新しい年編 その23 貴女と交わした最初の約束

「・・・それで、ハリスちゃん、その後ろの2人、が、求婚、の首飾り、を、身に着け、ている経緯を、教えてもらいたいんだけどな?」

「おねぇちゃま、妙なところで言葉を区切るのはおやめください。非常に怖いです」


この人、そのうち「かゆうま」とか言い出しそうなんだけど?

てか馴れ初めを本人たち&おっさんたちの前で語るとか何のプレイなんだよ。

すでに何度か話してるからストーリー展開とかむっちゃスムーズに語れたわ。


「えっと、つまりその2人が戦場に出て怪我や戦死、そして陵辱などされないかと・・・とても、とても心配になっちゃったんだ?」

「ええ、まぁ、はい」

「そしてその日の夜その2人と一緒にお風呂にハイッタ、それだけでは無くそのまま夜をアカシタンダネ?」

「ええ、まぁ、はい」


怖い怖い怖い。ちょっと、侯爵様!?お嬢さんが何かに変身、むしろ変態しそうなんだけど!?

あといつの間にか話の輪に参加していたコーネリウス様の奥方様含むお姉様達の「あらあらまぁまぁ」って感じの視線がとてもむず痒いです!


「そうなんだ・・・まぁハリスちゃんもお年頃だもんね?性欲を持て余しても仕方ないよね?」

「いえ、別にそこまで」

「わかりました。納得できるかどうかは置いておくとして・・・責任感の強いハリスちゃんがその2人に若い性欲をぶつけてしまった代償に求婚したのは認めましょう」

「そこそこ語弊がありますが完全に否定もできない所がなんとも・・・」


いや、全然性的な欲求が無かったとは言わないけどさ!!

でもそこにちゃんと愛はあるんだからねっ!!


「それで、話はかわるんだけど・・・どうしてこっち側ではなくそっち側にヴェルフィーナちゃんがいるのかな?」

「ノーコメントは・・・あっ、はい、もちろん通りませんよね」

「(ニコッ)」


さすが初恋のお嬢様、とてもお綺麗な笑顔ですねリリアナ様。惜しむらくは瞳から感情が欠落していらっしゃる点でしょうか。


「そ、それはですね、語るも涙聞くも涙の」

「要点だけで大丈夫だからね?」

「・・・一緒にお風呂に入って同衾いたしました。もちろんヴェルフィーナ様とは一線を越えておりません」

「ハリスちゃん・・・貴族の御令嬢と一緒に入浴はどこをどう取り繕おうと一線をぶっちぎってるんだからね?」


ちなみに『同衾』の同意語に『ファック』とか『一発やる』とか書いてあったけど無実だ!俺はヴェルフィーナ嬢とはやってない!

あとニヤニヤしながらクネクネするヴェルフィーナ様、呪われそうなので止めてください。


「まぁ・・・それもいい・・・全然良くは無い、全くもって非常に宜しくはないんだけど・・・おねえちゃまは気にしないからね?だって大事なのはこの先のこと、2人の未来だものね?」

「うそやん、むっちゃ気にしてるやん」

「気にしてないと言えば気にしてないの!もう、そんな事言うと赤い人みたいに床に寝転がって駄々こねちゃうよ?」


「それはもしかして妾のことか!?」

「ごめんなさい止めてください成人女性のあれはとても、そうとても悲しい気持ちになりますので」

「そこまでではないだろう!妾、とても可愛かったであろうが!?」


可愛いと言うか痛可愛いと言うか単純に痛いというか・・・。



さて、ここまでの話、皆さんは何か疑問・・・と言うか違和感を持たれたことがあるのでは無いだろうか?


そう、現状俺に質問をしているのは『リリアナ嬢』であることに。


普通、こう言う場面では先陣を切って突撃してくるはずの方が余裕を持った笑みを浮かべて貴婦人の佇まいで、慈母のような微笑みでこちらを見つめたまま座っているということに。

うん、そうだね、コーネリウス様は気付いたみたいだね?


