東の果て編 その29 お片付け(人間的な意味で)

ディアノ商会の新しい倉庫用の土地は翌日に(エオリアが例の件に関わっていた商家を取り潰して上モノごと没収して)用意してもらえたのでそこに食料用の倉庫と防壁・・・ってほど物々しくもないから普通に壁?を建てる。

もちろんここに集める食料は食用ではなく砂糖用の物である。


まぁしばらくはドーリスの時空庫に保存用の食料として保管させておくんだけどさ。

戦争が始まったら確実に値上がりするからね、食料。

値段が上がるだけならいいけど買えなくなる事も十分に考えられるし。

砂糖、まだしばらくはおあずけだなぁ。


ついでにディアノ商会に絡んできてた四人の貴族の処分。


フォリア子爵家は領地を取り上げられ現当主が隠居の上で男爵に降爵。

アスト男爵家とトゥイグ准男爵家はともに奪爵。

ラモー男爵家は現当主が病死(ワインを賜るアレだな)の上で奪爵、一族郎党国外に追放となった。


貴族家が降爵や奪爵されるなどそうそう無い(普通は不祥事があっても現当主の引退または処分だけで家督は子供や一族の者に継がせることが多い)ことなので処罰としてはほぼ最高(と言う名の最悪)の刑である。

あまりにも寄り子が弛み過ぎていたので引き締めるためだとは思うんだけど・・・これ、怨恨関連が全て俺に寄せられるよね?


いや、まぁいいんだけどさ。ちなみに俺なら後腐れなく族滅にする。喧嘩を売られたら高値で買ってやるべきだもん。

相手の力量を見るのも貴族としては大切な能力なのだからそれが無いような連中は死ぬのも自業自得なのだ。


そして元ラモー男爵領――ヴィーゼンのお隣の領地だな。ロマルと言うらしい――なのだが、貴族は全員国外追放、つまり領主一族が居なくなった。

東の僻地で土地も荒れていて農作物の実りも悪い上に前領主がアレだったのだからもちろん裕福なはずもなく。


簡単に言えば俺が初めて訪れた時の准男爵領といい勝負が出来そうな程度には貧乏領なのだ。

普通なら暇をしている法衣の貴族が空いた土地に喜んで入りそうなものだが立て直すプランも見つからない上に隣の領地とは揉めた後、それも寄り親からも見放された上で。

そんな火中の栗どころか栗山が大火事みたいな領地を欲しがる人間がいるはずもなく・・・。


『ヴァイデ准男爵を男爵に昇爵する、昇爵に伴い元ラモー男爵領をヴァイデ男爵領に併合する。またこれよりヴァイデ家の寄り親はラフレーズ伯爵家からフリューネ侯爵家となる』


と言う少々面倒くさい事態に。侯爵、恩を売りつつも腐ったみかんを押し付けやがった・・・。

ちなみに寄り親の変更は『ラフレーズ家が寄り子貴族を抑えきれずヴァイデ家に損害を与えたための措置』と言うことらしい。


(おそらくは)先に侯爵家にも報告してからフォリア子爵達を泳がせていたエオリアであるが理屈は通っているためこれと言った抵抗もできず命令を受諾、そして拗ねているみたいだ。

いや、お前はソレ(拗ねていれば)でいいだろうけどさ、不良債権を押し付けられた俺はまた働かないといけなくなるんだぞ?


絡んで来てた貴族に続いては加担してた商人連中。


平民が上級貴族(ほら、書類上では伯爵だからね?俺)に喧嘩を売ったんだから普通に族滅。一家全員処刑だな。

・・・いや、それはそれで面白くないんだよなぁ。特にヴィーゼン(准男爵領ね)に行商に来てたあいつ。


楽に死なれるのが不快な程度には苛つかせてくれたからね?

てなわけで全財産没収の上で(無一文で下着姿にして)街の外に放り出してやった。

大丈夫、野草でも食べれるものはそこそこあるから。頑張って野垂れ死ね。


お隣の領地と言えば氾濫を起こした迷宮もどうにかしておくべきなんだよなぁ・・・。

出てくるのが下級の妖魔(ゴブリンとかコボルトとか強くてオーク。でも数が多い)だから小さな魔水晶程度しか得られる素材も無く、当然実入りも良くないので探索者ギルドの支部も置かれてないし。

そもそもが領地を管理するための人材が足りないんだよ・・・。現状でもヴィーゼンは俺とドーリスの二人で回してるようなものだからな?


幼女?あれはほら、人が良すぎて使い所が限られてるから。外交(貴族の対応)関連は絶対に任せちゃ駄目なタイプ。まさにケツの毛まで抜かれるだろう。

いや、幼女だし最初からツルツルだと思うけどね?お尻。

地の頭は悪くないし意欲もあるけど足の引っ張り合いとか自分の利益しか考えない下級貴族を相手にするには経験値が不足している。

心根が善良なのは美徳なんだけどねぇ・・・。いまのところ書類仕事くらいしか向いていない上に書類仕事なんてそんなに無いのだ。


ペルーサの所から能力のありそうなの引っ張って・・・きたら商会が回らなくなるな。あそこも圧倒的に人が足りてないし。

まだまだ将来的な話になるけど国内の輸送網を構築しようと思ったらそれこそ何万人とか必要だもん。さすがに一商会の規模じゃねぇな。


北都の孤児院でもっと友好的な関係を築くことが出来た人間が居れば・・・特に教育が行き届いてるわけでもないし下働きが精一杯だからあまり意味もないか。

教育の面で言えば公爵家のメイドさんとかは・・・こんなクソ田舎に連れてきたら嫁の貰い手も無いだろうし俺の側室にでもしないと実家から大量の苦情が来そうだから無理だな。


こんな時に使える身内でも居ればいいんだけど・・・1人いるな。騎士(見習い)をしてる上の兄貴が。

適当に言いくるめて俺が作った装備で固めて少々ステータスとスキルを貸し出ししてやれば迷宮のゴブリン退治くらいはどうにかなるだろう。ついでに脳筋の仲間を何人か連れてきて貰えればありがたい。


・・・後日兄貴の元を訪れてみればヴァンブス家の寄り子の子爵家の娘さんと婚約した上にヴァンブス家の騎士団の小隊長に大抜擢されてた。

ヴァンブス家行動が早すぎるだろ、兄貴完全に取り込まれてるし。

下の兄?アレは普通に(貴族社会から村八分にされながら)働いてるよ?寄り親から絶縁食らうような人間に近づく物好きなんていないから仕方ない。


「てことで人材を派遣して下さい、むしろ下さい」


やって来たのはもちろん王都のキーファー公爵邸。

押し付けられた責任は押し付けた方に取ってもらおうって事で最初はフリューネ侯爵邸に行こうと思ってたんだけど他の話もあるし


『どうして我が家には相談に来なかったんだ?おおん?』


などと後で言われるのも面倒くせぇのでキーファー公、ヴァンブス公、フリューネ候と三名に集まっていただいた。王国の要たる大貴族様を呼び出す孤児とは一体・・・。

気にしたら負けなのでまずは『有能な人間よこせやゴラァっ!』て話しからである。

てかどうして皆様揃ってお嬢様方を伴ってらっしゃるのかな?・・・話が進む気がしねぇ・・・。

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