新しい年編 その22 ハイテンションキング
王城から俺、メルちゃん、サーラ嬢の3人が運転する3台の魔導馬車が目指すのはもちろんキーファー公爵邸。
何が『もちろん』なのかは全く不明だけど。
俺の隣、助手席にはご機嫌そうにアリシア王女が座っている。
MPプレイヤーとかあればドライブデートみたいな感じになるのに少しだけ残念。
ほら、2人でかたいっぽうずつイヤホンを使ってさ。
入ってた曲がステレオじゃないから1人は聞こえてなかったりするアレ、やりたいじゃないですか?
てか王様もむっちゃ助手席に座りたいアピールしてたんだけどね?
アリシア王女が睨みつけて撃退した。そして王様はサーラ嬢の助手席に座った。
まぁ王城から公爵邸まではタクシーでワンメーターくらいの距離だからあっという間に到着するんだけどさ。
当然帰宅と他の貴族様、あまつさえ王族が来宅されるという事でお屋敷の前にはずらっと並ぶキーファー家の使用人の方々・・・と、見覚えのあるお嬢様方。
そうだね、フィオーラ様とリリおねぇちゃま、そしてヘルミーナ様だね。
もちろん各ご家庭のお姉様方もいらっしゃるのだが・・・そちらはそちらで出迎える方がいらっしゃるので。
「「「お帰りなさいませ」」」
と止まった馬車に向かい揃ったご挨拶の後はこちらのご当主様筆頭にみなさんが順番に下車していく。
ちなみに国王陛下、こちらをチラチラとみられても馬車は差し上げませんので念の為。
むっちゃ操縦したがってるみたいだけど、そもそもご自分で運転とか誰も許してくれないと思われます。
車から下りた俺の胸に飛び込んでくるのはもちろんヘルミーナ嬢。
いつもより高く跳び上がったからか思わず口づけをしそうになったので少し首を後ろに下げて回避する。
・・・姫騎士様、今、舌打ちしたよね?気のせい?
ヘルミーナ嬢を下ろした後はフィオーラ嬢ではなくリリアナ嬢がとてもセツナそうな表情で抱き着いてきた。
リリおねぇちゃまはかなりお久しぶりだもんね?
フィオーラ嬢?お嬢はほら、少し向こうで穏やかな笑みを浮かべてこちらを見てるから。
ほら、コーネリウス様が両手を広げて待ってらっしゃるのでヘルミーナ嬢もスルーしないで抱き着いてあげて?臭そうだから嫌?あ、そう・・・。
ちなみに上をむいて目を閉じてもリリアナ嬢にもキスはしませんのでご了承を。
あとアリシア王女、後ろに並んでも順番制ではないので抱きしめませんので。
そもそもあなたは出迎える側ではなく出迎えられる側です、キスもしませんからとっととお屋敷にお入りください。
「そう言えばヴェルフィーナは屋敷に戻って居なかったようであるが?」
「ああ、お嬢様でしたら海と料理が珍しかったらしくヴァイデ男爵家で逗留されております。お連れしましょうか?」
「うむ、あれにも話を聞きたいので連れてきてもらいたいのである!」
男爵邸に戻ると昔からそこで暮らしていたのかと思うくらい馴染んでいるヴェルフィーナ嬢がいた。いや、人の部屋でくつろぎ過ぎです。
そして何かを察したのか付いてくると言って聞かないヴィオラと残していくのは可愛そうなのでドーリスも連れて蜻蛉返りで王都に戻る。
本日は人数がやたらと多いのでいつもの応接室では無く大部屋に(椅子や机などを使用人さんが慌てて揃えてから)入る。
てか俺の周りの女の子率が妙に高いんだけど・・・。
おっさんに囲まれるより嬉しいからいいんだけどね?