「・・・ハリス、少し良いかな?」

「はい、なんなりとコーネリウス様」

「ストレートに聞くけど・・・うちの妹はどうしてあんなに落ち着いてるのかな?ほら、普段ならさ、もっとこう・・・わかるだろう?」

「ぼく、なにもわからないよ?」

「ここは裏切っちゃ駄目なところだと思うよ!?」



うん、まぁその、なんだ。


ほら、俺って『ほぼ毎日王都までフィオーラ嬢の安否確認』に戻ってたじゃないですか?

その時一足先にいろいろと聞かれてるわけじゃないですか?



ほわんほわんほわんほわん~(回想が入る時の例の音)


「そう・・・ハリスはあの2人が戦場で怪我をするかもしれない、いえ、戦死してしまうかもしれないと思い気持ちが高ぶって・・・」

「はい、もちろんそれだけではないんですけどね?その、親しい人が居なくなってしまうかも知れないと思うとどうしても不安感で側から離れる事が出来なくてですね」

「いえ、勘違いして欲しくはないのですが貴方を責めているわけではないのですよ?それに貴方はこうやって私のことも心配して毎日会いに来てくれているではありませんか」

「ちゃんと貴女と約束しましたからね?もう随分と前の事のように感じますけど・・・相手が魔王であろうとも全世界であろうとも・・・必ずお守りしますよ」


で、まぁ今までならこの後フィオーラ様が『なら嫁にもらって?』って言ってくるのを適当に受け流してたんだけどさ。


「でも・・・もしも貴方が居ない時に、もしも私が乱暴されるようなことがあれば」

「止めてください、その妄想だけで皇国と帝国を国ごと破壊し尽くしてしまいそうですから」

「私だって!貴方以外の男に・・・純潔を奪われるくらいなら自ら命を絶ちます!」

「それは・・・駄目です。絶対に駄目です。何があろうとも俺より先に貴女が死ぬなんて絶対の絶対に止めてください」


「なら、ならば何が起こっても大丈夫なように・・・私をあなたのものにしてください」

「いえ、でもそれは・・・フィオーラ様・・・」

「ハリス、2人きりの時くらいはフィオーラと呼んでください。私は、わたくしのすべてはあなたのものなのですから・・・」


・・・うん、まぁ、その、なんだ。むっちゃ流されたと言いますか。

伝えてなかったけどさ、俺、DTじゃなくなってたんだ。



「あら、コーネリウスさんはまだ聞いていないのかしら?フィオーラはもう乙女では無くなったのよ?」

「なっ!?お、お母様!?な、な、な、何をおっしゃっちぇっちゃったっ」

「貴女・・・さすがに毎日あれだけの長時間、大きな嬌声をあげて愛し合っていれば部屋も近いのですから気づくのは当然でしょうに。それよりもハリスはいったいどれほどの技術を持っているのかしら?毎回足腰が立たなくなって回復魔法を使ってましたよね?少し私にもおすそ分けなどして」

「駄目に決まってるでしょう!!」


「・・・ハリス・・・君、人が戦場で風呂にも入れず地面で寝てる時に・・・」

「・・・ハリス・・・お前・・・師匠と呼べば色々と教授してもらえるか?」

「コーネリウス様、ちゃんと夜はベッドをお出ししてましたよね?あとガイウス様、そこはお嬢様を傷物にしたと怒って殴る所では無いでしょうか?」


うん、男親の前、それもよく知ってる方だから娘さんとのそう言うお話はちょっとどころではなくとても気不味いです・・・。


「なん・・・だと・・・一緒にお風呂で私が大きくリードしたはずなのに・・・いつの間にか、色々な意味でフィオーラにヌカれていただと・・・」

「ハリスちゃん、初恋のおねぇちゃまと、処女と童貞の清らかなセックスはどこにいっちゃったのかな?」

「まって、妾、窮地を助けられて完全に大勝利ヒロインになったはずなのに全くその気配がないんだが!?」


何と言うか・・・色々とごめんね?

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