新しい年編 その25 ゴールデンアプフェルバオム

完全に意識から抜けてたけど王様が晩ごはんを食べに来るらしいのでいつまでも全員でわちゃわちゃと騒いでいるわけにもいかずドーリスと一緒に厨に向かう俺。

うん、微笑み合う2人の姿はどう見ても仲の良い若夫婦にしか見えないはず。

今日の晩ごはんは・・・どうしよう?人数的には今までで一番多いんだよなぁ。

手の込んだことしてたら翌日にはならなくてもそこそこの時間までかかりそうだし。


てなわけで下準備だけ、その下準備も調理と並行して出来るって事で今回はオーダー形式の串カツ食べ放題に決定。

むっちゃ庶民的に見えるけどこの国では揚げ物は珍しいので特に不満は出ないはず。

てかおじさん連中は揚げ物と冷やしたお酒を与えておけばまったく文句は出ないからね?


あとは待ち時間につまめるように唐揚げにマヨネーズ、否、ここは敢えてタルタルソースを添えておけば完璧だろう。

・・・どこからみてもデヴ製造メニューだな。

ドーリスに手伝ってもらい、下拵えも終わったのでみんなに食堂に集まってもらう。王様、もう戻って来てたんだ。


アリシア王女がむっちゃ何かを求める視線をこちらに向けてるけど先にご飯にしようね?

俺はもちろん揚げる係、ドーリスは素材を切りそろえたり串に刺したりの下拵え調理補助でメイドさんは配膳係だな。

結果・・・みんなむっちゃよく食べた。


いや、女性が多かったから野菜系が出るかと思ってたんだけど一番注文されたのは『エビ』だった。

時空庫に結構な在庫があったはずなのに・・・品切れした。

海が遠いから新鮮な海の幸は珍しいのもあるんだけど、唐揚げに添えたタルタルをつけるとべらぼうに美味しいもんね?

でもそれ、串カツじゃなくてただのエビフライだわ。


次が『牛カツ』、人気の部位はヒレの部分。

以下『豚カツ、ウインナー、白身魚』。野菜は申し訳程度にしか頼まれなかったよ。

てか1人平均で35本くらい食べてるんだけど胸焼けとか大丈夫?俺でも15本くらいでお腹いっぱいなんだけど?


皆様全然平気でデザートもいけると。・・・用意してなかったわ。

久しぶりに登場のアイスクリームメイカーが火を吹くぜっ!!

今日はバニラで。贅沢を言うならば黒蜜ときなこが欲しいところ。

むしろ黒蜜ナシのきなこだけでもOK!口の中パッサパサダンスになるけどな!!


「話には聞いていたがアプフェル伯は本当に料理が得意なのだな?」

「ええ、まぁ家庭料理の域は越えないですがそれなりには」

「このような料理の出る庶民の家庭など絶対に無いと思うがな・・・」


食後はもちろんお話を再会・・・の前に俺とドーリスとお手伝いのメイドさんと


「お前・・・まだ食うのか!?」

「くしかつは別腹なのだ」

「まったく意味がわからない」


ミヅキで晩ごはんを済ませる。


お手伝いに参加できなかったメイドさんがこちらを見つめながら血の涙を流しそうだったので自分で揚げて食べるのならと参加を許可した。

揚げるための魔道具、卓上フライヤーのおっきなのだからさ。

ひっくり返しでもしないかぎり自分でやってもそこまで危険はないのだ。

てかエビ・・・俺のエビが無い・・・。



ご飯も済んだので改めて皆様が待つお部屋でお話の続き。


「いや、残ってるのは俺のお家を建てる土地のお話だけなので別にお嬢様とお姉様方は参加なさらずとも」

「土地だけじゃないからな!?妾、妾の輿入れの話もあるのだからな!!」

「うん?アリシア、輿入れ・・・ほう!そうか!伯はアリシアも嫁に迎えるつもりなのか!!」

「いえ、そんな話は・・・ええ、まぁ、はい・・・」


特に無いと言おうとしたらダリの絵のような、絶望を体現したようなそれでいてシュールなすごい顔で王女様に見つめられたよ・・・。

何なの?気が強い女の子のその表情。

俺の嗜虐心をゾクゾクと刺激すると言うか父性本能で守りたくなるというか。


「ふむ、ならやはり侯爵位ではなく公爵位が必要だな!!領土の広さ的には問題はなかろう」

「いやいやいや、お待ちを、少しお待ちを!えっと、お家を建てる為の土地を頂くお話ですよね?何ですかいきなり領土って?そしてこうしゃくとかこうしゃくとかどういうことでしょう?」

