新しい年編 その20 白い貴婦人
「ハリス、随分と派手なご登場だったね?まさか光り輝きながら空から舞い降りて来ようとは・・・さすがに今回は度肝を抜かれたよ」
「全くだ・・・その様子なら西の方も片が付いたようだな。無事で何より・・・と、この状況で言うのは滑稽だが、お前に怪我がなく何よりだ」
「はっ!コーネリウス様もガイウス様もご無事な様で・・・援軍に参るのが遅くなり申し訳ございませんでした」
「ははっ、3万の帝国軍を3人に押し付け、こちらより少数の敵軍と対峙してこのザマの我らが援軍が遅いなどとは口が裂けても言えぬさ」
「さすが婿殿であるな!後少しで押し切られそうであったがおかげで命拾いしたのである!」
「マルケス様もブルートゥス様もご無事で何よりでございます。しかし国内から反乱貴族が出るとは思い至らず・・・」
「流石にそれはハリスではなく王家の責任であろう・・・ハリス、妾の為によくぞ来てくれた!」
隣に寄り添い俺に身体を預け、どこから見ても女の顔でもたれかかってくるアリシア王女。
何だろう、この人いきなりトキメキ状態の藤○詩○みたいになってるんだけど?
いや、ちょっと離れてくれないかな?ほら、俺、キラキラしてから歯磨きどころかうがいもしてないし。
『ハリスちゃんおくちくさい』とか言われたらちょっと立ち直れそうもないからね?
てか既にガイウス様は姫騎士様に加齢臭がするって目の前で言われてたな。
さすがに極度に疲労していて今にも倒れそうなお姫様を押し返したりするほど鬼じゃない俺。
取り敢えず黒馬車の連結用の予備車両をいくつか出して王女とお疲れのおじさん連中に休んでもらうか。
落ち着くまでしばらく隣で手を握っていて欲しい?・・・この甘えたさんめ。
でも俺は先に怪我人の治療に回らないといけないからそれが済んでからね?
じゃあ自分達もそれが済んでから休む?それではお手伝いよろしくお願いいたします・・・。
アリシア王女とガイウス様達に兵士の治療をするための小さな光の魔水晶を大量に後払いで売りつけ、俺も大怪我をした兵隊の間を東奔西走する。
ほら、右往左往だとパニクってるみたいで人聞きが悪いからね?
そしてお互いのために無償での奉仕はしてはいけない。
あくまでも対等に、ギブアンドテイクが基本なのだ。
放っておけば数時間で死ぬような傷を負っている人間は多いけど、劣勢の中、あれだけの激戦をしていたにも関わらず死人自体はそこまで多くないようでひと安心。
もちろん死者は・・・生き返せない。
いくら精霊さんの力を借りれたとしても魔法はそこまで万能ではないのだ。
治療した軍人さんが『光の使徒様』とか呼んでるけど俺はそんな胡散臭い存在ではないです、普通の人間です。
そう、これは全て光の精霊様と光の聖女、フィオーラ様のお導きなのです。
さぁ皆で讃えなさい『フィオーラ様万歳!!』と。
「いや、ハリス、それ絶対に帰ったら本人に怒られるやつだからね?」
「大丈夫です、おっぱいは小さいですが心は大きなかたなので」
「うん、絶対に怒られるね?むしろ聖女様扱いではなく胸が小さい発言の方でお説教くらうよね?・・・娘と妹からの折か・・・説教された恨みは忘れてないからね?」
だってすでに男爵領の神殿でフィオーラ嬢が領民たちに拝まれてるのをヴェルフィーナ嬢にも見られちゃってるしさ。
もういっそ開き直って聖女様全面押しにしちゃうほうが諦めも付くんじゃなかなぁ・・・なんて?テヘッ☆
あと大人なんですからコーネリウス様も細かいことは水に流そうね?最悪物理的にラッコちゃんが水で流しちゃうゾッ☆
ある程度の討伐が完了したらしく、ストレートな意味で『デンジャー感漂う美人騎士様』の2人が特に息切れもせずに戻ってきたので後は任せましたと帰り支度を始めた所で再度アリシア王女から声がかかる。
「ハリス、お前今本気で帰ろうとしておったよな?・・・まぁその件は置いておくとして、こやつの扱いはどうすべきだと思う?」
「いや、捕虜の処遇とか俺に聞かれましても、お好きにしてくださいとしか言えませんが。そもそも誰なんですそれ?」
連れてこられたのは紅く血で染まった、元は純白のドレスアーマーだったであろうボロボロの鎧を纏った北欧系美女。
俺、触手系とかリョナ系とかはちょっと専門外なんで。ほのぼのした陵辱系が好物なんで。これがホントのほのぼのレイ・・・いや、何でもないです。
ちなみにこの女性『皇国軍の白い魔女』こと『セルティナ皇女』と言う人らしい。いや、名前聞いても全然知らんし。
なんでも『三色(みいろ)の剣(つるぎ)』のうちの一振りである『白い貴婦人』って名前の魔剣の使い手だとかなんとか。
ちょっと竜牙剣とどっちが強いか試したいからその剣を借りてメルちゃんと打ち合ってみたら普通に真っ二つに斬れちゃったんだけど?
