条城とか最初から無理がありすぎた。


お城って言うよりも高級でモダンな感じのホテルだわこれ。

もちろんレンガ造りって言っても『外観がそう見えるだけ』の継ぎ目のない壁だから強度は比べ物にならないんだけどね?

せめて内装くらいは近づけないと・・・。


「ハリス」

「ん?どうかした?」

「いや、どうしてこの部屋の壁と天井は金ピカなのだ?」

「どうしてって部屋(大広間)の壁(襖)といえば金じゃない?」

「そんな話聞いたこと無いが・・・」


「閣下!」

「ん?どうかした?」

「どうして壁にトゲトゲした感じの木の絵が書いてあるのでしょうか?」

「どうしてって屋敷の壁(お城の襖絵)といえば松じゃない?」

「そう言うものなのでしょうか?」


ちなみに職人(魔導板さん)技の金箔貼りなので金の使用量は驚くほど少ないから経済的にも特に問題はない。

あとは庭を整えて・・・ああ、うちは馬車とか機械化してるから関係ないけどお城みたいにお客さん用の厩も必要なのかな?

うん、ジョシュアじーちゃんに来てもらって細かい部分を見てもらったほうがいいな。


むしろうちの家令としてフィオーラ嬢の嫁入りの際に移籍してもらえないだろうか?

そう言えば日本に居た時『新築のお家のお風呂の一番風呂に入ると長生きする』みたいな事聞いたこと有るような無いような気もするし、来てもらったついでに男湯の方はじーちゃんに入ってもらおう。

『鰯の頭も信心から』って言うしな。迷信、言い伝え、都市伝説だとしても気は心なのである。

女湯の方?もちろん奥さん全員で一緒に入ってもらうに決まってるじゃん。



「てことでお家が完成しましたのでお披露目です」

「いや、まだ土地を下賜してから10日ほどしか経っておらんよな?なんだこの、なんなのだこの重厚な館は?」

「頑張りました。そして王都の魔法使いならこれくらいは朝飯前です」

「宮廷魔術師を総動員して3年かけてもどうにもならんわ!!」


メルちゃんのご家族ならこれで納得してくれるのに!王様は夢がなさすぎると思います。


「じゃあ精霊様のお力です」

「相変わらずハリスは適当だなぁ」

「凄いのです!早くミーナのお部屋に案内して欲しいのです!」

「お、おう、いや、姫騎士様のお部屋は・・・いえ、大丈夫です、ちゃんと用意してありますから泣き真似はおやめください」

「むぅー、ハリスのミーナに対する扱いが最近ツレナイのです!」


てことでお声がけさせていただいたのは王家、キーファー家、ヴァンブス家、フリューネ家と


「君、久しぶりに遊びに来たと思ったらこの状況は一体何事なのかな?」

「だって1人くらいは年の近い知人がいないとまるで俺が寂しいやつみたいじゃん?」

「僕、そんな一方的な理由でこの胃の痛くなりそうな集団に巻き込まれたんだ!?」


最近影が薄い友人代表としてエオリア(婚約者様同伴)である。


「館内土足厳禁となっておりますのでこちらでスリッパに履き替えてくださいねー」

「これは・・・玄関先からなかなかの敷物だな。毛足も長く歩き心地が良い」


「「「いらっしゃいませ」」」


玄関ホールにずらりと並ぶ女将と中居さ・・・ドーリスとメイドさん。

そこは「いらっしゃいませ」ではなく「おかえりなさいませご主人様、寂しかったにゃん!」ではないだろうか?

もちろんうちにはドーリスしかいないので他のメンバーは全員キーファー家からお借りしてきた。


服装は着物じゃなく俺御用達のヴィクトリアンなメイド服だ。うん、こうやって綺麗所が並ぶと『俺貴族』って感じだな!あ、飲み物の追加したいんですけどー。

てかしれっとAさんが混じってるけど大丈夫なの?今日は他所様がいっぱいいるんだけど?

うん、嫌いじゃないんだよ?むしろ好き。ただお仕事面での信頼関係が成り立ってないだけで。


玄関から向かうのは待合室、例えるなら日の当たる喫茶スペースだな。


「いや、何だその透きとおった壁ほどもある大きさのガラスは!?!?」

「あら、この椅子、座り心地がとてもいいですね?」

「それでも、もしお尻が痛い時はお呼びくださいね?私がクッション代わりに挟まりますので」

「ハリス!あなたは私のお尻の心配だけしていればよいのではないかしらっ!?」


フィオーラ様、人をボラ○ノール扱いするのはおやめください。

待合室の次は大広間、奥の移動式の壁を取り払うと大人数にも対応できるパーティスペースへと早変わり!