「どういうも何も・・・救国の働きをしたのだから陞爵の話がでるのは当然、むしろ出ないほうがおかしいであろう?そして侯爵位、つまりキーファー家より離れて都貴族になるのだから土地持ちになるのもそれほどおかしな話ではないだろう?心配せずとも領地には他の貴族など一切おらぬまっさらな土地を用意するから心配はいらん。統治についても上納分、税収の1割を収める以外は口出しなどせぬしな」

「えー・・・いえ、しかし・・・」


「ハリス、別に難しく考える必要はありませんよ?あなたの妻になるのは私なのですから。政務は私、ヴェルフィーナ、リリアナに、軍務や人事はアリシア殿下に、外向きの事は」

「私がお引き受けいたします!!」

「そうね、ヘルミーナに任せておけば問題ないわね」

「いや、幼女が外交担当とかおかし」


・・・くもなさそうなんだよなぁ、うん。

むしろヘルミーナ嬢以上の適任者が見つけられないくらい適任だと思えるわ。


彼女たちが領地の経営を回す姿を想像してみる。・・・ビックリするくらい何の問題も無さそうだよね。

後は暇そうにしてるエオリアでも連れてくれば土木関係の工事以外に俺のすることなんてほぼ無いに等しいはず。

頑張って働く嫁、それに寄生する俺。正しく求めていた理想の姿ではないだろうか?

てか俺が年に1日くらい働くだけで嫁も働かなくてすむのが理想なんだけどさ。


何かの際には国を捨てて嫁を連れて出ていく為の準備さえしておけば・・・アリかもしれないな。

てかそもそもの話、これだけの人数の上級貴族のお嬢様を嫁にくれって言っておいて舌の根も乾かないうちに『俺、無役になります!』とは言えないしなぁ。

ちゃんと養える(正確には俺が養ってもらうんだけど)だけの姿勢を見せるのは必要か。


てことで俺の言える言葉は


「ま、前向きに検討させていただきます・・・」


しか無いのであった。


うん、まぁ、あれだ。

考えるって言っても一人になる時間とかほとんど無いじゃないですか?

フィオーラ嬢とかメルちゃんとかサーラ嬢とかドーリスとかが2~4人体勢で部屋に居るじゃないですか?

イチャイチャするじゃないですか?エッチな感じじゃなくて甘い感じで。


ヴェルフィーナ嬢とかリリアナ嬢とかアリシア王女が居ない?

さすがによそのお嬢様は連れ込んでないから・・・。

もちろん本人達はそこそこゴネたけど。お家が出来るまでは我慢してもらうことに。


もうね、若いうちに女性経験がないおっさんが年取ってから恋した感じ?

想像通りなんにも手が付かないうちに王城での表彰式と言うか報奨式と言うか王城に集まる日になったよ・・・。


報奨、勲等第一位ってことでまずは俺から。

王都から少しと言うか、徒歩で一週間ほど離れた場所に広大な土地と侯爵位を頂く。

・・・いや、王都の南に一週間とか荒れ地しか無かったような・・・むしろ山脈の麓の大森林だよねそこって?むっちゃ嬉しいんだけど?


「ありがとうございます!臣ハリス、国王陛下のご温情謹んでお受けさせて頂きます!!」


歓喜の表情で受領書を受け取る俺を何故だか可愛そうな目で見る他の貴族の方々。

いやいやいや、手付かずの自然とか山脈とか正しく資源の宝石箱だよ?

約束通り他の貴族が全く居ないのもポイント高いし。


ついでにこの先10年間は王国への上納の免除まで付いてるんだよ?

俺の気持ち的には『A列○で行こう』とか『シティーズ○カイライン』のニューゲーム的なワクワク感が半端ないんだけど!!


あ、侯爵に陞爵されるにあたり新しい家名を名乗ることになったんだけどさ。


最初の候補が

『ゴールデンアプフェルバオム』

だった。いや、どこの銀河帝国だよ。無駄に仰々しいよ。


てなわけで家族・・・になる皆で相談した結果、家名は

『ラポーム』

となりました。


―・―・―・―・―


新しい年編、ここまででございますm(_ _)m

うーん・・・後半5話くらい駆け足すぎたような気がする・・・。

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