見物の方たちがむっちゃ顔を引きつらせてるしさ。
あ、この剣、誰か欲しい人とか居たのかな?
なんかごめんね?
代わりにもう少し強そうな剣を今度用意するからそれで勘弁して?
「伝説に出てくる三色の剣だぞ!?それを叩き折る、いや、音もなく斬り落とすとかその黒いのが握ってる剣は一体なんなのだ!?・・・いや、本題はそれではなくてだな!むしろこの女どうこうよりそっちの方が圧倒的に問題だと思えるけれども!本当にどうでもいいのか!?この女、この通り見た目はなかなかの美形だぞ?妾ほどではないがな!」
「いやいや、二重の意味で知りませんけど?・・・えっ、もしかして俺って戦場で倒した女の子は全員『がはは』って大口を開けて笑いながらハイパーな兵器で貫いて回る人間だとか思われてます?」
「いやいや、そこまでは思ってはいないぞ?」
「そこまでじゃなくそれなりには思われてるんだ・・・」
俺、最近ちょっと運が向いてきて『女の子とお風呂』なんて永遠に起こらないと諦めていたイベントが立て続けに発生してるけど基本性能DTだぞ?
もちろんあの漢の生き方には大いに憧れはするけどな!
俺の昔の必殺技、緑の人にあやかって『ラ○スアタック』って名付けてたし。
てか上から見てたけどその白い人、結構な数の王国兵を斬り殺してたよね?斬られただけで死んでない人も沢山いたけど。
それをちょっと・・・多大に見てくれが良いってだけで俺が助けたりしたら兵隊さんからド顰蹙(ひんしゅく)買っちゃうじゃないですか?
「まぁそのまま殺しちゃうか手足を切り落として慰み者にでもすれば」
「ひぃぃぃぃっ!?た、助けてっ!!私はただお父様に言われて参加させられていただけなのっ!!」
「おおう、喋る元気はあるんだ。誰かに命令されてようが自主的に参加してようがあんたはただの侵略者の人殺しなんだよなぁ」
「嫌っ、私はこんなところで死んでいいような人間ではないのよっ!!あああ、そうだわ、あなた、私の婿にしてあげるわよ!?そうすればこうっぶっ!?」
なんか命乞いを始めた美人さんの顔をアリシア王女が思いっきり踏みつけたんだけど・・・。
「うむ、こやつの処遇はこちらで考えるとしよう。ハリス、無駄な手間をかけさせてすまなかったな?」
「お、おう・・・」
まぁあれだ、繰り返すが今の俺は勇者でも無条件の善人でもないからな?
この状況で息のある皇国の人間がいても助けようとも思わなければどんなに見目がよくても敵だった女の命乞いを聞き入れてやる気にもならないんだよ。
見苦しく命乞いをするなら最初から喧嘩なんかふっかけてくるんじゃないよ。
そう、悲劇のヒロインになりたいならせめて最後は綺麗に死んでくれ。
こちらはハリスが去った後の知り合いの皆様方。
「思ったよりもあっさりとしていたな。あやつの事だから助けると思っておったが」
「いや、表情がかなり苦渋に満ちてましたよ?ハリスは女性には優しいですからね」
「ハリスは男女で分け隔てなく何だかんだと他人には甘いだろう?まぁ自分ではなく自分の周りの人間に害を及ぼす相手には容赦がないがな」
「とりあえずそのかたも皇族の一員なのですし、何かの交渉事の役に立つこともあるでしょう。身ぐるみきっちり剥いでおいて治療して捕らえておけば宜しいのでは?」
「しかしこの女、言うに事欠いてハリスに自分の婿にしてやるなどと抜かしおったのだぞ・・・?」
「そこはまぁ・・・国益の為だと思い我慢してくださいとしか・・・」
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