もちろん膝の上には姫騎士様――ではなく今日はミヅキが座っている。
ヘルミーナ嬢、少し頬を膨らませておかんむりである。
メイド(ドーリス含む)と護衛の騎士(メルちゃんとサーラ嬢含む)以外の全員が腰掛けた所で最初に口を開くのはもちろん国王陛下。
しれっとこの面子に混じって座ってるヴィオラの違和感よ・・・。
「繰り返しになるが此度の戦、誠に大儀であった」
おっさん一同、着席したままではあるが揃って「はっ!」と言う声とともにその場で頭を下げる。
俺?もちろん空気の読める子なのでおっさんに含まれている。
「まぁ我々はそれほどの活躍はしてないのですがね」
「確かに、活躍していないどころか生きてこの場にいるのはアプフェル伯のおかげだからな」
「全くもってその通りであるな!帝国軍のみならず皇国軍、反乱貴族までほぼ婿殿と後ろの2人で討ち取った様なものなのである!」
「いえ、全て精霊様のご加護の賜物ですので」
マジで俺、今回に関してはほぼ見てただけだもん。
てか精霊さまの最終兵器感半端なかったからね?
最初あのゆるい姿を見た時は建国に関わったとか何の冗談かと思ったけど・・・。
そこからしばらくは戦争の話が続く。
特に帝国軍の顛末を初めて聞いた国王陛下などは顔を引きつらせていた。
「しかしそこまでの活躍をしたのならアプフェル伯には大きな褒美を与えぬとならんな。どうだ、伯爵は何か望みのモノ等は無いのかな?」
「望みですか。そうですね・・・ないような、あるような」
「ほう!何かあるのか?あるのだな?そうかそうか!よし、遠慮は全くいらぬ、何なりと申してみよ!」
いや、どうして欲しい物があるって言ったのにそんなに食い気味に喜んでるんだよ。
普通はもっとこう物惜しみする感じじゃないの?ソースは前世のクソドケチな貴族。
「ええと、そのですね」
「妾か?妾だよな?妾が欲しいんだよな?」
「アリシア王女、ステイ」
「そっかー、妾、そこまで求められてたかー」
てか親子で落ち着き無さ過ぎだぞ王族。
「実は私、こちらにいるヴァイデ男爵の手伝いを半年間する契約でお屋敷に間借りして暮らしていたのですがその契約が満了いたしましてですね」
「そうよね、ハリスがうちに来てからもう半年、じゃなくてもう7ヶ月だものね?わかってるわよ?最初の約束通り、お、俺のものになれって言うんでしょう?」
「ハリス!そのおんなのこがいけるならミーナもだいじょうぶなはずなのです!!」
「うん、全然わかってないし話がややっこしくなるからヴィオラは少し黙ってようね?あとヘルミーナ様、残念ながらこの幼女は合法な方の幼女なのです。いや、別に合法なのが残念なわけではないですからね?非合法万歳、ジークロリータ!ではないので瞳を輝かせないでください」
確かに俺のものになれって言ったけどそれは統治に失敗した時の保険で『最悪公爵家で行儀見習いでもすれば良いんじゃね?』って意味合いだったからね?
「それで、その、アレなんですよ、よ、よ、嫁?的な?女性がですね」
「嫁・・・ほう、アプフェル伯は妻を娶るのか!いや、それは実に、そう、実に目出度いな!!」
「出来ますればその、嫁と暮らせる程度の、少し田舎の方でのんびりと出来るような土地など頂ければと。家屋敷などは自分でどうにかいたしますので」
「そうか、うむ、実に良い!!そうだな、やはり嫁を取るならば住むところは絶対に必要だものな!よし、今すぐに用意しよう!証書の用意なども必要だから我は一度城に戻るとしよう!晩餐までには戻るのでな!!」
「いえ、別にそこまで急いでるわけでもないの・・・で・・・行ってしまわれましたね・・・」
いや、だからどうしてそんなにハイテンションなんだよ王様。大丈夫だよね?某第三王子みたいに変な薬とかやってないよね?
部屋から、花が咲いたような満面の笑顔で出ていく国王陛下とそれを慌てて追いかけるお付きの人たち。忙しない人だなぁ。
あ、アリシア王女は残るんですね?いえ、別に一緒に帰れとかそう言う意味じゃないんですよ?
あとわざわざ晩ごはん食べに戻ってこなくてもいいよ王様。
書類だけ誰かに持たせてくれればいいよ王様。
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