「いや、壁が金!?天井も金!?テーブルは総大理石!?」

「天井のシャンデリアもとてもキラキラと美しいですね」

「そんな・・・お姉様の輝きに比べればただの石ころみたいなものです」

「ハリスちゃん、それはおねぇちゃまにかけるべき言葉じゃないかと思うよ?」


リリおねぇちゃま最近タールのようじゃないですか・・・。


「以上で案内を」

「はやっ!?まさかの終わり!?」

「いや、だって後はプライベートなスペースだからお客様を通すことはないですし?」

「まだここで暮らしてはおらんのだろう?なら別に見るくらいは構わんだろう」


何その『さきっぽだけ』みたいな理論。

別にいいけどさ。もちろんメイドさんとか使用人が使う場所の案内は必要ないだろうから


「こちら男湯となります。奥にあるのは蒸し風呂です」

「風呂?いや、誰も入っているわけでもないのになみなみと湯が張られて・・・流れ出しておるのだが?この池の様な広さの空間が風呂?そして蒸し風呂とは珍しいな」

「男湯ということは同じ様な広さの女湯がもう一つあると」

「これだけの広さだと水くみだけでメイドに死人が出そうであるな!」


さすがに池と言うほどの広さはないからね?そして源泉(魔道具だけど)かけ流しで1日中お湯に入れるのだ!(※掃除中除く)

ちなみに湯船は地方の銭湯くらいの広さ。そして自分で建てるんだったらサウナくらいは欲しいじゃん。

お風呂の次は


「休憩室兼娯楽室です」

「何故家の中に休憩室が必要なのだ?」

「こちらは落ち着いた感じの部屋だな。そして何だあの細長い緑色の机は?」

「演習板(将棋のような物)もあるのです!」

「この絵柄の書かれた薄い紙は占いの道具かな?」


なんとなく温泉旅館っぽかったからゲームコーナーも作ってみた。

温泉場の娯楽と言えばビリヤード、ポーカー、卓球、将棋・・・ダーツとスマートボールなんかもあるけど将棋を用意した時点で我に返った。

ちなみに遊び方は教えない。長時間居座られても困るので。

同じ理由で身内用の客間ももちろんあるんだけど案内は控えておいた。


「で、家族用の食堂・・・最後に私の寝室で今度こそ終了になります」

「寝具がすさまじく柔らかそうなのだが」

「どの部屋にも大きな窓があるので日当たりがよさそうですね」

「屋敷の中で靴を履かないというのもよいな。もちろん部屋、廊下と問わず敷物を敷いてあるからだろうが」

「明かりの魔道具が凄まじく高性能ですね。あれほど明るいものをこれほど大量に用意できるとは・・・」


まぁそんな俺の抵抗も虚しく、全員がご飯食べてお風呂に入って遊び倒して泊まっていきやがったんだけどさ。

オースティア様とマリア様の卓球対決・・・ぶるんぶるんやぞ!?なぜ俺は浴衣を用意しておかなかった!!

そして何が悲しくて新築のお家で『おっさんだらけのお風呂大会』を開かなければいけないのか?

なぜお着替えのないおっさん連中のパンツを用意しないといけないのか?いろんな意味でげんなりだわ。


「この家の風呂場はおかしいだろう?なんなのだあの蒸し風呂の爽快さは!そして下着の履き心地の良さ!ちょっと城にも用意して?」

「いや、アリシアに聞いてはいたが風呂よりも厠でしょう!キーファー家にだけあるらしいのはずるいと思うのだが?まずはあの巻いた紙だけでも納入すべき」

「ハリス、あの玉突き台、うちにも2台ほど欲しいのだが?」

「ハリス、あのベッドは実に寝心地が良いな!いや、私ではなくてマリアがどうにかならないかと言っておってな?」

「婿殿、朝食はカレーが良いのである!ああ、もちろんそのふわふわしたパンけぇき?もいただこう!」


おっさん連中マジフリーダム・・・。

あと一番おねだり上手なのはマルケス様だと思いました。

ちなみに久々に出てきたエオリア、結局隅っこでちぢこまってただけなので最後まで影は薄いままだった。

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