北都・公爵館 その15 失われた転移魔法
そう、便器が出来たのだ!苦労した、思ったよりも苦労した・・・。
いや、魔水晶の存在を知ったから水道の心配はなくなったんだよ。形も設計スキルで整えてくれるし。
でもさ、下水道がないじゃん?水が流せても流す先が無いとどうにも出来ないわけで。
流石に公爵家の庭先に垂れ流しとか有り得ないし。
問題点は『う○この行方』の解決方法なのである。
プランA・寮のトイレの上にかぶせちゃう。
むっちゃ簡単な方法だな。でもこれだと『あれやこれやの音』の問題がまったく解決しない。板一枚下は地獄なので臭いもするし。
あと大量の水を流すので溜まっちゃうのも早くなるという・・・。
「詰んだ」
いや、プランB以降無いのかよ!だって何も思いつかなかったんだもん・・・。
てなわけで寝る時に必死に考えて考えて考えた結果、何となく思いつくことが出来ました!
『どこか一箇所に集めて燃やしてしまえ』
と。まさに発想の転換、本当の意味でのヤケクソである。
もちろん溜まったブツを自分で持ち運びするのは嫌だ、そして他の人、ここだともちろんメイドさんに運ばれて毎日の健康のチェックをされるのもいただけない。
なので私、ある魔法に注目しました。
そう、それは
『転移』
転移魔法自体は空間魔法をランク7(闇魔法も必要だけど条件のランク5は既にあるので)にすると覚えられるので新しいスキルを入手する必要はない・・・んだけどコスト(経験値)がお高い・・・。
でも快適なトイレライフの為にはどうしても必要なのだ!!
てかさ『時空魔法ランク7(転移の魔法ね)』を魔道具を通して使用するには『魔道具師』『付与』『魔法陣』もランクが7で必要なんだよね・・・。
そう、思いついてもすぐに出来なかった理由、ひと月かかったのは経験値が足りなかったからなのだ!まぁ思いつきだけで色々取ってからね?スキル。
もちろん後悔はない。
そして出来上がりましたのは『便座Ⅱ(ベンザトゥー)』と『地獄の業火君(じごくのごうかくん)1号』の2つの魔道具。
『便座だと座るとこだけだし便器Ⅱじゃないの?』とか
『じゃあそれを固定する台座は便座ブロ○クだな』とか
『地獄の業火君(じごくのごうかくん)1号って何だよ・・・』とか色々あると思われるのでご説明を。
あと便座ブ○ックはヤバいから止めろ。
まず『新式洋式便器・便座Ⅱ』(名前が伸びた)であるが形は完全に最新式の足部分(支え部分)が大きめの洋式便器である。
使ったのは『水の属性魔水晶』と『闇の属性魔水晶』。闇落ちした便器とかちょっと何言ってるのかわからない。
一連の流れとしては
いたす→タンク内の水で押し流す→下部にある汚物タンク(大きめにとった足部分)に流し込む→タンクに刻み込まれた『転移の魔法』で外部デバイス『地獄の業火君じごくのごうかくん1号』に送り込む。
どうこれ?完璧じゃないか?・・・うん、わかってる。
う○この運搬がしたくないって理由だけで転移魔法をトイレに仕掛けるとか完全にどうかしてるからね?
てか転移魔法じゃなく消滅魔法って手もあったんだけどね?総合的にいろんなスキルをランク10にしないといけないから経験値が全く足りない。
ウン十年単位で先送りになっちゃう。
そしてもしも暴走などしようものなら・・・リアル『俺のう○こで世界がヤバい』状況になっちゃうので笑えな・・・いや、たぶん笑うわ。
なので自重した。自重してそれかよって感じだけどどうにかなるだろう。
ちょっと夜ふかしのハイテンション状態で妄想してたから悪ノリの産物でもあるけど大丈夫なはず。
もうひとつの魔道具『地獄の業火君(じごくのごうかくん)1号』はもちろん焼却炉である。
形は1m四方の金庫。すごく重い。素材はもちろん粘土(耐熱煉瓦)。鉄材とか持ってねぇし・・・。
送られてきたブツ(&流された水とアレ)から水分を抜いてカラッカラの状態にした後に燃やす。
使用するのは『水の属性魔水晶』と『火の属性魔水晶』と『風の属性魔水晶』。
そこそこ燃費が悪いけど魔水晶は自作自演・・・じゃなくて産地直送・・・でもなくて自産自消!出来るから問題なし。
お外に置いておかないと抜いた水分が横に取り付けた窪みから流れ出るので水浸しには注意。
もちろん出てくる水自体は普通に飲用可であるが・・・飲みたくはないな、気分的に。
どうだ?文句ない出来だろう?
もちろん今ある魔道具(お風呂)みたいに『属性魔法の使い手』が作動に必要なんてわけはなく、ボタンひとつでオッケー!
もうね、この勢いで是非とも寮のお風呂の改装も
「それで、そのヘンテコなモノはなんなのかしら?」
「ほうわっ!?!?・・・御主人様?なぜこんなむさ苦しいところにいらっしゃる?」
「石鹸が小さくなってきたから視察ついでに頂きにきたのよ」
「鍵とか掛かってませんでしたっけ?」
「予備の鍵があるわ」
あるとしてもなぜそれを持ち歩いてるのか・・・。もしかしてこれは
「夜這いですか?」
「まだ真っ昼間よ!!」
違ったらしい。
そして小一時間経過
説明させられた。事細かに説明させられた。
「ハリス、あなた馬鹿なの?」
「否定はしない」キリッ
「と言うよりも・・・どうするのよそれ・・・」
どうするってもちろんう○こするに決まってるじゃん?
「いい?魔法使いを必要としない魔道具ってだけでも国を、いえ、世界を揺るがすほどのモノなのよ?」
「あ、はい」
「それを言うに事欠いて転移魔法ですって?・・・それも使い道が」
「う○このうんぱんです」
「声に出さなくてよろしい!」
肥だけに?
「あなた、他国の間諜に知られたら即刻暗殺対象よ?」
あ、特にお通じは悪くないのでかんちょうは必要ないです。
「はぁ・・・いいこと?これまでに作ったモノや能力、特にソレの事は絶対に漏らしちゃ駄目よ?後、何かをする前に必ず私に伺いを立てなさい」
かんちょうはいらないけど漏らすほどでもないです。
「・・・ハリス、真面目に聞いてないわよね?」
「ち、ちゃんと聞いておりますよ?」
むっちゃ頬がひくついてるよお嬢様。
「いい?少なくともキッチリと私の婚約者になるまでは、いえ、公爵家の一員となるまでは自重しなさいよ?」
「いやいやいや、冗談でも婚約とか口に出しちゃ駄目ですって!」
「・・・冗談だと思うの?」
「むしろ冗談以外の何だって言うんですかね・・・」
得体の知れない孤児が公爵令嬢の婚約者とかどこのラノベだよ!
「あぁ・・・そうよね、知ってるわけがないものね・・・。そもそもこれだけの美貌の聖女様がこの歳で未婚のままだなんてあなたもオカシイと思うでしょう?」
「ルックスではなく性格に難があるんじゃないんで・・・何でも無いであります!!」
怖い怖い怖い!眼力が眼力が凄いです!!大丈夫だよね?麻痺とか石化の光線とか出てないよね?
「・・・処すわよ?・・・そうね、少し長い話になるのだけど」
「あ、聞くと泥濘にハマリそうなのでいらないでーす」
「黙 っ て 聞 き な さ い」
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